東方十能力   作:nite

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二百六十九話 警備員には不向きな種族

「それで定晴、どこに向かうの?」

「チルノはどこを目指していたんだ?」

「あたいはとにかく妖精がいる方へ行っていただけよ」

 

行き当たりばったり…しかし確かに妖精がいる方にひたすら進むというのは同時に得策でもあるかもしれない。妖精一人一人には行動範囲があるものの、妖精という種族に行動範囲はない。強いていうならば幻想郷全域だ。つまり本拠地がどこなのか絞り込むことができないということだ。流石に配下だとかなんだとか言って軍のようになっている以上本拠地も存在すると考えていいだろう。

本拠地、というものは基本的に秘匿される。戦争なんかでそこを攻撃されたらひとたまりもないからだ。故に秘匿されるうえに攻撃されにくい場所に存在することが多い。戦国時代なんかは城をどどんと建てていたが、あれは現代のように長距離の攻撃手段が弓とか鉄砲しかなかったからであり、外の世界ではミサイルなんかが開発されてからは秘匿されるようになった。

幻想郷には流石にミサイルと言えるほどのオーバーテクノロジーはないのだが、長距離攻撃が可能な者はいる。紫なんかがいい例だ。俺も全力で輝剣を飛ばせば多分博麗神社から紅魔館くらいまでは飛ばせるはずだ。身体強化でそれくらいの威力が出るから鬼の勇儀とか萃香も全力の鉄球投げでミサイルくらいの威力は出せるだろう。要は強固な守りというのは幻想郷でも必要だということだ。

 

「チルノ、妖精たちが隠れ家にしてるところとか分かるか?」

「行ったけど誰もいなかったわよ。あたいが知らないところにいるんじゃない?」

 

どうやら一応隠れ家を探すという知恵くらいはチルノでも思いつくようだ。妖精の中ではガキ大将のような立ち位置にいるチルノだが、それでも隠れ場所のすべてを知っているわけではないだろう。むしろチルノに見つかりたくない妖精なんかは隠そうとするはずだ。

となればやはり妖精が集まっている方向に進み続けるのがいいか…

 

「妖精が多い方向とか分かるか?」

「それなら分かるわ!あたいについてきなさい!」

 

チルノが飛び出していった。チルノって結構早く飛べるんだな。妖怪と同じく妖精も精神生命体的な部分があるのでやる気があると早く飛べるのだろうか。

チルノについていくとやはり妖精が多く集まっていた。妖精にしては珍しく遊ぶことはなく周囲を警戒しているように見える。もしかしたらそういう遊びなのかもしれないけど。

 

「あの妖精の集まりはどう思う?」

「そうねぇ…攻撃して分からせればいいわ!」

「待て待て待て」

 

飛び出そうとしたチルノを捕まえる。

あまり敵側を刺激するのは得策ではない。俺とチルノの二人がいるので三妖精のうちの残りの二人が出てきても容易に撃退できる自信があるが、大妖精の言っていた強力な助っ人の存在も気になる。無暗に突っ込むわけにもいかないだろう。

 

「チルノ、あそこらへんに洞穴とかあるのか?」

「あそこはただの遊び場よ。あたいたちの縄張りじゃないからよく知らないけど洞穴なんかないはずね」

 

ここから見る限りでは洞穴も秘密基地も見当たらない。しかしあの自由奔放な妖精が一点に留まって警戒態勢となっているのだ。今の妖精たちの状況からしても何もないということはないだろう。

 

「あれってバレずに近づけたりしないか?」

「…キラキラ光る石でも投げればみんなそっちに引っ張られるわよ。前もそれで大ちゃんが妖精たちを遠ざけてたし」

 

やはり妖精は単純だった。そんな注意力散漫な種族が警備だとか警戒だなんて無理な話だったのだ。

適当にそこらへんに落ちていた石を拾って魔術で適当にキラキラさせる。そしてあそこにいる妖精たちの視点に入るように適当に投げる。適当ばかりの作戦だけど妖精相手にはこれでも問題ない。キラキラさせる魔術は本当にただキラキラするだけなので効果時間はそれなりにあるので運が良ければどこかで妖精たちが石で遊び始めるだろう。

 

「あ、きらきらー!」

「きらきらだー!」

「まてー!」

 

警戒していた妖精たちは石に引っ張られるように森の中へと入っていった。基本的に妖精は一人が動き出したらそれにつられてみんな動き出すのであっという間に妖精たちはいなくなってしまった。追い石とばかりにあと何個かキラキラさせた石を森の中に投げておく。

 

「やるじゃない」

「妖精たちが単純なだけだ」

 

俺たちは茂みから出て妖精たちが警戒していた場所へとやってきた。洞穴や秘密基地の類はやはりない…しかし何か地面に違和感がある。幻想郷の地面は整備されていないのでボコボコなことが多いのだが、なぜか一か所きれいに均されているのだ。しかしそこには何もない…

 

「チルノ、ここ凍らせられるか?」

「任せなさい!」

 

チルノが地面を凍らせた。物が凍るというときはそれなりの水分量が必要なはずなのに冷気ですぐにカチコチに凍らせることができるあたりチルノはやはり強いのだろう。

凍った地面、そこには歪んだ魔法陣があった。どうやら三妖精の能力で光が曲がって見えなくなっていたようだ。しかしチルノが氷漬けにしたことによって屈折率が変わって見えるようになったというわけだ。チルノは氷を溶かすことはできないみたいなので俺が火の魔術で溶かして元の状態に戻す。魔法陣の解析をしなければいけないからだ。

しかし氷が無ければ見ることはできない。そこにあると分かっていても流石に何も見えなければ解析などできるはずもない。

 

「チルノ、これからすることは秘密で…いや、そういえばチルノには前に見せたことがあったな」

「え?」

 

魔法陣の周辺の空間に対して〈魔法陣に対してのすべての影響〉を無効化した。少しの硬直、も戦闘中ではないので問題なく終わる。チルノには地底での異変のときに既に一度無効化を見られている。それに何かとチルノは異変に関係してくるので見られてこともあるだろう。隠す必要もなかった。

多分魔術を色々したり結界で色々したりすれば光の屈折はどうにかなるのだろうけど面倒だったので全部無効化で吹き飛ばした。一言で表現できる事柄の範囲なら大体無効化できるのはやはり楽だな。

俺が無効化を使ったことで魔法陣が露わになっている。これなら解析も容易だろう。それに妖精が作った魔法陣ならそこまで難しいものでもないだろうしな。

 

「俺が魔法陣を解析する間周囲の警戒を頼めるか?さっきのやつらみたいに光る石でつられるなよ」

「任せなさい。あたいが定晴をまもったげる!」

 

今日のチルノは本当に聞き分けがいい。俺は安心して魔法陣の解析を始めたのだった。

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