東方十能力   作:nite

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二百九十二話 血液検査

「ちゃんと対応できるようになれば分かりませんが、今回は完敗でした」

「いやいや、こっちからすれば辛勝だよ。流石だな依姫」

 

気絶した依姫を再生の力で回復させてから永遠亭に戻ってきた。そういえば永遠亭は病院なんだから依姫をここで寝かせた方がよかったかもしれないというのは戻ってきてから気付いたことだ。

 

「月でも依姫に勝てるのはごく僅かだから、定晴さんはすごいわねぇ」

「定晴さんが戦っているのを間近で見るのは初めてでしたが凄かったです」

 

豊姫と鈴仙も俺の戦いを褒めてくれた。依姫に勝てたのもギリギリだったんだがなぁ…

むしろ月にこの依姫に勝てる存在がまだいるのか。転移技術とかを獲得しているから技術はすごいものだと思っていたが、どうやら軍事力も凄まじいようだ。というか転移技術と月の軍事力だけで地球を征服できるのではないだろうか。穢れがあるからしないだろうけど。

 

「それにしても、どうしてあの剣技に追いつけたんですか?」

「ああ、あれはな…」

 

ということで俺の能力を説明した。そういえばちゃんと説明してなかったなと思い出して無効化のことも話しておいた。月で一度見せているので隠す必要はないなと判断したからである。

 

「無効化の力…人間の力で神の力すらも無効化できるのは聊か信じられませんが…」

「まあそうだろうけどな」

 

だが俺の力が紫のスキマやミキの何でも吹き飛ばす力すらも無効化できることは実験済みだ。ミキの上には最上位神なる神がいるらしいけど、ミキ曰くそいつの力も無効化できるだろうとのこと。いや本当なんでだよ。

ともかく、俺の力はご都合主義的に何でも消せるらしいから依姫の能力にも十分力は発揮されたわけだな。

 

「それに模写ですか。神の力を無効化する力と、神の力を模写する力って、対神に強すぎませんか?」

「今思うとそうだな。でもあれが剣技の範疇だったから模写できただけで、あれが剣の力だったら模写できなかったぞ」

 

目の前で斬鉄剣を振られても何でも斬れるようになるわけではないからな。模写というのはあくまで技をコピーするだけであり、能力をコピーするものではないのだ。

 

「無効化の力を持った相手か…定晴さん、いい練習になりました。対策も用意しておきますのでまたいつか戦ってくれますか?」

「もちろんだ」

 

上手くいけば他の神技も模写できるかもしれない。特に剣技などの体術であれば霊力の消費が極端に減るからそれを模写していきたいところだ。まあ結局再生で回復しないと体が壊れるから霊力消費は変わらないけど。

神の力を模倣できるのでスキマとか時空転移とかを模写しようと思ったことはある。ただどうにも模倣できなかったのだ。多分複雑すぎて俺が感覚的にすら理解することができなかったことが原因だと思われる。見えなくても剣が振られていると分かったから依姫のやつは模写できたわけだな。

雑談しながら戦闘を振り返っていると輝夜から質問をされた。

 

「模写ってどこまでできるの?」

「技だけだな。例えば霊夢が空を飛んでいるところを模写したところで空を飛ぶ方法は得られるかもしれないけど、それは能力にはならない」

「でしたら私のこの目はどうですか?」

 

俺の返答に反応した鈴仙の目が赤く光る。詳細は知らないけど多分精神作用系かな?浄化があるから俺には全く効かないけど。

 

『狂化のやつだ』

『なるほど』

 

どうも狂気によると狂う魔眼らしい。一応模写してみようと思ったが、残念ながら俺が魔眼持ちになることはできなかった。

 

「無理だな」

「…一応聞いておきますけど結構私の目見てましたよね?」

「俺は状態異常にならないのでね」

 

鈴仙が落ち込んでしまった。どうやら赤い瞳に自信があったようである。

そういえば前に永琳に辻的な毒薬プレゼントをされたのだが、俺に全くの影響がなかったので永琳も落ち込んでたんだよな。俺が浄化によるものだと伝えると元気になったけど、やはり状態異常系に自信がある人の心を折るには最適な手段のようだ。

閑話休題。

 

「依姫様がずっと定晴さんとしたかったことって戦闘だったんですか?」

「ああ、そうさ。まあそれ以外にも話したいことというのもあるが…」

 

どうやらずっと俺と戦いたかったらしい。最初の出会いから数年越しの願いの成就というわけだな。

霊力量は多いし、手数もそれなりにあるけど残念ながら俺自身はそこまで強くないので満足できたかどうかは分からないが…あまり気にしない方が良いだろう。もっと剣術を磨かないといけないな。

 

「…」

 

話が一段落ついてしまって無言の時間が生まれる。俺は別にこの時間を気まずいとか居づらいなどと感じることはないのだけど、せっかくなのだから何か話題を作りたい。しかし先ほどから依姫がこちらをチラチラ見てきて何かを話そうとしてはやめ、それを豊姫がニコニコしながら眺めているのでタイミングがない。

 

「…なんでそんな初めての合コンみたいな雰囲気なのあなたたち」

 

救いの手として現れたのは永琳だ。ずっと自室で研究をしていたらしいが、いい感じに終わったので見に来たらしい。

なぜ合コンを知っているのか聞いてみると、どうやら月の都にも合コンがあるらしい。

 

「定晴、暇なら血液を少し分けてほしいのだけど」

「え、なぜ?」

「だって貴方の血液って非常にいいサンプルになりそうじゃない?」

 

否定はできない。むしろ俺も同意見である。

 

「うーん…行ってきて定晴さん。依姫もちょっと考える時間が必要みたいだから」

 

先ほどから口をパクパクさせている依姫を見て、豊姫の意見に賛成する。確かにこれは少し自分で何を話すのか決めた方が良いだろう。

俺は永琳についていって血液採取をしてもらった。

 

「…月の姫二人、いや三人に囲まれた感想はどうかしら定晴?」

 

血液を採りながら質問をしてくる永琳。

 

「人によっては緊張するのかもしれないけど俺は特に何も感じないな。友人と話すときと変わらん」

「そう…古い本にもある通り姫様はとても美しいし、依姫と豊姫だって相当な美人よ。それでも何も思わないの?」

「メンタルチェックのつもりなら先に言っておくけど俺は女性に対して対応を変えるとか特別な感情を抱くことはまずないぞ?」

 

紫やルーミアたちにも悪いとは思っているけどな。

 

『私のおかげだね!』

『お前のせいと言うんだろ』

 

愛と狂気が魂でいつものように喧嘩している。ルーミアによると俺が知らないところで俺のこの状態をどうにかする方法を探している、というか既に色々試しているらしいのだけど…

 

「…聞きたいことはそれだけよ。血液は採ったから戻っていいわ。お礼として血液検査で健康状態くらいは調べておくわ」

 

幻想郷だと外の世界の病院のような高度な保健機関がないのでありがたい。

その後元の部屋に戻ったが、そこまで話が弾むこともなくその日はお開きとなったのであった。


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