東方十能力   作:nite

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二百八十五話 乙女会議

…誰にもバレていない。まあ私が能力を全開で使ったらバレるはずないんだけどね。あ、でも定晴にはバレるか。無意識を精神阻害と言った定晴はすごい。浄化が原因とかなんとか。

 

「よし、ここまで来れば大丈夫」

 

博麗神社の近くに開いている穴から地上に出てきて紅魔館へ向かう。フランちゃんから手紙が来て、少し話したいと言われたのだ。

博麗神社から紅魔館への道の途中に定晴の家があって、飛んでいたらすぐに見える距離でもある。

…定晴…

…定晴のことを考えるだけでドキドキしてポーってしちゃうのは重症だな私。嫌な気分ではないけど誰かに見られるとすごい恥ずかしいので頭を振って気持ちを落ち着かせる。定晴の家に行きたいところではあるけど、流石にフランちゃんの手紙を後回しにしてしまうのはいけないと思うから先に紅魔館へ。絶対に帰るときに寄っていく。

紅魔館って距離が微妙で、妖怪の山にある穴からも博麗神社にある穴からも同じくらい離れているのだ。妖怪の山は木もあるし妖怪も多く歩いているから私はいつも博麗神社側から出ている。博麗神社は地霊殿の近くと繋がっているから好都合だしね。

 

「あ、フランちゃん」

 

紅魔館に行くとフランちゃんが既に庭に出ていた。日傘を持って花を眺めている。四月だし庭に咲いている花も種類が豊富で私も少し楽しい。地底だと太陽がないせいで育てられない品種も多いからなぁ…

 

「やっほ」

「うわぁ!急に目の前に来ないでよこいしちゃん」

 

私は敢えてフランちゃんの目の前に来てから能力を解いた。妖怪相手だとしてもやはり驚かせるというのは妖怪の本懐な気がする。地上にも人間を食うものとしてではなく驚かせるものとして考えている妖怪も一定数いるらしいし。鬼の場合は人間は喧嘩するものらしい。何が楽しいんだろう。

 

「それで、話したいことって?」

「あ、うん。ついてきて」

 

花の鑑賞はもういいのかな。でも今日はいつもと違うところに行くみたいだしもしかして私を待つためだけに庭にいたのかもしれない。やっぱり定晴の家に行かなくて正解だったね。流石にフランちゃんを苦手な日光の中で待たせるつもりはない。

 

「ここって、フランちゃんの前の部屋だよね」

 

フランちゃんに連れてこられたのは地下室。フランちゃんが前に使っていたらしい部屋だ。私もここに来るのは二回目で、一回目も紹介だけされたので中に入るのは初めてだ。

 

「ただいまー!」

「お邪魔しまーす…ってルーミアちゃん!?」

「やっと来たわね」

 

なぜかこの部屋にはルーミアちゃんが待っていた。この部屋に置いてあったのか図書館から持ってきたかは知らないけど難しそうな本を読んでいる。私はあまり本を読むわけじゃないけどフランちゃんは教養があるから難しい本が置いてあっても不思議ではない。

 

「あれ、ルーミアちゃん喋り方…」

「なんというか、フェアじゃないかなって思って」

 

フェア?ルーミアちゃんとフランちゃんが?二人の共通点は、妖怪であることと…定晴を…まさか!?

 

「えへへ、こいしちゃん。私、お兄様のこと本気で好きになっちゃった」

「そんなー!」

 

フランちゃんとは昔定晴の家のお風呂でこのことは話したことがある。あの時はフランちゃんは定晴に対して兄として以上の気持ちはないと話していたけど…一体何があったのだろうか。

 

「それで、フランがどうしたらいいのかって聞いてきたから折角だからこいしも呼ぼうかなって思って」

「うんうん!こういう話、すっごい気になる!」

 

またライバルかって気持ちもないわけじゃないけど、フランちゃんが定晴ともっと仲良くなろうとしていることはとてもいいことだとも思う。もしかしたらフランちゃんに定晴が取られるかもしれないけど…でもフランちゃんとかルーミアちゃんなら純粋に祝福できる気がする。スキマ妖怪には負けない。

フランちゃんに促されるままに私もベッドに座った。おお、専属メイドがいるおかげか地霊殿のベッドよりもフカフカだぁ。ペットの誰かにベッドメイキングだけをひたすら教え込んだら地霊殿でも同じだけフカフカなベッドで寝られるかなぁ。

 

「それと私こいしちゃんの話も聞きたい!」

「え?」

「ほら、恋バナってやつ!」

 

どうやらフランちゃん、恋バナがしたかったみたい。でも別に私は日々定晴への気持ちが募ってるだけだからあまり恋バナらしい恋バナもないけど…むしろフランちゃんとかルーミアちゃんの話を聞くだけになりそう。私も定晴と恋らしい行動をしてみたいものだけどなぁ。でも今ルーミアちゃんが色々してるって言うし我慢。

 

「こいしちゃん、なんかある?」

「ええ、何もないよ!私が一番定晴に会えてないのは知ってるでしょ?」

「そうだけど…じゃあ妄想とか」

 

妄想?

…定晴が私のことを求めてくれてそのまま口を…ふわああ!

 

「そんなのない!」

「お兄様に会えてない間に妄想したりするんじゃないのー?」

 

今日のフランちゃんはちょっと意地悪。それにいつもはお嬢様らしい口調なのに見た目相応みたいな話し方になっている。そういえばフランちゃんは定晴の前でもそんな感じで話してたなぁ…

 

「別に恥ずかしいことじゃないわよ?叶わぬ望みを思い描くのは自由だもの」

 

ルーミアちゃんがニヤニヤしながらそう言った。その顔が非常にイラっとしたのでつい反論をしてしまう。

 

「叶わなくないもん!」

「そういう妄想はしているってことね。まあ頑張りなさいよ」

 

ニヤニヤを止めずにルーミアちゃんが揶揄ってきた。嵌められてしまったことを悔しく思いつつ、同じ家に暮らしているというルーミアちゃんの恋愛的な余裕をいつか崩してやりたいと思う。絶対にいつか仕返ししてやるんだから。

 

「…そういえばフランちゃんは今の定晴の状態は聞いたの?」

「うん、ルーミアちゃんに教えてもらったよ。どうしようかなぁって思ってるとこ」

 

今の定晴は他者へ恋をしないらしい。ルーミアちゃんが色々教えてくれた時もよく分からないかったけど、大雑把に言えば大体合ってる。

なのでルーミアちゃん曰く私たちができることは定晴を本当の意味で恋に落とすことなのだとか。魂とか言うやつで恋愛感情が抑えられているらしいのだけど、私たちがアプローチで定晴を落とすことができればいいみたい。あとそれができなくても定晴にとって大切な人になれるならそれでもいいって。

 

「私、絶対にお兄様に義理の妹としてしか見られていないから今更女の子として見てもらえるかなぁ?」

「それを言うなら私も多分妹みたいな感じでしか見られていないよー」

「私は告白したから一応意識してもらえてるけどね」

 

やっぱり告白か…

告白…

好き…定晴のことが…

 

「好き…」

「こいしちゃんは何を想像したのかなー?気持ちが漏れてるよー」

「ふにゃあ!?」

 

近くにあった人形をフランちゃんに投げつけた。

告白なんていう一世一代のイベントはまだ私にはできなさそうだ。

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