東方十能力   作:nite

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二百八十一話 紅魔館の客人

久しぶりに紅魔館にやってきた。最後に来たのはホワイトデーの時だから随分と時間が空いてしまったな。二週間以上紅魔館に来ないというのも中々ない。

地底に行ったり妖精の暴走を止めたりと色々して疲れてしまっていたので中々こちらに来る機会がなかったのだ。尚それ以上に守矢神社には行けていない模様。早苗に怒られないだろうか…

 

「お、美鈴起きてるな」

「こんにちは定晴さん。そうなんですよぉ、私も仕事をさぼらずにできるようになったってことです」

 

キリっとした顔でそんなことを言う美鈴。しかしながら美鈴の帽子にナイフのようなもので刺されたあとがあるので多分だけど何かしらあってついさっき起こされたところなのだと推測する。そうでなければ美鈴は帽子を早く修繕した方が良い。美鈴の服は全体で一体感があるからこそきれいに見えるので帽子に穴が開いているとすごい目立つ。

 

「そんなこと言って、さっき私が起こしたんじゃない」

「違いますよ!あれはただ目を瞑っていただけで、瞑想の一種です!」

「鼾をかいていたじゃないの」

 

咲夜が時間停止による瞬間移動をしてきた。どうやらやはり美鈴は起こされたばかりだったらしい。

瞑想というのは集中力を高めるために行うものではあるが、多分美鈴にはあまり向いていないだろう。高い集中力を更に上げるのが瞑想であり、集中力がない人が瞑想してもそれは睡眠導入にしかならない。

 

「定晴様、いらっしゃいませ」

「おう咲夜」

「現在別の客人が来てますがよろしいですか?」

 

客人?俺が紅魔館に来たときに同時に紅魔館にいる可能性がある人物は魔理沙だ。しかし咲夜は魔理沙のことを客人だとは認識していないようなので魔理沙ではないということになる。あとは…魔女繋がりでアリスとかそこらへんだろうか…と思っていたのだが、

 

「早苗が、来てまして」

「早苗か。珍しいな」

 

どうやら山を下りて紅魔館まで早苗は来ていたらしい。布教かな?

咲夜は霊夢や魔理沙は勿論のこと、妖夢や早苗のことも呼び捨てにするし敬語を使わずに話す。所謂自機組と呼ばれる集まりだな。妖夢などは人里で一緒に買い物をすることもあるようで、それなりに親しくしているのだと妖夢の方から聞いたことがある。

 

「多分大丈夫だろう。なんか重要な話か?」

「いえ。ただ珍しく妹様と話していたので秘密の話かもしれません」

 

フランと早苗?ますますよく分からないな。二人に共通する事項は…幻想郷在住ってこと以外思いつかないな。あまり早苗が山を下りて活動しているイメージもないので少々驚きである。ああでも、そういえば早苗は霊夢と違って人里で布教活動をしているんだっけか。俺が買い出しに行くタイミングで見ることがあまりないから忘れていた。

 

「じゃあ早苗が話し終わるまでレミリアとでも話しておこうかな」

「お嬢様は現在おやすみ中でして…」

「ん?じゃあ…咲夜の手伝いでもしようかな」

「い、いえ!定晴様にお手伝いをいただくわけには!」

 

どうやら今日は地上側で何かするというのはできないようだ。フランが早苗と話していて、レミリアが寝ている以上幻空に入れてきたお菓子を出すわけにもいかないし、仕方ないので地下に行くとしよう。

 

「申し訳ありません」

「気にしなくていい。アポなし訪問だからな」

 

そういえば俺紅魔館にアポを取ったことないな。一番最初に来た時も何も通知せずの来訪だったわけだし。その後も紅魔館に来るときは何の連絡もしない。今度から新しく覚えた紙を使った式神でも使役してみるか。一応式神術の方も練習してできることは増えているのである。

 

「で、ここに来たわけね」

「ああ。折角なら新しい魔術の本でも…あ、そういえば…」

 

魔女の魂が俺のところに来てから魔術の適正を一度も調べていないのを思い出した。というのも紅魔館に来るとレミリアとフランと話しているだけで時間が過ぎて図書館まで足が伸びないのである。結果未だにパチュリーには魂の話すらしていない。

 

「パチュリー、また魔術の適正調べてもらっていいか?」

「別にいいけど…適正なんてそうそう変わらないわよ?」

「なんもないならいいんだ」

 

ミキ曰く、適正というのは魂との共鳴度らしい。生物っていうのはそうそう魂が変化しないために適正というのは滅多に変化しない。しかし俺は魂に別の魂を受け入れることができるので適正が変化しうるのである。尚最終形態はミキであり、あいつは全属性適正である。勿論その分魂の数も多い。

 

「じゃあ裏庭まで来て」

「はいよ」

 

パチュリーと共に前回と同じ裏庭に来た。今回は俺もパチュリーに教わりながら魔術適正を知るための魔法陣を描いていく。結界は使えるけど、魔法陣を書いたことはなかったので中々に興味深い。ただ新しく魔法陣を作るとかはできそうにないな。

 

『私が教えましょうか?』

『あー…時間があれば』

 

魔女が提案してきたが、多分めっちゃハードなので少し遠慮してしまう。魔女たちのように寿命がとても長いのならばいいが、俺はただの人間なのでどうしても他のことをしたくなってしまう。

数分かけてやっと魔法陣が完成した。魔力を通すとしっかり反応するので失敗しているということはなさそうなので一安心。俺は魔法陣の上に乗ってパチュリーに魔法陣を使用してもらった。魔法陣をしてしばらくするとパチュリーが訝しげな顔をした。

