東方十能力   作:nite

294 / 503
依姫にはスペカがないのでサブタイトルはいつものじゃないです。まあ弾幕ごっこじゃないですし
神卸は「かみおろし」と読みます


二百九十一話 神卸の戦い

輝夜におすすめの場所があると言われてやってきたのは竹林の中。具体的にどこなのかは知らない。

どうやら日々の妹紅との喧嘩で使う場所らしい。どうしてこんなところでそんな殺伐としたことをしているのか謎ではあるものの、まあ幻想郷では常識に囚われてはいけないのであまり考えない方が良いだろう。

 

「戦うには十分な広さだな」

「永遠亭からも距離があるから巻き込む心配もない」

 

見ると妹紅と輝夜の喧嘩の跡と見られる真ん中から折れた竹や焦げた竹が周囲に落ちていた。

果たして本当にここは最初から空き地だったのだろうか。何度も輝夜の弾幕や妹紅の火炎によって地面が焼かれて竹が生えなくなっただけなのではなかろうか。二人とも不老不死だし相当数ここでやってきたに違いない。

 

「豊姫と鈴仙は竹林の中にいてくれ」

 

依姫の技の威力がどんなものなのかは知らないが、流石に観客を巻き込むような大技を使うことはないだろう。豊姫はあまり争いごとに慣れていないように見えるし、鈴仙もそこまで肉体が強いようには見えない。結界を張ってあげたいところだが、それをすると舐めプをしているようにも見えるので自重する。

因みに輝夜もいるけど彼女のことは全く心配してない。不老不死を心配するほど無駄なこともなかろう。

 

「ああそうそう。私はスペルカードルールを詳しく知らないので普通に斬り合いをしますよ。先に気絶した方が負けです」

 

依姫がスペカを持っていないことは知っていた。なので幻想郷なのに弾幕戦じゃないというのも予想できていた。ただ勝利条件が思った以上に深いダメージになりそうで戦慄している。普通有効打一撃とかそんなんじゃなかろうか。

とはいえルール変更は言い出さない。俺も、多分依姫もそれくらいのダメージには慣れているだろう。殺さなければ大丈夫とかいう無法地帯的ルールではあるが、俺と依姫が存分に戦うにはそれくらい自由な方が良いのだろう。

 

「じゃあ鈴仙、勝負開始の合図を出してくれ」

 

鈴仙は審判役として連れてきているのだ。永琳に訊いても鈴仙はしばらく暇だということでここにいても問題はない。

 

「ではいきますよー」

 

俺が輝剣を取り出して構える。依姫もまた、その刀を抜いて構えた。

 

「よーい…はじめ!」

 

始まった瞬間に俺は身体強化と風のコンボで高速移動をして依姫に近付く。神を降ろすとはいえ、その時間さえ与えなければいけるだろうと思ったからだ。しかしそれは間違いであることにすぐに気づく。

 

「っ!」

 

殺気を感じて全力で後ろに飛びのく。足に相当な負担がかかったが、こういう時は考えるよりも先に勘を信じた方が良いのだ。

その証拠に、俺が先ほどまでいた場所には深い切れ込みが入っている。言わずもがな依姫が斬ったものだ。その事実に俺は驚く。

別に地面を斬ることは驚くことではない。妖夢だってここの地面なら簡単に切れ込みを入れることができるだろうかだ。そうではなく、俺が驚いたのは、斬撃を目視することができなかったことだ。ミキの高速斬撃でも見切れるというのに。

 

「手練れ、というよりも、それが神の力ってわけか?」

「はい。あなたに見せたかったのです」

 

戦闘前とは雰囲気が違う依姫。その刀には確かに神の力を感じることができる。

依姫が剣を地面に突き立てると同時に俺は上空に飛び上がった。その直感は正しく、俺が立っていたところを含めた複数個所に刀が生えていた。中々えげつないなこれ。

いつもの模擬戦じゃ中々働かない悪寒が何度も発動するということは、少なくともあれは当たっただけで気絶する可能性があるということだ。依姫、実は俺のことを殺しに来ているのではないのだろうか。

 

「上空に逃げても、変わりませんよっ!!」

 

依姫が刀を振るうと俺の周囲に火が現れた。そこまで大きい火というわけではないが、そこに込められている熱量はそんじょそこらの火ではない。もしかしたらお空の核融合くらいの熱量が出ているかもしれないな。俺は当たらないようにしながら地面に降りる。上空にいるとこちらは魔術くらいしか攻撃手段がないので。

見れば依姫が纏っている神力の種類が変わっている。どうやら刀を生やしたときの神と、この火の神は別物らしい。ミキの場合どちらも一人身でやってくるのであっちの方が厄介だな。

とはいえ神の力を切り替えるときのラグはほとんどない。一度神の力で剣を振って、切り返しの時には既に別の神の力を宿している感じだ。これでは宿す暇もないとかそういうことはできないな。

 

「水!っていうか氷!」

 

俺は魔術を依姫に飛ばす。火の神ならば水に弱いだろうと思ったけど、魔術が着弾する前に神の力が切り替わった。そして依姫は水と氷を弾いてしまう。

これはまずいな。あっちの方が厄介、とは言ったもののミキと相対したときと同じ感覚だ。どんな技がどこから来るのか分からない感じが特に。

となるとこちらも本気でやらないと依姫も満足しないだろう。

俺は幻空から家宝の剣を取り出した。この剣を使うのは久しぶりのような気がする。

 

