東方十能力   作:nite

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二百六十八話 三つ巴

戦闘は十五分ほど続いた。二方向から弾幕が飛び交うここは大妖精から見ればきれいだろうけど、こちらからしてみれば断然ルナティックだ。スペルカードへの切り替えのタイミングを狙って先にスターを気絶させ、その後チルノを気絶させた。妖精をピチュンさせることなく気絶させる方が難しかったかもしれない。

 

「大丈夫ですか、定晴さん」

「置いていきやがったな…」

「あはは…私じゃあの二人の相手を同時にするのは役不足ですよー」

 

大妖精は既にチルノと一対一で負けている。そのうえでスターも加わった一対一対一をするには確かに大妖精では難しかったかもしれない。しかし実際は一対一対二にできる局面であったのだから逃げずに片方に弾幕を放って牽制するくらいはしてくれてもよかったのだがな。

 

「ほい、取り敢えずチルノ。スターは…縛っておくか」

 

チルノを大妖精に渡して俺はスターのところへ行く。

俺は幻想郷に来てから何度も戦闘を重ね、その度に拘束術をなんとか編み出せないかと考えてきた。魔術で火の鎖でも作ろうとしたがパチュリー曰く俺にそこまでの才能はないらしく、また輝剣を増やしてでの拘束は霊力消費が多すぎる。俺の結界では縛るということができないので拘束という目的を達することはできない。

で、結論からすると俺にとって最も効率的な拘束術は…

 

「これでよし」

 

幻空の中に頑丈なロープを入れておき、それで縛る。

ロープを使った縛り方にはそれなりに知識があるのでロープさえあれば拘束ができる。しかしそれを生み出すことができない。となればあとは既製品を持ってくるしかなかったのだ。一応力を封じる効果があるので大妖怪相手にもそれなりに効果がある…はず。少なくとも妖精であれば行動不能にすることができるはずである。

 

「定晴さん、チルノちゃん起きないので回復してもらってもいいですか?チルノちゃんも縛っちゃっていいので」

 

いいんだ。いやまあいいけど。

再生をかけるまえにチルノをスターにも使ったロープで縛り、回復させた。目が覚めてからしばらく「ムガー!」と騒いでいたが、動けないことを理解したら落ち着いた。

 

「大丈夫チルノちゃん?」

「大ちゃんのせいで大丈夫じゃないわよ」

 

まあ確かにロープで縛られている相手、しかも自分たちで縛った相手に対して大丈夫と問うのは皮肉にもほどがあるな。まあ目が覚めて暴れだしたところを見ると縛って正解だったなと思うので仕方ないけど。

 

「チルノ、一回落ち着け」

「うっ…分かった…」

 

意外にもすんなりと頷いてくれた。やはり拘束したのが功を奏したのかもしれない。

 

「チルノが暴れないなら拘束だってしないさ。しっかり大妖精の話を聞いてやれ」

「…分かった」

 

今日のチルノは実に素直だ。チルノは一度の負けでここまでへこたれることはないのだが…まあいい。そこらへんのことは全部大妖精に丸投げだ。

 

「んじゃ俺はスターと話でもしようかな」

「はい。私がチルノちゃんと話している間、色々と情報を探ってください」

 

未だに気絶しているスターのところへ。大妖精から聞いた話だと星の妖精スターサファイアの能力は【動く物の気配を探る程度の能力】であり、光の屈折なんかとは違って目の前で小技で逃げられるということはないだろう。大妖精のような俺が知らない妖精術があったら困るが…まあ怪しい動きを見せたら無効化を使えばいいだろう。

スターに再生をかけて回復させる。外傷はなく、気絶していただけなのでチルノと同じようにすぐに回復した。

 

「くう…人間に捕まってしまうなんて、妖精として不甲斐ない…」

「残念だったな。まあ俺は今回異変解決の依頼については受けてないんで放置してもいいんだが…というか俺が動きすぎても霊夢に文句を言われるから放置せざるを得ないんだが…まあ情報提供料でも貰おうかと思ってな」

「はあ…」

 

何かよく分からないと言う顔でこちらを見るスター。だって仕方ないだろう。先日の異変で俺が勝手に黒幕である早鬼を倒してしまったので霊夢に怒られてしまったのだ。異変解決の功績云々は霊夢に譲ったわけだし食事も作ってあげたので機嫌はなおったのだが…また同じことをすると今度こそ霊夢に弾幕勝負を仕掛けられる可能性がある。そういえばまだ霊夢と弾幕勝負はしたことないな…