 

「適正が…変わってる?あなた、何をしたのよ」

「変わってなかったらそれでよかったんだが、やっぱり変わってたか…」

 

まあ予想はしていたことである。それに魔女からも適正が変わっているだろうと伝えられていたしな。

 

「風の適正はそのまま、それ以外の適正がどれも十分なところまで跳ね上がってる…もしかして、前に言っていた魔女の魂とかいうやつ?」

「お、そうそう。それそれ」

 

傀儡異変と呼ばれている不動の異変の宴会でパチュリー含めた魔女組に魂封石の話はしたし破片も渡している。だからパチュリーはすぐに原因を思いついたのだろう。

 

「でも魂を取り込むだけで適正が変化するなんて…」

「取り込むだけって言っても魂を増やすなんて相当なことだぞ。少なくとも俺は俺自身とミキ以外に魂を取り込めるやつは知らないしな」

 

まずもって魂を取り込むなんてことを普通の人がしたら体と魂の器が耐えられなくて崩壊する。俺が魂の中に入るときに行く空間は、俺のものはとても広いが、普通の人であれば体を動かすので精一杯な広さしかないのだ。そこにもう一人なんて器が壊れるに決まっている。

だが魂というのはそいつの一生そのものだ。取り込めばすごいことになるのは明確だろう。まあ最悪の場合取り込んだ方の魂に飲まれるとか廃人になるとか起きるから安易にすべきではないけど。

 

「ちょっと研究を覆すことになりそう…私は自室に籠るから、本なら小悪魔にでも聞いてちょうだい」

 

それだけ言うとパチュリーは図書館へと戻って行ってしまった。

魂って俺は知覚できているし、ミキという前任者もいるので理解できるものの、一般の感性からすれば想像もできないことだからな。それに俺も魂構造を言語化しろと言われても難しいので、本なんかに書けるものでもない。

さて、では図書館で本でも読もうかと思っていたら、紅魔館から俺を呼ぶ声がした。

 

「おにいいさまああ!」

 

紅魔館の二階の窓から身を乗り出してこちらに手を振っているフラン。よく見るとその後ろには早苗の姿もある。どうやら日光に弱いフランが窓から落っこちてしまわないかハラハラしているらしい。多分窓から落ちてしまったもフランなら咄嗟に飛ぶと思うのであまり心配はいらないと思うが、そこらへんの感性はまだ外の世界といったところなのだろう。

 

「話は終わったのかー?!」

「終わったー!」

 

何の話をしていたのかは分からないが、早苗との話が一段落ついて俺のことを呼びに来た、といった感じか。

 


 

紅魔館の地上側のフランの部屋へ移動する。

フランの部屋はフランが幽閉されていたという地下室の他に地上に出てきた後にレミリアがフランに与えた地上側の部屋がある。最近のフランは結構地上の部屋にいることが多い。地下室への道のりが若干長いのでそこまで移動するよりも地上で遊んだ方が長く遊べるとフランが判断した結果だ。

フランの部屋に着くとそこにはフランと一緒に早苗も待っていた。

 

「改めてこんにちは、フラン。それと早苗も久しぶり」

「えへへぇ、ごきげんようお兄様!」

「お久しぶりです定晴さん」

 

二人ともに会うのはホワイトデー以来となる。ホワイトデーの時は少し変な反応を示していたフランだったが、今日はいつも通りのようだ。

 

「紅魔館で定晴さんと話すのは変な感じですね」

「そうだな。俺も、早苗が紅魔館にいるって聞いて驚いた」

 

博麗神社の霊夢に比べて守矢神社の早苗は断然アグレッシブだ。信仰を集めるための活動には余念がないし、必要なことはできる限りすぐに実行するタイプ。多分現在の宗教情勢は博麗神社がダントツで最下位だろう。最近知ったのだが、幻想郷には神霊廟なる宗教施設もあるらしいので、博麗神社以外の情勢はよく分からない。

 

「ちょっとフランちゃんと話したいことがありまして…」

「らしいな。咲夜も内容は知らないって言ってたし」

「私とフランちゃんの秘密のお話です」

 

どうやら本当に内容については全く教えてくれないらしい。まあ別に無理して聞くようなものでもないだろうし、乙女の秘密を暴こうなどと考えているわけでもないので問題はないが。

 

「うーん…紅魔館に来るときにはいつもスイーツを作ってきているんだが…早苗の分は用意してないんだよなぁ」

「あ、いえ!お気になさらず!」

「そういうわけにもいかないだろう。折角なら食べてくれ」

 

まさか紅魔館に客人がいるとは思わなかったので余分な量は作ってきていないのだ。

 

「咲夜ー」

「はい、定晴様」

 

なぜか知らないけど俺が紅魔館にいる間は呼びかければ基本どこからでも現れる咲夜を呼び出す。もしかして俺の体のどこかに盗聴器とか発信機とかついているのだろうか。流石にそんなことすれば俺か魂の誰かが気が付くと思うが…

 

「キッチンを借りてもいいか?」

「ええ、勿論です」

「というわけなので、今から早苗の分も作ろうと思います」

 

早苗は外の世界で言うと女子高生くらいの年齢だろう。正確な年齢は知らないが、スイーツを食べてキャピキャピするような生活をしていてもおかしくないのだ。ならばせめてこういう機会に幻想郷では中々食べることができないものを食べさせてあげたい。

 

「お兄様のお手伝いするー!」

「私もお手伝いさせていただきます」

「自分の分は流石に手伝います!」

 

三人の助っ人も得て紅魔館のキッチンへと向かった。

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