東方十能力   作:nite

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まずい…一話あたりの文字数が増えていく…


二百八十二話 四人のクッキング

「そういえばチルノちゃんから聞いたよー」

 

キッチンでデザート作りの準備を進めている最中、フランが話しかけてきた。チルノ…ということは先日の妖精異変の話かな。

 

「私も誘ってくれたらよかったのにー」

「流石に無関係な人を巻き込むつもりはないぞ」

 

あの時は大妖精とチルノがちょうどその場にいたうえで依頼の延長線上の戦いだったからな。それにまだ異変が起きていなかったにしても異変解決と言っても過言ではないような活動だったのでフランを呼ぶ理由はなかった。態々紅魔館まで来る労力を割く理由もなかったのである。

 

「それにチルノちゃんも…あ、これは秘密だった」

「ん?」

「なんでもなーい」

 

はぐらかされた。気になるけどフランに無理に言わせる必要もないので放置。女の子同士の秘密というのは多分幻想郷じゃいっぱいある。

今日作るのは羊羹ケーキ。実は羊羹とホットケーキミックスなどを混ぜて焼くことで羊羹でケーキが作れるのだ。レミリアからできれば紅魔館で咲夜が出してこないようなデザートを作ってほしいと言われているので創作レシピとして羊羹でケーキを作ったのだ。

一応一般的な羊羹ならなんでもいいので、人里で買ってきた羊羹を使う。そのままでも美味しいものを砕いて料理に使ってしまうというのは少々気が引けるが…リスペクトが重要だ。ケーキは今日紅魔館に来る前に作ったので余った羊羹は幻空の中に入れっぱなしだったのでそのままそれを使ってしまおう。

 

「んじゃフランは羊羹を切ってくれ」

「キュッとして…」

「やめろやめろ」

 

フランの能力を使うと折角用意しているボウルが無用の長物になる。この際だからフランに本格的な料理を教えてみるのもいいかもしれない。一応咲夜の手伝いをたまにしているみたいなのだが…どうも目を離した隙にドッカンされることがあるらしい。多分フランの中では細かくする作業は全部能力を使えばいいという認識なのだろう。今日は無効化も使ってフランを制御していくか。

 

「早苗って料理するのか?」

「守矢神社の料理担当は誰だと思っているんですか?神奈子さまも諏訪子様も料理は得意じゃないみたいなので…」

 

確かに。神様が料理というイメージはないし、早苗が下の者として神様たちに対して料理を作るのは自然な流れだな。むしろ料理を神様にさせるということ自体があまり神社では褒められたものではないと思う。早苗たちは仲がいいようなので心配はないだろうけど。

 

「いつも作るのは?」

「基本的に和食ですよ。お二人も和食がお好きなようですし…それにあまり幻想郷じゃ洋食の材料って手に入りにくいですから」

 

幻想郷は日本の中にあるので、どうしても日本が輸入に頼っている材料というのは幻想郷では手に入りにくいのだ。紫がたまに販売してる外の世界の調味料なんかは突発販売のせいで買いづらいし…

 

「咲夜はレミリアたちに洋食を作ってるんだよな?」

「そうですね…まあ常にではありませんが」

「材料はどこで?」

「紫様のところと…あとはたまに調味料は香霖堂で売っているのでそこで」

 

そうか…日持ちする調味料は香霖堂でも売っているのか。あ、フランが能力使おうとしたのでキャンセル。

霖之助は正直あまり料理をするタイプじゃないし、売れるのであれば咲夜とかに売ってお金にした方が霖之助としてはいいのだろう。霖之助は流れ着いたインスタントを食べることが多い。半分妖怪だからって言ってある程度悪くなっていても食べてしまうのだ。

 

「そういえば霖之助は服も作ってたな。咲夜のメイド服もか?」

 

随分と前の話だが、霖之助が新しい服を博麗神社に届けに行っているところに遭遇したこともある。確かこいしとフランが家に泊まりに来たときだから…大体半年くらい前か。まだ不動の異変も終わっていなかったし、懐かしく思える。

 

「紅魔館で必要なものは私が縫っています」

「あ、でも私の風祝の服は霖之助さんに作ってもらってますよー」

 

咲夜は自作できるみたいだが、流石に女子高生くらいの女の子に丸々一着の伝統服を作るのは無理があったようだ。そういえば博麗の巫女服は霖之助がやる前は誰が作っていたのだろう。霖之助も幻想郷が生まれたときからいるわけではないだろうし…紫か?