 

「私は何も喋らないわよ。むしろ私を捕まえておくことで悪くなるのはあなたたちよ?」

「ほお。どういうことかな」

「私が捕まっていることを知ればきっと他の二人が来てくれるわ。光の三妖精の前にあなたたちは倒されるの!」

 

何も喋らないと言う割には情報を話してくれそうな雰囲気だ。取り敢えずスターをここにこのままにしておけば他の二人がスターを回収しにくるということが分かった。まあ三人集まったところで妖精程度に負けるつもりは毛頭ないが…相手側の戦力を潰しておくのに越したことはない。

 

「俺が博麗神社にこのままお前を預けるって言ったらどうする?」

「やっ、やめて!」

 

青い顔をしながら顔を横に振るスター。流石に縛られたままの何もできない状態で霊夢に会うのは嫌なのだろう。多分スターたちも霊夢には悪戯をしたことがあるだろうからこのまま霊夢の前に置かれれば相応の報復が飛んでくるかもしれないと思っているのだろう。霊夢はネチネチする性格じゃないので前の悪戯は忘れていそうだが…それとも最近になってから悪戯をしたのだろうか。

 

「定晴さん、チルノちゃんを説得しました」

「お、意外と早かったな」

「今のチルノちゃん弱いところがあるのでそこを突きました」

 

にっこり笑いながらそんなことを言う大妖精。少しばかり恐怖心が湧いてくる。それって尋問のときとかに使われるテクニックなのでは…?

大妖精の後ろには顔を赤らめたチルノが立っていた。先ほどに比べて更に大人しくなっている。もしかして大妖精がビンタでもしたのだろうか。そういえば大妖精、実は腕っぷしがあるなんていう噂を聞いたことがあるようなないような…

 

「スターちゃんは…どうしましょうか?」

「というか俺はどうすればいい?チルノの保護という依頼は達成したと考えていいか?」

「あ、確かにそうですね。報酬は定晴さんの家に置きっぱなしなのでそのまま貰っちゃってください」

 

取り敢えず大妖精からの依頼は完了。依頼料は少ないので仕事としてはあまり割に合わないが…まあ今の大妖精が笑顔なのでいいとしよう。

とはいえ異変の因子をそのままにしてしまってもいいのだろうか。妖精たちの異変、被害は少なくとも規模がとてつもなく大きくなりそうだ。幻想郷中に妖精は生息しているのでこのまま三妖精が幻想郷の妖精を支配すれば大変なことになる可能性が非常に高い。妖精は飽きっぽいので途中で離脱する野良妖精もいるだろうが…それでもすごい数になりそうだ。

得た情報を元に霊夢に…いやでも流石に幻想郷中の妖精を消し飛ばされると大妖精もいい顔をしないだろう。というか問答無用式異変解決を根幹にしている霊夢の場合大妖精やらチルノやらも関係なく吹き飛ばしてしまいそうだ。

まだ異変は起きていない。弾幕勝負での理念の一つに異変を起こしやすく、解決しやすくするというものがあるので異変が起きる前に解決してしまうのはタブーなのかもしれないが…被害はない方が嬉しいだろう。

 

「仕方ない…大妖精、チルノ、俺はこのままこの妖精たちの色々を解決しに行く。お前らも巻き込まれないように人里にでも逃げ込んでおけ」

 

結局のところ俺がやってしまうのが手っ取り早いのだ。誰かやってくれるだろうと待っていては仕方ないのである。

 

「分かりました。スターちゃんも連れていきますね…あ、そうだ!チルノちゃん、定晴さんの補佐やらない?」

「大ちゃん?」

「チルノちゃんも向こうにイライラしてるから攻撃してたんだよね?定晴さんが一緒なら私も安心できるし…どう?」

 

どうやら大妖精はチルノを俺の補佐につけたいようである。まあ戦力があって困ることはないのだが…ちなみに大妖精は俺の言った通り人里に逃げ込むらしい。あそこには慧音がいるし、しっかり保護してくれるだろう。

 

「ん…分かった。定晴、あたいに任せてちょうだい!」

 

途端に元気になったチルノ。まあ調子も悪くなさそうだし先ほども妖精たちを相手に圧倒していたので不安もない。

俺は大妖精と別れてチルノとともにこの妖精大戦争と呼ばれる事件を解決しに行くのだった。

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