東方十能力   作:nite

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三百二話 霊力と妖力

魔界に来た次の日。俺たち三人は朝ごはんを作っていた。

食材は地上で採れるものを多く使っているので、いつも食事とそんなに変わらない…のだが、なんか知らないけど魔界らしい調味料がいくつかあるせいで、色合いがよろしくないことになっている。

 

「青いパンって…大丈夫かしら」

「焼く前は普通だったのに、トーストしたら青くなりましたね」

「食欲はお世辞にもそそられるとは言えないが、ちゃんと食べられるだろう」

 

俺たちがいるのは小さめのダイニングキッチンだ。まさか魔界にダイニングキッチンがあるとは思わなかったけど、ちょうどいい大きさだったので助かっている。

ここには俺たち三人しかいないので、料理を見て戦々恐々している姿は誰も見ていない。アリスはどうやらまだあと数日は帰れないらしい。アリスは俺の案内人だったので、魔界に来て用事を済ませたらすぐに帰れるはずだったのだけど…アリスには悪いことをしたかな。

 

「「「いただきます」」」

 

青いパンを口に含む。夢子から勧められたよく分からない調味料を使ったら、こんな色になってしまったのだ。

…美味いな。

 

「あら、意外と美味しい」

「ちょっと甘めですかね」

 

どうやら調味料は、砂糖の類だったらしい。何から採れば青い砂糖が生まれるのかは不明である。

そんな感じで、菓子パンのような朝食を終えたら、外に出る。魔界に来た目的は、ここで訓練をするためだからな。

 

「やっぱご主人様は無効化の訓練を先にする方がいいわけでしょ?昨日みたいなやつよりも、でっかい妖力弾を作ってそれを消してもらう練習の方がいいのかしら」

 

俺の無効化の霊力消費量は、対象が大きければ大きいほど増える。この大きさというのは、体積とか質量の話ではなく…ミキ曰く概念世界における存在比らしい。

例えを出すと、家の大きさの霊力弾と、家の大きさの複雑な結界だと、当然結界の方が消費霊力は多い。また、風邪をひいたという事象と、致死性の毒を飲んだという事象だと、毒の方が消費霊力が多い。

要は、世界に働きかける大きさが、そのまま霊力消費量になるらしい。俺もよく分かってない。

 

「あ、じゃあこうしましょう。ユズ、あなたはもっと戦えるようになりたいのよね?」

「はい!定晴さんの役に立ちたいです!」

「だったらその妖力の磨かないといけないわね。だから…あなたが制御できるギリギリまで大きい妖力弾を作りなさい。制御できなくなったら、ご主人様に無効化してもらえばいいわ。ユズがそうしている間に、私とご主人様も制御訓練でもしましょうか」

 

ルーミアによって、スケジュールが決まっていく。ルーミアって子供状態だとバカっぽいんだけど、実際のところ大妖怪に恥じない明晰さがあるんだよな。

というわけで、ユズは大きな弾を作ることにしたようだ。ぐんぐんと大きくなっていくが、ある一定のラインを越えたあたりで膨張が止まった。

 

「風船をイメージするのよ」

 

ルーミアの指導が入る。

俺もユズを横目に見つつ、妖力の弾を作り上げる。俺の中には、ルーミアと、最近式神になったユズの妖力が流れているので、こうして妖力弾を作れるようになったのだ。もしかしたらどこかで使う機会があるかもしれない。

 

「ご主人様は、もうちょっと抑えなさい。制御できる範囲を越えたら爆発するわよ?」

 

妖力の扱いで言うと、この中ではルーミアが最も上手だ。流石大妖怪。封印されただけのことはある。

ユズは力を込めることに、俺は制御することに苦労する。霊力と同じように扱えると思うのだけど、霊力に比べて妖力は騒がしいのだ。中々難しい…

 

「あっ!?」

 

ユズの弾の形が崩壊した。このままでは破裂してしまうというところで…

 