 

「フラン、混ぜる指示で全部ドッカンしようとするのはやめなさい」

「え~」

「ほら、泡だて器持って」

 

フランには道具をちゃんと使うというのを徹底させないといけないな。料理ができない人の特徴の一つに、レシピ通りに作らないというのがあるが、基本的にその類のものを本人たちはアレンジだとかオリジナルだとか言う。まず基本ができるようになってからアレンジはしていただきたい。道具の名前がレシピに書いてあるならちゃんとそれに従ってくれ。

 

「フラン、あまり力みすぎるな。落ち着いてやれば大丈夫だから」

「むー」

 

凄い不満そうなフラン。

妖怪たちには結構ありがちなことなのだが、人間基準の使い方を想定しているものに対して力をいれすぎて壊してしまうという問題がある。妖怪たちは基本的に人間の何倍も力が強いのでそれだけで壊しやすいのである。フランは吸血鬼であり、鬼の一種であるとも考えられるせいか力が強い。多分萃香とか勇儀に同じことをさせても同じミスをするだろう。ああでも萃香は技量タイプだから案外なんとかなるかも。

 

「仕方ない。ほら、こうして…」

「ひゃうっ!?」

 

フランの後ろに回って一緒に泡だて器を持ってあげた。フランが変な声を出したが…ああ一言何か言ってからの方がよかったな。

フランに力加減を直接伝えるにはこれが一番手っ取り早い。

 

「うわぁ…創作物の中だけじゃないんですねぇ…」

 

なんか外野の早苗がうるさい。まあ俺の体勢がそんなによくないのであまりするようなことでもないけど…幼い子供に何かを教えるときはこうするのが一番だろう。どうしても本人たちは自分でやりたがるので、一緒にやることで教えるのとさせるのを同時にこなすのだ。まあたまに混ぜることを楽しみすぎて教えても覚えていないことがあるが…フランなら大丈夫だろう。

 

「分かったか?」

「へぅ…うん…」

 

さて、フランが生地を混ぜている間に型を用意しないとな。とはいえフランとレミリアの分は既に作っているので生地もそこまで多くは作っていない。そもそも余り物の羊羹を使っているのでそこまで多くは作れないのだ。あ、でも俺の分は確保されたようである。大体二人分と言ったところ。

うーん、一人一人のためにカップケーキみたいにしてしまうのがいいだろうか。熱の伝わり方の関係上あまり円形から離れた形の型は使えないのだ。ちゃんと全体を焼くならやはり円形が一番ちゃんとできる…と個人的には思っている。

 

「定晴様、こちらを」

「ん?あ、ちょうどいい大きさ」

 

咲夜が戸棚から取り出したのは小さめの円形の型。これなら生地が溢れることなくきれいに収まり焼き上げることができるだろう。

 

「フラン、ここに流し込んでくれ」

「ん…」

 

なんか先ほどからあまりフランの元気がない。流石に能力を無効化されすぎて疲れたか?俺の無効化は起こった事象に対して消し飛ばしているようなものなので、フランからすればちゃんと能力は使っているのである。だから無為に能力を無効化されると疲労だけが溜まるのだが…

 

「フラン、少し休んどくか?もう焼くだけだし」

「そうする…お姉さまのとこで待ってるから!」

 

そう言ってフランはキッチンを飛び出していった。まだまだ元気そうだが…まあ焼き上げるだけだからフランは暇になるだろうし別にいいか。

 

「レミリアは寝てるんじゃなかったのか?」

「寝ていますが…妹様が起こしてしまうでしょう。それにそろそろ起床の時間ですので問題はありません」

 

レミリアの安眠は妹によって終わりを告げることになるらしい。吸血鬼なのでこの時間に寝ていることは何ら不思議ではなく、むしろこの時間で元気いっぱいのフランの方が吸血鬼らしくない。幻想郷の姉妹は往々にして妹に振り回されるようだ。

 

「んじゃ焼きあがるまで…どうしようかね」

 

