東方十能力   作:nite

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段々と誰と会っていないのか分からなくなってきました。流石に四年前の内容は覚えてないです…


二百八十九話 東京観光

「らーん!準備できたー!?」

「は、はい!」

 

藍を呼び掛けながら自分は鏡の前で一回転。うん、今日の私も完璧ね。

私は今から藍と一緒に外の世界へ移動する。紫さん商店の品物もそうだけど、まあ普通に遊びに行くだけね。ただそれを言ってしまうと藍に仕事しろって怒られるから建前上は視察ってことにしてる。冬の間はずっと寝てたからまた何か変わってるかもしれないって理由でね。でも私、藍も結構楽しんでいるのを知ってるわよ。

幻想郷は寿命が長い者が多いから変化は年単位で起きる。だというのに外の世界の人間たちは生き急いでいるのかなんなのか、ブラック企業ともいえる会社に勤めて現場で身を粉にして働きそしてたった数ヶ月で街の様相を変化させる。怖いわねぇ…

 

「橙は大丈夫?」

「はい、橙にはちゃんと留守番を命じていますので」

 

橙も連れて行ってあげたいところではあるけど、私と藍の両方が外に出てしまうのは幻想郷的にまずいので橙に連絡係を命じている。何かあったときに渡している連絡用お札で私か藍に連絡するのが仕事だ。ただ彼女は異変が起きても寝てるなんてことも多いので少々不安ではあるけど…まあ他にも管理者はいるしなんとかなるだろう。定晴もいるしね。

 

「では行きましょう」

 

スキマを開く。行先は東京駅の構内の端っこ。私のスキマってミキの転移と違ってとても目立つから隠れた場所に移動しなければならない。認識阻害くらいは簡単にかけることができるけど、定晴みたいなのがいないとは限らないし用心はしておくべきだろう。

 

「…はいとうちゃーく」

 

移動時間は僅かに数秒。降り立ったのは東京駅の多目的トイレの中。誰も使っていないことを確認してから来たので誰も目撃者はいない。

私も藍も着ているのは東京で買った洋服。私が持ってる大妖怪らしい服も分類だと洋服なのかもしれないけど、あれって結構外の世界だと奇抜なデザインだから着ることができない。私は気に入っているのだけど…

私は薄ピンクのカーディガンに身を包み、藍は薄黄色のブラウス。外の世界で生活する分には何もおかしくない恰好のはずだ。

私は元々体の作りが人間と同じなので大丈夫だけど、藍は耳や尻尾を妖術で隠さないといけないから大変ね。例え裸になったとしても私は人間と変わらないので苦労が少なくて助かる。もしガチの陰陽師とかが歩いていたら襲われるだろうけど…現代日本でそういう人はまともに残っていないので多分大丈夫。それに定晴や不動クラスの能力者でもない限りは私も藍も余裕で対処できるし。

 

「さあまずはデパートへ行きましょう!」

「はい」

 

私が時間の境界を弄ったりしない限りは時間は有限なのでしないといけないことは優先していく。

まずはデパートで買わないといけないものとかをまとめ買い。デパートに並ぶ商品というのはその時の流行りとか最先端とかが多いので文化の移り変わりというのを見るのに最も適した場所なのである。

とはいえどこに行きましょうか。デパートないし大型商業施設は結構至る所にある。うーん、というか別にデパートじゃなくても新宿とか歩けば良さそうなものは見つかるのよね。ダイエットしないといけないから甘いものは抑える必要があるけど、きっと良いものもあるはず。

 

「藍、新宿に行くわよ」

「分かりました」

 

東京駅から中央線に乗って十五分くらいで新宿へ到着。片道百七十円くらいなので二人で乗っても全然余裕。ああいや、車内は余裕はなかったけど。

なんで最初から新宿にスキマを開かなかったかというと、この移動自体も調査の一環だから。いつ来ても東京は人が多いけど、その人たちの様相というのは常に変化している。

日本が江戸時代の頃の東京、江戸の町にも人は沢山いたし今みたいに行先が同じ人が列を成すこともあった。しかしその時とは目的も服装も何もかもが違う。あれから高々二百年くらいしか経過していないのに随分と様変わりしたわよね。

 

「ふぅ、やはり私は満員電車は苦手です」

「得意って言う人の方が少ないわよ。さ、行きましょ」

 

藍を連れ立って歩き出す。いつもは藍の後ろに大きくてふさふさな尻尾が見えているからやっぱり少し違和感があるわね。

 

「まずは何を見ましょうか」

「服ね!ブティックを見れば大体その時の流行りが分かるもの。今年は大人しく見える春コーデがいいらしいわよ」

 

