東方十能力   作:nite

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二百九十話 竹の姫たち

妹紅の案内で迷いの竹林を抜ける。いつ見ても周囲には背の高い竹ばかり。この竹を全部伐採してしまえば迷うこともなくなるのだろうか。

 

「大体の人は同じことを考えるんだけどさ、この竹林は伐採しても一日でほとんど元の状態に戻るから意味ないよ」

「それは竹資源が無限ということでは?」

「そうだね。でも残念ながら竹林をどうにかしたところでこの薄くかかってる霧はなんともならないから、普通の人間がここに竹取に来ても帰れないよ」

 

この竹林に輝夜が来なくてよかったな。いや、結局来ているから手遅れなのか?竹取の翁がどういう人物だったのかは全く分からないけど、輝夜が地上にいるということは竹取物語のような展開にはならなかったということだろうし…

 

「そろそろ到着だよ」

「ああ。道案内ありがとな」

 

今日は永遠亭まで足を運ぶことにした。先日ミスティアの屋台で話した通り、妹紅が姫二人の来訪を教えてくれたのだ。

妹紅たちだけが分かる目印とかがあるわけではなく、正しい道順で進めば誰でも永遠亭までたどり着けるというのだが、今のところ覚えることはできていない。なんせ周囲の形式がスタートからゴールまで一貫して変わらないからな。多分北に何歩、東に何歩、みたいな感じで覚えないといけないのだろう。

 

「それじゃ私はこれで。この後用事があるから帰りはうさぎたちの誰かに頼んで」

「了解した」

 

そうして妹紅は竹林の中へと消えていった。それを茂みに隠れているイナバたちが見ている。人型の子も動物の姿のままの子もいるけど、皆隠れるのは好きみたいだ。

 

「来たぞー」

 

永遠亭の扉を叩く。永遠亭の扉は昔ながらの木造の小さめの扉だから紅魔館のような妙な緊張がなくていいな。

何でも屋の仕事で色々なところを巡りはしたものの、国内の仕事に留めていたので紅魔館のようなバリバリの屋敷というのは幻想郷で初めて出会った建物なのだ。なので永遠亭のような馴染みのある大きさの建物の方が緊張しなくていい。まあ中は例のごとく空間拡張で見た目よりも広いのだけど。

 

「はーい」

 

奥から鈴仙の声がして…

 

「こんにちはー」

 

なぜか扉を開けたのは豊姫だった。一体鈴仙はどこへ消えたのだろうか、と思ったら豊姫の後ろにいた。

 

「走ってきた豊姫様に先を越されてしまいました…」

「別に誰が迎えようともいいじゃなーい。ほら、定晴さんあがってちょうだい」

 

永遠亭に入り豊姫の後ろをついていく。妹紅が俺が来ることを前もって連絡しておいてくれたらしい。前回、久しぶりの再会の時に依姫を非常に驚かせてしまったのでありがたい。サプライズ精神がないというわけでもないが、毎回サプライズをしてやる必要もないだろう。

 

「依姫ー、来たわよー」

「っ…!こ、こんにちはさでゃはるさん」

「おう、こんにちは」

 

依姫が盛大に俺の名前を噛んだけど気にしない。そこまで緊張するような相手でもないだろうに…

 

「こんにちは」

「よう輝夜」

 

依姫が座っていたソファには輝夜も座っていた。やはり姫同士何か通じ合うものでもあるのだろう。それに輝夜はずっと地上にいるけど、依姫と豊姫は月から降りてきているので話すことにも事欠かないはずだ。

 

「定晴さんは姫三人が揃っていても緊張しないのねー」

「姫くらいじゃ緊張はしないよ」

 

神の友人はいるし、仕事のせいで重役と会うこともあった。俺の何でも屋は依頼主の個人情報は基本的に探らず誰であっても依頼できるような仕組みなのだけど…多分俺は一度俺は海外の大統領に会っている。国内で俺に依頼して、必要なものを持ってきてくれというものだったが…その後もその国が大きく動くことはなかったのであれが何だったのかよく知らない。

その時は流石に緊張した。本人はまるでただの観光客みたいな雰囲気だったけど、SPの人が俺のことをずっと睨んでいたのでやばかった。

 

「月の姫に会えるのは限られた人なんだから感謝しなさーい」

「姫様はもう月じゃ厄介者扱いじゃないですか」

 

お茶を持ってきてくれた鈴仙が輝夜にツッコむ。不老不死、そして月からの逃亡というのはダブルで重罪らしいので歓迎されていないのは当然だろう。ただ永琳も輝夜も未だに人気はあるらしい。

 

「あー、えっと、定晴さん」

「どうした依姫」

「その…私も一度手合わせ願えませんでしょうか」

 

依姫と一対一で戦ったことはない。依姫は剣を持っており、またその身に様々な神々を降ろして力を授かって戦うらしい。依り代の姫ってことだな。

月人がどれくらい強いのかを示す指標の一つになるかもしれないし、いい運動になりそうだな。

 

「いいよ。やろうか」

「えー、雑談もなしに戦うとか戦闘狂なんじゃないの依姫ー」

「雑談なら休憩しながらにでもすればいいじゃないですか」

 

まあ折角出してもらったお茶を無駄にするつもりはないから少しは雑談をしていくけどな。前回の一回だけじゃまだまだ時間が足りていない。

 

「でしたらこの後ということで…」

「ごめんなさいね定晴さん、依姫ったら強い殿方が好きみたいで…」

 

幻想郷にもいるから大丈夫。特に妖怪は強い力を持つ人を好む傾向があるみたいだし…いや、依姫が妖怪とかそういう話ではないけど。

 

「戦うなら永遠亭から離れた場所でしてくださいよ。壊れるので」

 

え?依姫ってそんなに強いのか?

現代日本に剣を使う者など限られた人数しかないないので外の世界と幻想郷内を合わせても数えるほどにしか剣豪とはやりあったことはないのだけど…依姫の剣も相当なものということだろうか。それとも降ろす神が強すぎるということだろうか。両方の可能性もあるな。

 

「それじゃ月の桃をあげるからまずはお茶にしましょー」

 

どこからか桃を出してきた豊姫。しかもカットされていない生のそのままの桃だ。

依姫は戦いたいのかソワソワしているが、まずは豊姫の言う通りティータイムだな。

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