紅魔館が元々外からやってきた建物だからか、キッチンの設備は比較的最近のものだった。IHとかそこらへんのものではないものの、人里みたいな人力が必要な設備でもない。一応焦げないかどうかは見ておく必要があるが、それは咲夜が確認しておくので俺と早苗がここにいる必要はないらしい。

 

「そんなに長い時間じゃないし、寝起きのレミリアに会うととばっちりを受けるかもだからなぁ…」

「あ、でしたらたまには私と二人きりで話しましょう!」

 

早苗が雑談を提案してきた。図書館まで行って本を読むほどの時間はないし丁度いいかもしれない。

俺は近くにあった客間に入った。紅魔館、使われていない部屋も結構多いだろうと推察。ここも掃除はしてあるようだが使われた痕跡はなかった。

 

「ふぅ…スイーツ作りなんて久しぶりすぎてちょっと疲れました」

「お疲れ様。俺が早苗に作ろうと提案したものなんだから手伝う必要はなかったんだぞ?」

「流石に自分のものは自分で作りますってー」

 

とはいえ手伝ってくれるというのであればそれを無碍にする理由はないので普通に断らなかったけど。順番通りにする必要があるとはいえ、人が多ければそれだけで時短となる部分もそれなりにある。今回は俺を含めて四人で作ったので結構早く終わった。

 

「それにしても定晴さんってなんでもできますねー」

「そうでもないぞ。そりゃ料理なら人並み以上にはできると思ってるけどさ」

 

自信があるわけではないとはいえ、料理経験というのは俺と同世代の男性の中ではそれなりに多い方だろう。料理学校に通っている生徒には勝てないものの、一般男性よりは多く場数をこなしてきているはずだ。

 

「でも資格とかもいっぱい持ってるんですよね?幻想郷の人たちは資格とか分からないみたいですけど、私なら純粋に驚けますよ」

「驚いてほしいから持ってるわけじゃないんだけどな」

 

俺がやっていた何でも屋は依頼制だ。資格は持っていれば持っているだけ仕事が増えるし、何でも屋としても何でも解決できるようになっておきたかったから取ったのだ。依頼する場所は封鎖しているにせよ一応まだウェブは残っているはずなのでネットに繋げば見れるはずだが…

 

「ネットを見れる機会があれば克己万物屋で調べてみてくれ」

「幻想郷でネット繋ぐの殆ど無理ですって…」

 

能力に頼りすぎないという自分への戒めとか、依頼に頼りすぎないという依頼者たちへの思いを込めた名前だ。自分で解決できるならそっちの方が自分のためになるからな。

 

「依頼ってどんなことでもいいんですか?」

「ああ。一応幻想郷でも依頼さえあればなんでも受けてるしな」

 

先日の大妖精のやつも何でも屋への依頼だったし、たまに慧音から先生代理の依頼も来るのでそっちもやっている。尚妖夢の剣術指南は何でも屋ではなく俺への頼みだったので特に報酬は貰っていない。その分何かあったときは俺の都合で予定を変更していいことになっているので気が楽ではある。

 

「でしたら守矢神社の布教活動も依頼としてやってもらえたりできます…?」

 

こんなところでも布教活動をしようとするのは仕事熱心だ。ただ…

 

「宣伝だけの依頼は正直あまりしたくないな。俺がどこかの陣営側に寄っているって言われたくないから」

 

外の世界でもたまに宣伝活動の依頼は来ていた。しかしそれらは出来る限り別の仕事にしてもらうことで回避してきたのだ。外の世界では特に敵は多かったし、どこかに加担してしまうと裏の世界の均衡が崩れることにも繋がるからだ。因みに俺は無宗派である。

 

「でしたら私が布教活動している間の神奈子様たちの世話というのは?」

「そっちは全然問題ない」

 

見る人が見れば勘違いを起こしそうだが、もしそうなったとしてもそのまま勘違いで突き通せばいいからな。俺が大々的に言わなければ見ている人の主観というだけで事は済む。

 

「なるほど…もしかしたらどこかで依頼するかもです」

「まあそんときは頼むよ」

 

早苗に一応の相場とかを教えていたら咲夜が呼びに来た。

 

「焼きあがりました。お嬢様と妹様はいつもの場所でお待ちです」

「了解。早苗、行こうか」

「はい!」

 

さて、ちゃんと上手く焼けているかな?

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