東方十能力   作:nite

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二百七十八話 あたしは補佐

結局三人ともから尋問をした。みんな何も言わないと最初言っていたものの、やはり言葉の節々から情報が漏れている。そのおかげで俺は大体の本拠地の場所を決めることができた。一人からだとあまり情報は得られないのだが、人数が増えたことでいい感じに失言し合い情報を引き出すことができた。

 

「さてと…お、チルノ、起きたな」

「…うん。あたし、もっと頑張るから!」

 

顔を真っ赤にしているチルノが大声で宣言する。また大妖精に何か言われたのだろうか。俺はあまり大妖精に対していたずらっ子というイメージはないのだが、どうやら同種族からするとそうでもないようで、今みたいにふとした時に少し意地悪らしい。俺が尋問している間に変なことをチルノに吹き込むのは結構悪意を感じる。

 

「大妖精、変なことは言ってないな?」

「えへへ、大丈夫です。チルノちゃんに再確認しただけですから」

 

まあチルノも不快になった様子はないので良しとするか。どうやらルーミアは尋問の情報を聞きつつも大妖精たちの会話も盗み聞きしたようで大妖精とチルノを気にしている。ただルーミアも内容については教えてくれなかったので分からないが…まあ悪いことではないだろう。

 

「ルーミア、何かあったら式神の繋がりで呼んでくれ」

「んー」

 

間延びした声で返事をするルーミア。家とかだと結構しっかりと受け答えしてくれるのでこういう反応をするのは珍しい。基本的に外でのルーミアの態度はルーミアの今までと本などから得た子供像を参考にしているので、この間延びした返事もルーミアの知る子供像の一つなのだろう。やっぱり新鮮。

 

「じゃあチルノ、多分最後の仕事だ」

「まっかせなさい!」

 

うん、元気。チルノの元気はやはり見ていて気持ちがいいな。元気すぎて慧音たち大人組に怒られることも多いみたいだが、子供らしくて俺は良いと思っている。悪戯するのは妖精全員の性だから注意したとてやめることはないだろうし。

俺はチルノを連れ立って最後の目的地に向かった。

 


 

スターとルナの二人から得た情報を元にすると、どうやら作戦本部となる拠点は人里と博麗神社の間の森。つまり俺の家がある森にあるようだ。流石の俺もまさか同じ森に拠点があるとは思わなかった。灯台下暗しとはまさにこのことだな。

とはいえ正確な場所は分からないのでまたもやチルノによる妖精探知に頼るしかあるまい。俺の力に索敵能力があるならそれでよかったのだが、そもそも幻想郷には妖精が多すぎるので単なる探知だと見つかりすぎて逆に意味がなくなる気もする。

 

「むむむむ…」

 

チルノが妖精探知を始めた。しかし今までとは違い随分と時間がかかっている。やはり無様に力を垂れ流して発見させるようなことはしないか。

 

「…だめね。あたしじゃわかんなかった…ごめん定晴…」

「気にすんな。本拠地がそう簡単に分からないことは承知の上だ」

 

本拠地は一番隠すというのは定石だ。流石に妖精といえど本拠地を分かりやすいところに置いておくなんてことはしないだろう。野良妖精ならば目立つところに作ってもおかしくはないが、ある程度の力を持った妖精ならばそんな馬鹿なことはしない…と思う。

 

「とはいえある程度は算段がないと大変だから…」

 

俺が住んでいる森は、博麗神社の外側を全部囲っている森でもあるのでその大きさは相当なものである。もしかしたら霊夢か水那にここらへんの妖精活動記録を訊いたらある程度搾れるかもしれないが、最悪霊夢の妖精撲滅計画が始まってしまうのでできる限り避けたい。水那に訊けば…とも思うけど霊夢の耳に入らないとは限らないので少々気が引ける。むしろ霊夢に隠れて行動したせいで逆に怪しまれる可能性すらある。

 

「一回上空に行くか」

 

チルノとともに森の上まで飛んでいく。

この森は魔法の森と違い瘴気とかはなく、また魔法の森ほど鬱蒼としていない。博麗神社まで続く参道があるくらいだからな。この参道を作ったのがいつの時代の誰なのかは知らないが、人里から繋がっていることを考えると紫ではなく過去の人里の誰かだろう。人間でも切り開けるほどの森なのだ、ここは。

 

「チルノ、何か見えるか?」

「うーん…」

 

つまりここは上空から見てもそれなりに見晴らしがいい。少なくとも自分たちの真下周辺であれば木々に邪魔されることなく地面を目視できるくらいには開けているのだ。残っている三妖精は大妖精曰く光を屈折させて移動するらしいので多分普通にあの森の中ですれ違っても分からない可能性がある。チルノが気が付いてくれるならいいが…あとになってチルノに責任が行くという状況もあまりよろしくない。

 

「あっ!」

 

チルノが声をあげた。森のどこかを指さしている。

そのままチルノが指さしている方向へ飛んでいく。余談だが俺の家の周りにいた雑魚妖怪(理性がない獣系の妖怪)は俺が間引いているので妖精たちでも十分安全に移動することができる。霊夢が博麗神社周辺の妖怪を退治しているだろうし、そこから逃げてきた妖怪たちだったのだろうなぁ…俺が間引いたせいで今回三妖精たちに拠点を作られてしまったのは失点だったが。

 

「ここ、妖精の住処!」

「おー、よく気が付いたな」

 

どうやらチルノは森に漂う冷気を辿って見つけたらしい。そんなことができるとは…あれ、俺が思っている以上にチルノって強いのか?取り敢えずチルノは撫でて褒めておく。

 

「えへへ…」

「しかし誰もいないな」

 

スターとルナの二人は人里で捕獲しているので残っているのはサニーただ一人。拠点に残っているのかとも思ったのだが…

 

「なっ!誰よあんたたち!」

「お?」

 

振り返ったらオレンジと白の服を着た妖精が一人立っていた。流れからしてこいつが光の三妖精の最後の一人であるサニーミルクだろう。どこかへ行っていたようだが丁度帰ってきてしまったらしい。

 

「チルノ、捕まえろ!」

「任せて!」

 

俺は結界を使ってここらへんから逃げられないようにする。弾幕ごっこは始まってすらいないので回避不能な状態を作り出しても許されるという暴論だ。実際のところはどういう評価になるのか知らない。あとで霊夢に聞いておいた方がいいだろうか。

 

「なんでチルノが人間と一緒に!」

「あたしは今定晴の補佐なの!」

 

サニーの疑問に対してチルノが珍しい対応をした。

チルノは基本的に自分が他の奴らよりも上だという認識で生きている。実際妖精社会の中では上の方なのは間違いないからだ。それゆえに俺と最初会った時のように人間相手でも部下とか配下とかにしてこようとする。そのチルノが自ら俺の下であることを宣言したのだ。別に俺はチルノのこと部下だとは思ってないけどね。

 

「ふにゃあ…」

 

チルノがサニーを凍らせた結果、弾幕ごっこをすることもなくサニーを捕獲することに成功したのだった。

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