新年一発目の投稿で、こちら三百話目となります。めでたいかもしれませんね
紫のスキマを抜けて水那のところへ。いつもはスキマを開くにしても少し時間がかかるのだけど、水那が博麗の巫女だからかすぐにスキマを開くことができたようだ。
そこでは水那が数体の妖怪と対峙していた。幻想郷の妖怪にしては体が大きい。一対一であれば今の水那なら十分に戦えるだろうけど、流石に複数対一だと水那の分が悪い。証拠に、水那の巫女服の一部が破損している。
「水那!援護する!」
「た、助かります!」
輝剣を召喚、浄化の力をエンチャントして妖怪のうちの一体を切り伏せる。その勢いのまま隣の妖怪を身体強化を乗せた脚力で吹き飛ばした。
その隙に水那は霊力弾を作り出して、更に博麗のお札を使って一体を調伏した。残りは二体だ。
「水那は左を」
「了解です」
右の妖怪に対して走り出す。見た目は鬼のようだけど、幻想郷の鬼に比べると体が貧相だし角も小さい。ただし大きい。多分種族では小鬼だろうけど、何かしらの要因で大きくなったのだろう。大きい小鬼とはこれ如何に。
小鬼は防御姿勢をしているが、俺は構わずに身体強化による剛腕で吹き飛ばした。倒れた小鬼の上から結界を使って押さえつける。殺してしまってもいいのだけど、あまり無暗に殺すのもいけないし、こいつらがどこから来たのか調べたい。
俺が左を見れば水那は陰陽玉をぶつけるという荒業で妖怪を倒していた。水那は繊細な戦い方をすると思っていたのだが、結構力業だな。そういえば霊夢も古武術みたいなの使えるって言ってたな。博麗の巫女は体術も修行の一環なのだろうか。
「ふう、助かりました定晴さん」
「何を考えているか分からん妖怪が教えてくれたんだ」
マミゾウというあの狸の妖怪は何者なのだろう。何かを知っている素振りはあったが、質問しても答えてくれない気配があった。
「紫さんも、ありがとうございます」
「気にしなくていいわよ。それにしても…やっぱり結界に穴が開いてるわね」
俺と水那が侵入した妖怪と戦っている間に、紫は大結界の検査をしていた。やはりここにも穴が開いていたらしい。先ほどの妖怪はその穴から侵入した外の世界の妖怪なのだろう。
外の世界の妖怪が幻想郷に入ってくることは不思議ではない。外の世界で忘れ去られた妖怪はここに招かれるからだ。しかし穴を通ってくるというのは初めてのパターンだ。もしこの穴から高度な文明が持ち込まれたら幻想郷が崩壊しかねない。
「私は大結界の穴を探しながら飛んでいたらここに辿り着いたんです。そしたらちょうどあの妖怪たちが入ってきたところで…」
水那の視線の先では紫がスキマを開いて妖怪をどこかに送っていた。外の世界に送り返したか、幻想郷内の都合のいい場所に飛ばしたのだろう。
「大結界が解れて穴が開いてしまうことはないことはないわ。でもそれに合わせてちょうどあんなに妖怪が入ってくるなんておかしい。多分…誰かの差し金ね」
「ああ、俺もそう思う」
こういう時に不動を思い出してしまうのは悪い癖だろうか。
ただ、博麗大結界という巨大な結界に穴を開けることができるような人物などそう多くない。それに妖怪を何体も連れてくるなんていうのも簡単なことではない。
「紫、俺を不動のところに送ってくれ」
「私も一応確認してるけど、彼、本当に何もしてないわよ?」
「結界を開けることができるような実力者に心当たりがあるかもしれない」
まあそんな人物がいたとて、基本的に幻想郷の存在自体知ることができないはずなので外の世界の術者というのはあまり考えられないのだけど…
とはいえ幻想郷内部の犯行だとするとそれはそれでまずい。
俺は紫が開けたスキマを通って幻想郷の端にある不動とチヌの家に向かった。
「不動、いるかー」
扉の前で声をかけると、家の中からガチャガチャ聞こえた後、扉が開いた。
「なんだい堀内。君がここに来るなんて」
「少しばかり情報が欲しい」
俺は家にあげてもらい、家の中でお茶を飲んでいたチヌにも合わせて話をする。何も関わっていないというのであれば詳細を話してしまっても問題ないだろう。
「なるほどね…先に言っておくけど、能力は使ってないよ」
「チヌが監視してるからそこは気にしてない。外の世界に幻想郷の結界を破れるような術師がまだいるのか?」
「…僕の知る限りはいない。僕だって能力で特殊閉鎖空間の開放をしながら見つけたくらいなのに、この大結界を破るのは現代の術者には無理だ。勿論、僕が知らない力を隠していた可能性はあるけどね」
過去にはかの安倍晴明のような高名な術者も存在したが、科学が発展した現代では中々優秀な術者は存在しない。妖怪の数が減っているのでそもそも術者になろうという人がいないのが現状だ。
となるとやはり内部犯か…幻想郷の妖怪が幻想郷を崩壊させようとする理由が分からないけど、異変は大抵こんな感じだった気もする。
俺が考え事をしていると、不動が立ち上がった。
「堀内、少し気になることがあるんだけど、八雲紫のところに案内してもらってもいいかな」
「それは構わないが…流石にお前でも博麗大結界の補修はできないだろ?」
「そっちじゃない…チヌ、ちょっと出かけてくるよ」
少し微笑みながら頷いたチヌ。どうやら関係は良好のようだ。
「堀内、行くよ」
「へいへい」
俺は不動を連れ立って紫のもとへと戻った。一体何が気になると言うのだろうか。