「定晴さんは二刀流だったのですか?」

「本筋ではないけどな」

 

とはいえミキに鍛えられ、妖夢との鍛錬でも成長してきた二刀流は決して弱くはない。ただし、輝剣は壊れないことが分かっているが。、家宝の剣の耐久値が分からないので無理はさせることはできない。

というか家で色々調べたけど家宝ということ以外何も分からなかったから銘すらも知らないんだよなこれ…やたらと頑丈だけどこの剣何なんだろうか。

 

「ふっ!」

「っ!」

 

身体強化と風による高速移動と高速連撃で依姫に攻撃を仕掛ける。先ほどのように目視することができない剣に弾かれてしまうが、なんとか勘という不安定なもので直撃を貰うことはない。ただし掠り傷は少しずつ増えており、対して依姫には傷一つつけることができていない。

なるほど、噂によると霊夢や咲夜のような強者でも依姫には敵わなかったらしいが、確かにその通りだ。日本にいる数多の神を降ろせるのであれば大体必要な権能持ちの神がいるもんな。日本には武神だけでも何種類もいるので戦闘に関しても並ぶものなしと言われるわけだ。

となれば俺ができるのはあとはこれしかないな。

 

「えっ…?なにが!?」

「そこっ!」

 

突然神の力が消えて動揺した依姫に急接近して攻撃を仕掛ける。素の剣術も相当な手練れらしく致命傷とまではいかなかったものの、やっと依姫にも攻撃することができた。

俺がやったのは勿論無効化である。今回は〈依姫が持つ神を降ろす力〉の無効化をした。風を使って無効化する前に移動を始めていれば無効化による硬直中でも依姫に近付けるので、動揺するだろうという賭けに勝った感じだな。

依姫の能力は依姫自身のものなので俺が無効化を解除してしまえばすぐに元に戻る。無効化自体の消費霊力が尋常じゃないので一瞬しか使えないが、その一瞬で攻撃することさえできればこちらにも勝機はあるってことだな。

 

「…それが昔レーザーを完全に相殺した力ですか?」

「そうだ。まあ賭けみたいな力だけどな」

 

先ほどの一瞬でも動揺することなくすぐさま神を降ろしていれば俺は返り討ちにあっていただろう。流石に初見で無反応で対処できるとは思っていなかったので俺は賭けに出たわけだが、神の一撃をもろに食らえば一回でノックアウトだったことだろう。

 

「なるほど、厄介ですね」

「それを依姫が言うか?」

 

話をそこで切り上げて身体強化と風による移動を開始。依姫も神を降ろした。

攻撃は通った…が、この方法だと先に俺の霊力が切れて負けるな。別に勝ちに拘っているというわけではないが、どうも依姫は俺のことを評価してくれているらしいのでできれば勝ちたいところだ。

うーん…固有結界である三千世界を使えば神降ろしを使えないようにできるだろうか。あの結界内は俺が許可した人しか技を使うことができず、それ以外の人は魔法やらなんやらの事象改変系の攻撃はまず不可能になる。

とはいえあの結界は対妖怪用に開発したものであり、依姫も神も清い存在なので結界の一番の要点が活かせないな。

 

「打ち止めですか」

「考えてるんだ…よっ!」

 

…いけるのだろうか。俺が今考えている作戦は。

いつもはほとんど使わず、どんなことになるのか想像することができないので先ほどよりもだいぶ分が悪い賭けになるが…

やるしかないな。俺は一気に依姫との距離を詰めた。

 

「無駄ですよ!」

 

またもや神速の一撃。俺はそれを回避しながら注視する。それと同時にある力を使う…

一応感覚はあるけど果たしてうまくできるか。失敗すれば負けだと思ったうえで、また依姫に急接近をする。

 

「また…なっ!?」

「意外に行けるんだなこれ!」

 

依姫の一撃、神の速度による目に見えない一撃、それを俺は…

全く同じ神速の一撃で受け止めた。

 

「人間が出せる速度では…」

「むしろ依姫はよくこれ使えるな!腕が痛すぎるぞ!」

 

俺がしたのはあまり出番のない模写による技のコピーである。三つまでしか登録できないものの、未だにマスタースパークしか登録していなかったので空きスロットに依姫の攻撃を登録したのである。

ただ体の負担がすごい。身体強化していなければ腕を振るった時点で腕が引き裂けていただろう。そうでなくともめちゃくちゃ腕が痛いのでそう何度もは使えないな。

輝剣と依姫の剣の鍔迫り合いになるが、流石に筋力では俺に分があったらしく押し返して家宝の剣で依姫の体を薙いだ。それと同時に全力で蹴りをいれる。

多分筋肉系の神もいるのだろうけど、その隙を与えることなく吹き飛ばしたので依姫はそのまま飛んで行って竹林の中に落ちて行った。依姫が通ったあとの竹は全部なぎ倒されている。やりすぎたか?

焦ったように鈴仙が竹林の中に走っていった。

 

「嘘…依姫様、気絶してます!」

 

身体の頑丈さではそこまでだったようだな。

俺は月でも最強格であろう依姫の撃破に成功したのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。