「あそこだよ!」
「待ってくれ萃香…何でそんなに…体力があるんだ」
「鬼ともあろう私がこんな山道に負けられないからね」
「ふぅ…よし。で、どれだ?」
「あそこに見えているのがそうさ」
萃香と共に参道を歩くこと五分ほど。やっと神社が見えてきた。
それにしても萃香は歩くのが早い。俺も色々と力仕事をしてきたからそれなりに体力はあるはずなのだが、その数倍は体力がありそうだ。やはり能力を使わないと鬼には一生勝てないな。
ここからでも見える大きな神社は、博麗神社よりも新しく、かつ整備されているように思える。それに博麗神社よりも大きそうだ。
「なかなかこっちの神社も綺麗じゃないか」
「博麗神社より新しい物であるのは確かだね。実際にいつ出来たのかは知らないけど」
あまり幻想郷に来て歩いて無かったからか足がすでに痛い。が、ゴールも見えてきたことだし身体強化を使ってラストスパートをかける。
「とうちゃーく、お疲れ定晴」
「おう、そうか」
「元気ないね、どうしたの?」
「いや何でもない」
俺は今テンションが低い。達成感に浸ることもできそうにない。
実を言うと一度不注意で崖から落ちそうになってからこんな感じなのだ。もし落ちても飛べるから良いのだが、やはり少しばかり怠さがある。確かに俺の不注意ではあるのだが、もし人間が落ちたらどうするつもりなのだろう。
やる気を出してすぐだったためテンションが下がってしまったのだ。
『そんな事で心配をかけさせてんじゃねえ』
『ああ、そうだな』
それと狂気にも心配をかけてしまった。狂気にも言われたのでテンションを戻す。見知らぬ土地に来たのだ、楽しまなければ。
さてさて肝心の神社だが、やはり博麗神社に比べて綺麗だし広い気がする。にしてもどっかで見たことあるような気がするんだよな。まあ神社は大体作り方が同じだから結構似た様な神社を見たのかもしれない。
博麗神社はそのみすぼらしさから親近感というか、落ち着ける場所となっている。だがこちらは完全に神社といった感じ。博麗神社のように信仰する神が分からないようなとことは違うのだろう。
「萃香さんこんにちは!」
「やあ早苗。神様たちもいるのかな?」
俺が神社を見ていたら、萃香がこの神社の巫女さんっぽい人と話していた。
「神奈子様はいますけど、諏訪子様は湖に釣りに行ってますよ」
「ふーん、まあいいや…あとは大丈夫だよね。私は友人と酒飲んでくるから。じゃあまたね」
「ああまたな萃香」
萃香はそのまま帰っていってしまった。取り敢えず巫女さんっぽい人と話すとしよう。
それに萃香の話していた内容からすると神様も見えるようだ。さすが幻想郷だな。外の世界で見えないものが全部ここでは見えるのだろうか。
「こんにちは。ここの巫女さんかな?」
「はい。守矢神社にようこ…?」
「ん?俺の顔になんかついてるか?」
「いえ、ただ…」
そう言うと巫女さんは考え込んでしまった。
しかしそれも三秒程で、すぐに顔を上げると自己紹介をしてくれた。
「まあそんなこと無いよね。私はこの神社の巫女。東風谷早苗です。ここは守矢神社といって、幻想郷で一番人気がある神社ですよ!」
「えっと、博麗神社は…」
「あそこは重要な場所ですが、人気はこっちの方が高いですよ!」
「そ、そうか」
ドンマイ、霊夢。まあこっちの方がまだ参拝しやすいけどな。妖怪の量的にはあまり差はないけど、話せば分かるっていう妖怪が向こうより多い気がする。勿論それは天狗たちの守護あってのことだろうけど。
「えっと、名前は…」
「おっとすまん。堀内定晴だ」
「えっ…」
俺の名前を言ったら、サプライズを受けたかのように驚く。そこまで驚くような名前か、俺?堀内なんて名字なら外の世界にもいっぱいいるだろうに。
「さ、定晴、さん?」
「え?ああそうだが」
「もしかして…」
そう言うと早苗はとある町の名前を出してきた。
確かに前は住んでいたこともあるが、何でこんな女子高生位の女の子が…早苗は幻想郷で生活しているのに俺の住んでいた場所を知っているんだ?
「私ですよ!私!近くにあった神社の」
「ん?いや、でも。確かあの神社は守矢なんて名前じゃなかった気が…」
「はい!向こう側はまた違った名前でしたから」
「いやしかし…」
どう考えても計算が合わない。俺があの町に住んでいたのは三年ほどだったが、二年ほど経った時に神社が壊されたか何かで無くなった。
元々その神社にはほとんど行かなかったしあの町で交流があったのは仕事仲間位で、友好関係はあまり広くない。それなのにこんな子が俺を知っているはずがない。そもそもあの神社には神主は巫女はおらず、ほぼ放置状態だった気がするが…
その後も早苗が一生懸命俺に説明するのだが、俺はあまり腑に落ちない。
「こーらー!うちの早苗を困らせているのは誰だ!」
考えてたら突然の怒号。その方向を見ると、目の前には巨大な木。そう、建築で使うあの柱の大きさをした木である。それがいつのまにか目の前に…
「あ!ダメー!」
早苗がなんか叫んでいるが、時すでに遅し。俺にその大木がぶつかる。
そして俺は吹き飛ばされた。