五月なので一応まだ春の気候。私も藍も昔買った服を着ているけど、せっかくならば流行のファッションも試してみたい。定晴も洋服の方が見慣れているだろうし、現代の外の世界の服はかわいいものが多いのできっと定晴も喜んでくれるはず…

店に入って服を物色。その時に流行の服は大抵の場合店頭のマネキンに飾られているので参考にしやすい。

藍と一緒にあーでもないこーでもないと言いながら色んな服を試す。外の世界の服はかわいいけど、春、なんなら冬でもあっても素足を出すファッションはどうしても理解できない。人間は妖怪よりも体が弱いんだからちゃんと暖かい恰好をすればいいのに…私は寒いのが特に苦手だから冬のミニスカファッションなんかは絶対にしたくない。

最終的に藍は薄紅色のロングスカートに薄桃色のカーディガン、私は丈が膝下くらいまである淡い白のスカートと桜色のブラウスにすることにした。幻想郷じゃ浮く服装だけど、東京ならとても自然な服である。いつか定晴とデートするときに着ようかしら…

 

「おや、紫様、何かイベントをしているようですよ」

「そうみたいね」

 

アイドル衣装に身を包んだ女の子三人がサイン会をしているらしい。見てるだけで寒そうな衣装ねぇ…

 

「紫様、幻想郷でアイドルユニットが生まれることはないのでしょうか」

「そうねぇ、音響やらなんやらは河童に頼めばいいでしょうし、既にバンドやら楽団やらはあるわけだからいつかは歌って踊るアイドルが生まれてもおかしくはないと思うわよ」

 

幻想郷には黒船が来航していないので未だに文明レベルは低い。文明開化もなしにアイドルという文化が受け入れられるかは分からないけど…定晴以外にも外来人っていうのは人里にある程度住んでいるし案外ちゃんと仕事になるかもしれないわね。

ただ、幻想郷の女の子たちって揃いも揃ってかわいい子が多いから大変かもしれないわねぇ…

更に歩いていたら電子機器の店の前を通った。

 

「あら、新しいスマホが出てるわね」

「幻想郷でネットを使えるようにする予定はないのですよね?」

「ないわね。危ないじゃない」

 

それこそ幻想郷の写真を掲示板とかSNSに投稿されたら大変だもの。ネットじゃ常に常識と非常識がごちゃ混ぜになっているけど、それを現実世界まで持ち込まれたら幻想郷が崩壊しちゃうわ。幻想郷を覆う大結界が破綻する可能性があることは流石に私もできない。

 

「結界が壊れたら嫌じゃない。あれ張るのとても大変なのよ?」

「…あの不動と言う男は危険なのでは?」

「一緒にいるチヌが止めてくれると思うから大丈夫よ。それに幻想郷を崩壊させたいだなんて思うはずがないわ」

 

だってあの男も妖怪が好きな人間だから。好きな人の仇を討つためだけに幻想郷の中にまで追ってこれるような人だから。人間と妖怪が一緒に生活していても責められない世界っていうのは彼が望んだ世界でもあったはず。

私は人間が大好きだけど、大多数の妖怪は人間のことを食料扱いするし人間も妖怪を天敵扱いする。住み分けという形ではあるけど妖怪と人間が一緒に生活できる幻想郷はきっと楽園のはずだ。

 

「…私たちがこうして東京を歩いていても攻撃してくるような輩はとても減りました。でもそれは人々が妖怪というものを、怪異というものを信じなくなったからです。紫様は、人間と妖怪の真の共存がいつかできると思いますか?」

 

何を思ったのか藍がそんな質問をしてきた。でもそれは私たち幻想郷の管理者にとって永遠の命題でもある。

 

「できるわ。共存してみせる!だって私、人間のことが好きだし、定晴に恋してるもの。それに、定晴の家は既にそういう場所じゃないかしら?」

「…それもそうですね」

 

妖怪を式神にする陰陽師というのも少なからず昔はいた。でも流石に同居まではしていなかったはずだ。定晴はルーミアが一緒に住むことに対して何か危機感は抱かなかったのかしら。

まあ今ではあのルーミアもすっかり定晴に恋する乙女になってしまったし心配はいらなかったけど。むしろ恋のライバルが増えたことに対して私が危機感を抱くべきだったわね。今は定晴の状態もあって共同戦線を作ってはいるけど、いざとなれば絶対に私が定晴を惚れさせてみせるわ。

 

「藍は恋はしないのかしら?」

「そ、それは…」

 

私の質問にたじろぐ藍。私の式神のうちは自由恋愛もできっこないか。藍は優秀な式神だから手放すつもりもないし…藍に春が来るのは何千年も先かもしれない。私のせい?

 

「面白い店がありますよ」

「見たことない店ね。入ってみましょう」

 

定晴への贈り物を探すことも忘れないように。

人間と妖怪なんて種族の差くらいどうにかなるわ。絶対にね。

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