東方十能力   作:nite

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二百七十話 魔法陣作戦

解析はほんの数分で終わった。一応妖精がオリジナルで作ったものではなくどこかの魔導書か何かから持ってきた魔法陣だったらしく少し驚いたが、パチュリーのところである程度魔術に関して教わっているためむしろ予定よりも早く解析が終わったくらいだ。思えば妖精にオリジナルで魔法陣が作れるはずもないか。

 

「チルノ、終わったぞ」

「早かったわね」

 

チルノは一応周囲を警戒してくれていたが、警備していた妖精は一度も戻ってくることなく他の妖精が来ることもなかった。スターは大妖精が捕まえてくれているだろうから俺たちの情報が洩れることはないだろう…だが、スターを探しに他の妖精が来る可能性はある。早めに片付けてしまわないとな。

 

「この魔法陣は力を貯めるだけのやつだった。妖精って力を貯める必要ってあるのか?」

「あたいたちは自分の容量以上の力があったとしても使えないわよ。そんなことならあたいが幻想郷でサイキョーだし!」

 

妖精が扱える力は一定量で決まっているらしい。魔法使いが大魔法を使うときなんかには魔力タンクから魔力を引き出すこともあるとパチュリーは言っていたが…すべての種族がそのように力を扱えるわけでもないのだろう。

しかしとなればなぜ妖精がこの魔法陣を守っていたのだろう。経緯からしてこの魔法陣は三妖精が用意したものだろうことは予測できるが、その目的は分からない。大妖精は助っ人のことを強い妖精だと言っていたが、もしかしたら普通の妖怪の可能性も出てきたな。

 

「もしかしたら他にも同じ魔法陣があるかもしれないな。解除してしまおう」

「じゃあ次の妖精が集まっているところへ行けばいいのね!」

 

チルノがムムムと意識を集中させている。あんなので妖精の気配が探れるのだろうか。同族だし特殊な交信方法でもあるのかもしれない。クジラの鳴き声とか、エコロケーションとかそんな類の。

俺は俺でこの魔法陣を解除しておく。何のための魔法陣かはわからないが、時限爆弾みたいなものなのだ。魔法陣は基本的にその陣を形成している基点となる部分を破壊してしまえばすぐに使えなくなる。だからあまり魔法陣というのは一般的ではないのだが…俺は輝剣で基点を破壊してしまう。

そういえば先日の動物霊の異変でも似たようなことがあったことを思い出す。確かあのときは魔法陣ではなく動物霊が魔力のタンクになっていたはずだ。そういえば結局あの動物霊はなんのためにあそこにいたのだろう。ルーミアがあの動物霊は退治してしまったのでもうわからないが…

 

「あっちよ定晴!」

「はいよ」

 

俺は思考を中断しチルノの後ろをついていくのだった。

 


 

幻想郷のとある穴の中。二人の妖精が話し合っていた。その顔はそれぞれ不安と怒りを表していた。

 

「スター、どこに行ったのかしら…」

「絶対チルノのやつだって!野良の子たちが魔法の森でスターとチルノが戦ってるのを見たって言ってたもん!」

 

光の三妖精のうちの二人、ルナチャイルドとサニーミルクはスターサファイアの身を案じていた。数十分前に出掛けたスターがいつまで経っても帰ってこないからだ。

また、サニーは野良妖精からの報告を聞いていた。三妖精が配下にした妖精の中でもそれなりに言うことを聞いてくれる頭のいい妖精だ。しかしその報告は少しばかり情報が欠けていた。

サニーはスターとチルノの姿しか報告されていないが、野良妖精はきちんと定晴のことも確認していたのだ。しかしその野良妖精は定晴のことなど知らないし、名前も分からなかったので人間の男として報告しようと考えるが…妖精がそんな曖昧な内容を覚えていられるはずもなく、結局スターとチルノのことしか報告しなかったのである。

 

「じゃあスターはピチュってるってこと?」

「かもしれないわね」

 

因みに今更ではあるが、ピチュるというのは一回休みになることだ。妖精以外では被弾するという意味で使われることが多い。

妖精は自然のエネルギーの塊なので自然が無くならない限りは死ぬこともないが、致死量のダメージを受けるとそのまま力が霧散して消えてしまう。そして一定期間後にまたエネルギーが収束して妖精が生まれる。この消えてから生まれるまでの期間を一回休みと言っている。

この期間というのはその状況によって様々であり、例えば森の妖精が森の中でピチュった場合はすぐに復活する。しかし森の妖精が海の上でピチュると時間がかかる。自然のエネルギーの塊である妖精は周囲の環境によって復活時間すら左右されてしまうのである。

ではスターはというとその名の通り星の妖精である。正確に言えば星の光の妖精なのだが、どちらにせよ星が出ていない昼間では復活までに時間がかかってしまう。もしピチュンしていたとしても確かめる方法がないのだが、少なくとも夜まで待たなければスターは帰ってこないだろうと二人は結論付けた。

 

「チルノに復讐しに行く?どこにいるか分からないけど」

「それは別にいい!それよりも作戦に関しては進んでるの?スターは夜には帰ってくるだろうし大丈夫!」

 

先ほどまではチルノへの怒りを分かりやすく表していたサニーだったが、色々と考えた結果もっと重要なことがあると思い出して怒りが収まった。この切り替えの早さは妖精の単純さが顕著に現れている例だと言えるだろう。

尚スターは現在大妖精とともに人里にいるのでこのままでは夜になっても帰ってくることはないだろう。大妖精の監視のもと寺子屋にでも一泊することになるが、二人はそのことに気が付くはずもなかった。

それよりも、と二人は手元にある紙を見た。これはとある人物が突然渡してきた作戦の書かれた紙である。三妖精はここに書かれている通りに準備を進めているのだった。

 

「魔法陣ってよく分からないけど順調…なんだよね?」

「そのはず。それに私たちが能力で隠してるんだから見つかるはずもない今はまだ魔力を貯めないといけない期間らしいから待つけど…私たちは私たちで助っ人の準備もしないとね」

「だねー」

 

三妖精が用意した助っ人というのは作戦になかったことだった。しかし万全を期すために妖精の中でもとりわけ強い妖精を探したのだ。先日の不動の異変でチルノが色々と活躍したことを知った三妖精はチルノを抑えるための陣営が必要なのだと考えなおし助っ人に頼ることにした。勿論三妖精は三人集まればチルノにも負けることはないと考えているものの、ずっとチルノに張り付いていても作戦を進めることができない。妙なところで合理的に考えることができる三妖精なのだった。

 

「それじゃあ私はそろそろ助っ人に動いてもらうから、あそこに行ってくる」

「あそこは苦手だから…いってらっしゃーい」

 

ルナもまた出かけて行った。協力な助っ人に動いてもらうために。

秘密基地に一人残ったサニーは呟く。

 

「それにしてもこの紙を渡してきた人、怖かったなぁ…」

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