チルノが暴れているというのであれば冷気を追えば大体場所は分かる。妖精なのに池くらいなら凍り付かせることができるほどの強さを持っているのでチルノが暴れたあとは大抵氷漬けになっているものばかりになる。とはいえ幻想郷をそんな数秒で移動する方法はないので目星をつけてからじゃないとすれ違いが起きてしまいそうである。
それを防ぐためにはチルノのことをよく理解している人物に行動パターンを聞くのが一番である。
「大妖精、チルノならまずどこに行く?」
「んー、私が戦ったのが霧の湖だから…今なら魔法の森でしょうか…」
魔法の森はキノコの胞子やら変な魔力やら変な毒やらが充満しているので並の人間ではすぐに行動不能になってしまうような森である。だが妖精ならばそういうのは無視できる。妖精がそもそも自然の力の顕現のような存在なので自然由来の毒なんかは効かないらしい。
「でも氷の妖精のチルノは大丈夫なのか?」
「大丈夫みたいですよ」
どうやら大妖精たちは魔理沙へ悪戯するために魔法の森に行ったことがあるらしい。そのときはチルノと大妖精に加えてルーミアもいたみたいだがルーミアだけは少し体調が悪そうにしていたらしい。魔法の森で日頃生活している妖怪以外は魔法の森の瘴気で体調を崩してしまう。
なお魔理沙にした悪戯は仕掛けた罠を利用されてやり返されたという。狡猾な魔理沙らしい結末だ。
「じゃあ森に行こうか」
「定晴さんは大丈夫なんですか?」
そういえば大妖精には能力の説明を一度もしていないような気がするな。というか俺の力の説明をしたのは本当に僅かである。まあだからこそ能力の内容を好きに言えるのだが。
「浄化の力があるから大丈夫だ。大妖精も瘴気で気分が悪くなったら言えよ」
「分かりましたー」
浄化の力はまあ隠すことでもないので話してしまう。妖怪相手なら効果抜群というか絶命にまで追い込める浄化の力だが妖精にはむしろ回復にしかならないので奇襲とかにも使えないからな。もしこれが大妖精ではなくリグルとかが相手なら…魔術の適正でも言えばいいか。魔法使いは森に住むらしいしな。勿論俺の魔術の適正は森で住めるほど高くないので全然浄化を使うことになるが。
魔法の森に入ってみたら大妖精の言う通りチルノが来ていたらしい痕跡が見つかった。魔法の森原産であるキノコたちがどれも凍り付いていたからだ。幻想郷には雪も降るので寒さには強いだろうけど…流石に氷で包まれてしまったら死んでしまうのではなかろうか。
俺はそんなことを考えていたら森の奥から声が聞こえた。
「なんじゃこりゃー!私のキノコたちがー!」
はっきりと分かる声量の魔理沙。魔理沙はキノコ博士と呼ばれるほど魔法の森、いや幻想郷中のキノコに精通しているらしい。秋になれば妖怪の山で採れたキノコを使って料理をすることもあるらしく、その味はあの咲夜や妖夢をしても勝てないと言わしめるほどの絶品らしい。俺も秋ではないが魔理沙のキノコ料理を食べたことがあるが…確かに美味しかった。
さて、そんな魔理沙のキノコが全部氷漬けにされていたら…確かに叫びたくなるだろう。どうやらチルノの戦いには気が付かず今になって外に出てキノコの現状に気が付いたらしい。
「魔理沙さんですね」
「んー…放置をしていたら森の中で見つかった時に犯人扱いされそうだから先に声をかけておこうか」
魔理沙も霊夢と同じように出会った奴は全員ぶっとばすという方法で異変を解決しようとするので説明しておかないと後ろからレーザーを撃たれかねない。俺たちはチルノを探す前に魔理沙を見つけることとなった。
とはいえ魔理沙の声はとても近くから聞こえたので一分もかからずに魔理沙を見つけることができた。
「よう、魔理沙」
「定晴、それに大妖精…聞いてくれよー、キノコが…私のキノコがー!」
魔理沙には珍しく取り乱している。魔理沙のキノコ好きを間近で見ることがなかったので知らなかったが、結構なキノコ狂いなんだな。
「もしやお前たちが犯人か!?私が成敗してやるぜ!」
ほらやっぱりこうなった。事件が起きたとき犯人は必ず現場に戻るとかいう言葉があるが、本当に戻ってくるかは分からないことであり、魔理沙のように出会ったら疑い必ず罰するの方法は適切な事件処理方法じゃないと思うんだけどなぁ…
「俺たちじゃない。犯人は分かってる。解決してこようと思ってな。魔理沙は思う存分研究でも料理でもしてくれ。氷は溶かしてやるから」
矢継ぎ早に要件を話す。大妖精からチルノを止めて守ってほしいと頼まれている以上怒った魔理沙によってチルノが吹き飛ばされる未来は回避しないといけないのだ。戦闘においてこれほど頼もしい魔法使いもいないが、今回は辞退してもらうしかあるまい。依頼主を最優先にしないといけないのだ。
「ぬぬぬ…私が直々に鉄槌を…」
「実は現在俺は魂封石の欠片を持っている。もしよかったらこれを譲ろうと思うのだが…」
「私は家でおとなしく研究することにしたぜ!研究したかったんだよな」
魂封石をチラつかせると魔理沙はすぐに意見を変えた。魔法使いとして、研究者としての性には逆らえないということだ。
実はパチュリーに渡したものとは別に少しだけ残していたのだ。魔女に解析してもらおうとも思っていたし、何かに役に立つかもと思ったからな。魔女の解析結果だと本当に何の力もない石へとなり果ててしまったらしいのだが、魔理沙への賄賂に使えたのだから意味はあっただろう。
「そんじゃ私の代わりにチルノはボコしてくれよ!」
「ああ…あれ、俺犯人のこと話したっけ?」
「私にかかればこんなのちょっと考えれば分かるんだぜ。それじゃあな!」
流石魔法使い。傍若無人で自由奔放だが頭はキレるということだ。魔理沙は魔法店をやるよりも探偵業を営んだ方が儲かるのではなかろうか。まああの性格で探偵業なんていう忍耐がいる仕事はできないだろうけど。
「ふう…助かりました定晴さん。チルノちゃんが光線に飲まれるところでした…」
魔理沙は犯人が誰か分かっていたし、俺たちが何もしなければ強い妖精とやらにチルノが負ける前に魔理沙によって吹き飛ばされていた可能性がある。勿論それでは依頼失敗だ。
「よし、氷とか力の感じだとまだそこまで離れていないはずだ。急ごう」
「はい!」
俺たちは魔法の森の中を急いで飛んで行った。凍り方でどっちに行ったのか分かりやすかったからとてもありがたかった。チルノはそんなこと少しも考えていないだろうけど。