「無効化!」

 

妖力弾は消え去った。しかし、無効化を使ったせいで俺の妖力弾が破裂してしまい、ついでに三秒のクールタイムのせいで俺の妖力弾に無効化を使うことができず、直撃を食らってしまった。

 

「ぐはっ」

「大丈夫?」

「定晴さん、大丈夫ですか…?」

「うん、まあ」

 

俺は再生を自分にかける。攻撃性は全く加えていないので、直撃したとて石を投げつけられた程度の衝撃しかない。とはいえ痛いのは痛いので、再生で治しておく。

 

「ご主人様はもっと妖力を扱うことに慣れた方がいいわね。このままだと、実戦で自爆するわよ?」

「それは分かってるんだが…妖力が思いのほか暴れるんだ。霊力だともうちょっと静かなんだがな…」

 

これはあまり言葉で表すことができない感覚ではあるのだけど、霊力が湖の水面という感じに対して、妖力は大荒れの海のような感じなのだ。制御の難易度の違いが分かるだろう。

 

「それはやっぱり、妖力がご主人様のものじゃないからでしょうね…ちょっと失礼」

 

ルーミアが俺の手を握って、妖力を流してきた。流れてくる妖力も、やはり荒れている。ただ単に消費して技を出すくらいなら問題ないのだけど、制御となると難しそうだ。

 

「ご主人様、よく感じて。確かにこの妖力は私のものであって、ご主人様のものじゃないわ。でもね、式神として繋がっている以上、あなたのものだと捉えることもできるの」

「俺の?」

「そう。拒んじゃ駄目よ」

 

うーむ、精神論的な話だとちょっと難しいなぁ。

俺は元より霊力しか扱ってこなかったわけだし、妖力を操るのは俺の範疇にはないような気もする。

 

「ミキは妖力も扱えていたわよ。あいつにできて、ご主人様にできないはずがないじゃない」

「いや、それはどうだろう」

 

俺神様じゃないし。ミキって元々は人間だとしても、何かと規格外だし。一晩で幻想郷の季節を冬から春に変えられるようなやつだぞ。

とはいえ、別種族でも妖力を扱えるという前例としては最適なような気もする。あいつは特定種族ってわけじゃないから、妖怪ではないことは確実だし。

 

「わ、私も手伝います!」

 

妖力弾を膨らませていたユズがこっちに合流してきた。

そしてルーミアと同じように俺の体に妖力を流し込み始める。妖力という意味では同じだけど、質がちょっと違う。それが混ざったおかげで、ある意味分かるようになってきた気がする。逆位相の波同士を重ねたときのように、波が穏やかになっているような気がする。

俺の体に流れている妖力を感じる。

 

「そうよご主人様、そのまま」

「定晴さん、その調子です」

 

なんとなく掴めてきたような気がする。依然として暴れ馬のような感じではあるけど、それにしがみつく騎手のような立場だ。

なんとか宥めて、妖力弾を形成する。先ほどよりも制御ができているおかげで、先ほどよりも大きな弾を作ることができている。これを…撃ちだす!

 

「「おお!」」

 

俺の声と、ユズの声が重なる。俺が発射した妖力弾は、ある程度飛んでいった先で破裂したのだった。

 

「流石ね。ご主人様は既に色んな力を操れるんだから、今更妖力が増えたところで変わらないわよ」

 

と言うルーミアも満足そうだ。

それじゃあもうちょっと妖力の練習をしようとしたとき、声がかかった。

 

「さーだーはーるー!!!」

「は?ぐほっ…」

 

俺が振り向く前に、背中に棒状のものが突き刺さった。身体強化を使う暇もなく、俺は吹き飛ばされて壁に激突した。

 

「定晴さん!大丈夫ですか!?」

「…魔理沙、覚悟…!」

「ルーミア?は、なんだその威圧感、うわああ!」

 

黒白魔法使いは吹き飛ばされた。

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