東方十能力   作:nite

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二百九十九話 魔界へ

俺は一度博麗神社へ移動した。そこで俺を出迎えてくれたのは霊夢とルーミアだった。

 

「霊夢、起きたのか」

「ええ。詳しくは聞いてないんだけど、何があったのかしら?」

 

俺は包み隠さず事情を説明した。霊夢の異常の原因と、俺の責任について。

 

「先に言っておくわね。定晴さんに責任はないわ」

「いや、しかし…」

「確かに及ぼしてる影響は大きいけど…自分でなんとかしようとしてるんでしょ?なら大丈夫よ」

 

霊夢は弁護してくれた。さっきまで自分に影響があったというのに、優しい子だ。

あと、俺とアリスが魔界に行くことになったことも言った。すると、打って変わって霊夢は暗い表情をした。

 

「ああ…うん、まあいいんじゃない」

「魔界に何かあるのか?」

「いえ。ただ、魔界の住民は全然言うことを聞かないから注意してね」

 

落ちたトーンでそう話す霊夢。過去に一体何があったというのだろうか。魔界って、そこまで魔境なのだろうか。見た目は、確かに地上とは違ったけど。

 

「一度帰るのよね」

「ああ。準備をしたら明日にでも行く予定だ。迷惑をかけたな」

「あれくらいは迷惑に入らないわ」

 

霊夢の淡泊な性格が今は嬉しい。責めるでのはなく、優しくするのではなく、ただ淡泊にいつも通りの対応をしてくれることがとてもありがたい。

俺はルーミアを連れて家に帰った。そして、ユズにも同じ話をした。その返答がこれだ。

 

「私も行きます!」

「あ、私も行くわよ」

「いやいや、ちょっと待て」

 

話し終えた途端に、ユズは自分も魔界へ行くと立候補をした。それに同調するように言葉を継いだのはルーミア。

今回は俺の問題だし、魔界に何があるのか分からないと説明しても二人は首を振らない。

 

「だってご主人様を一人にしたらまた問題が起きたときに対応できないでしょ?」

「それに、私も強くなりたいです」

 

二人は魔界に来るつもり満々らしい。

俺に止める権利はないけど、流石にちょっと気が引けてしまう。二人には関係ない話だしな…

 

「…ご主人様」

 

ルーミアが近づいてきて、耳元で囁いた。ちょっとくすぐったいのだけど。

 

「ご主人様はこういうときに一人になろうとしたがるから。絶対に私たちは行くからね。あなたを一人にはしないわ」

 

それだけ言ってルーミアは自分の部屋へと戻っていった。なんとなく耳が赤かったから恥ずかしくなったのだろう。たまにああいった妖艶な言葉を吐くくせに言ったあとに恥ずかしくなるのはどうなのだろう。

 

「えっと…私はもっと強くなりたいんです。不動さんの下にいたときは強かったんですよね?」

「ああ、強かった」

 

あの強さが本来のユズ由来のものなのか、不動によるものなのかは分からない。しかしあの強さを引き出すことができるポテンシャルは間違いなくあるはずなのだ。

幾度も死んだ並行世界で、俺たちはユズに何度も敗北している。天子という仲間を得たおかげで正史でなんとか勝つことはできたけど、俺や霊夢が単独で挑むとまず死ぬような相手だった。

 

「私も、ルーミアさんみたいに定晴さんに頼られたいんです」

「そうは言ってもな…」

「絶対に行きますからね!」

 

ユズも自分の部屋へと戻っていった。珍しくユズも引く気はないようだ。

絶対に来てはいけないというわけではないのだし、ここで俺が引き止める労力を費やすくらいなら二人も連れて行って特訓させた方が利益がありそうだな。

 

「さて…そういえば何が必要か聞いてなかったな」

 

俺は紫を呼び出して、明日の準備を進めるのであった。

 


 

俺たちはアリスの家の前に来ていた。紫の結界経由ではなく、アリスの案内で魔界に行くからだ。

最初は紫のスキマで行こうと考えていたのだが、魔界に行く方法も知っていた方がいいと言われたので、こうして自分の体で移動することにしたのだ。

 

「じゃあ出発よ」

「了解」

 

アリスが億劫そうに飛び立つ。俺たちもそれについていく。幻想郷のとある場所に、違和感のある穴があった。

 

「ここが、魔界への出入り口よ。昔神綺様が別のところを封じたんだけど、魔界人がここに穴を開けたらしいわ」

 

そう簡単に時空間に穴は開かないってミキは言っていたんだけどなぁ…もしかしたら幻想郷と魔界は時空距離がとても近いのかもしれない。

幻想郷の地下には地底世界があるので、幻想郷と魔界が物理的に近いわけではないのは確認済みである。

 

「じゃ、行くわよ」

 

アリスと共に穴に入っていく。

穴の中は、地底へと続く縦穴と似たようなものだった。この幻想郷と魔界の間を繋ぐトンネルの側面を破壊したらどうなるのだろう。紫のスキマみたいな、正真正銘の隙間に落ちてしまうのだろうか。

紫のスキマから自力で脱出することは、ミキのような時空転移ができないと不可能である。となると、ここの横にあると思われる隙間からも自力で脱出することはできないだろう。

少し怖くなりつつ進むと、とうとう開けた空間に出た。光景は違うけど、この空気はあの時に知っている。

 

「来たのだー」

「ここが魔界ですね…」

「いらっしゃい…って、私が言うのは変だけど。魔界へようこそ」

 

幻想郷とは違う空、違う地面。

あの時は正体不明の金属とか物質があったけど、ここの土壌もまた正体不明だろう。学者たちをここに連れてきたら発狂しそうだな。

 

「まずは神綺様のところへ行くわよ」

 

神綺はパンデモニウムというところにいるらしい。

日本語ではよく万魔殿と書かれるが、悪魔とかが多く住んでいる場所のことらしい。魔界にはピッタリの名前だな。

寒い雪エリアを通り抜けると、大きな建物が見えた。これがパンデモニウムか。

パンデモニウムの入口らしきところに降り立つ。そこには一人のメイドが立っていた。やはり大きな建物にはメイドは一人はいるものなんだな。

 

「あ、夢子ちゃん。久しぶりね」

「お久しぶりですアリスさん。皆さんも、ようこそいらっしゃいました。神綺様はこちらです」

 

メイドの夢子、とのことだが…この子も絶対戦闘できるタイプだな。魔力がやたらと多い。

幻想郷は問題児が多いからか、ただの使用人でも人並みには戦えないと務まらないようだ。これでいて多分メイドとしての給仕もしっかり出来るんだろうからすごい。

 

「アリスはここに住んでたのか?」

「そんなわけないじゃない。私は魔界人ではあるけど、ちゃんと人間なのよ?」

「それは失礼した」

 

魔界人とただの人間の違いは目では分からない。

ただし、見る人が見れば、その体を構成している力の差に気が付くだろう。やはり魔界人は魔力で支えられている。神綺からはあまり魔力自体は感じなかったから、あっちは神力なのかな?

 

「いらっしゃーい!」

 

大きめの扉を開くと、その奥から声がした。

神綺、魔界の主である。

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