東方十能力   作:nite

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三百四話 魔界探索

魔界に来て数日後。

俺たちは着々と訓練の成果を出していったのだった。

 

「見てください、定晴さん!」

 

ユズは、妖力を学校の教室くらいの大きさまで膨らませることに成功した。爆発もせず、非常に安定している。

 

「これ、いいわね」

 

ルーミアは、生み出した影を固めて空気中に固定する方法を身に着けた。これを応用すれば、水上や空中でも、地面の上と同じように動くことが可能になるだろう。

そんで、俺はというと…

 

「炎と雷を纏った岩ってところか?」

 

魔術の成果が出ていた。

魔女の魂を取り込んでから魔力は上がったものの、あまり練習する機会がなかったのだ。しかし、先日魅魔から魔力の動かし方を習ったおかげで、複雑な魔術を使えるようになったのだ。

 

「それ、弾幕ごっこで使っちゃだめよ?」

「分かってるよ」

 

ルーミアに注意されるが、それくらい分かっている。これは、殺傷性がある攻撃なので、弾幕ごっこで使うことはない。

ガチ戦闘の時は存分に使うことにしよう。魔力制御が上手になったおかげで、消費魔力も無効化に比べて断然少ないからな。

 

「一応レベルアップはできてるわね。でも、ご主人様の無効化の訓練はできてないんじゃない?」

「一応ちょこちょこ使ってるんだけどなぁ」

 

訓練中の、いつもは無視をするような事象も無効化して練習している。そもそも、日常で無効化の力を使うことなどほとんどないので、魔界に来てからの無効化の使用率は今までに比べても断然高い。

それでも、これが訓練になっているのかと問われると、答えに窮するところである。少なくとも、魔術のように強くなっているという感覚はない。

 

「ルーミアから見てどうだ?何か変わったように思えるか?」

「うーん…よく分からないわね。ご主人様のことはいつも観察してるけど、違いはないと思うわ」

「だよなぁ…」

 

無効化というのは、成長の度合いが分からない。不動が言っていた幻想郷にあるという残滓とやらも、目に見えないのだから、俺が使っても目には見えない。

そもそも、どんな事象でもノータイムで消し飛ばせる能力なのだ。見て分かるようなものではないことは、俺もルーミアも認知していることである。

 

「まあ、ゆっくりやっていくしかないわね。なんとなくでいいかもよ?」

 

地上で言うと、現在は五月の下旬。もう数日経っているから六月かもしれない。

魔界では雨が降るのか分からないが、地上にいても雨のせいで動きづらい時期なのでちょうどいいだろう。それに、魔界の天気くらいは神綺が好きにいじれると思う。

 

「今日は趣向でも変えるか」

「どうするの?」

「魔界探索」

 

実のところ、俺がずっとしたかったことだ。

幻想郷ですらすべての場所を回ったわけではないけど、まあそれは俺がまったりしていたからだ。魔界はあまり頻繁に来れる場所ではなさそうだし、今のうちに探索しておきたい。

 

「ご主人様って旅とか好きよね」

「ああ。何でも屋として色んなところを巡ったからか、旅の良いところを知ってる」

 

知らない土地で、知らない景色や知らない料理を食べるのは非常に楽しい。時期が合えば、ネットでも見つからないようなイベントに参加できることもある。

そういった、旅の良さというのは幻想郷でも活きる。幻想郷は、特殊な地形が多いから観光気分になるのだ。

 

「じゃあ行きましょうか。準備は…いらないわね」

「夜までに帰ってくればいいだろう」

 

非常食とかは幻空の中に入ってるしな。

 

「一応夢子に話しておくから、二人とも必要なものがあれば準備しておけ」

 

俺は夢子を探して、魔界探索に行くことを伝える。面白いところはそんなにないと言われたけど、現地の人には分からない面白さがあるかもしれないので、普通に出発する。

 

「二人とも、いいな?」

「ええ。私の予備のリボンは持ってるでしょ?」

「ああ。入ってるよ」

 

予備のリボンは、俺が作った式神制御タイプのリボンと霊夢が作った封印制御タイプのリボンのことだ。大抵のことでは解れたりしないけど、もしものときのためにリボンは幻空の中に入れている。

リボンがなくても生活には困らないらしいけど、ルーミアはリボンが気に入っているし、子供姿の方が楽なことも多いということでこうなっている。

 

「では出発」

「「おー」」

 

練習も兼ねて、俺は風ではなく霊力で飛ぶ。とはいえ、落ちたら嫌なので風の補助をつけてはいるけど。

 

「結構変わり映えがないわね」

「凹凸はあるけど、大きな山とかは少ない印象だな。ちょくちょく建物みたいなのはあるけど」

 

過去のアリスのような、魔界で生活している人々がいるのだろう。

魔界の人々も地上と同じような生活なのだろうか。畑とかそういうものを見かけないけど、どういう生活基盤なのだろうか。

 

「あ、見て。誰か飛んでる」

「ん?」

 

確かに前方に誰か飛んでいる。第一村人ということで、せっかくだし話しかけてみるか。

 

「おーい!」

 

白い服に白い帽子、黄色い髪の女性。

 

「あら、誰かしら。こんな魔界にこんにちは」

「俺は定晴だ。こっちの二人は式神」

「ルーミアよ」

「…ユズ、です」

 

ルーミアは初対面の人物に対して普通の口調で話しかけることにしたらしい。

 

「私はルイズ。地上の人?」

「ああそうだ。一応観光中」

「そうなの。魔界はいいところだからゆっくりしていくといいわ☆」

 

どうやら普通の魔界住人らしい。

 

「それで、何かいいところはないかなって」

「…うーん、あまりないわね」

「ないんかい」

 

いいところだと言うから、何か観光名所でも言ってくれるのかと思ったけど、何もないみたいだ。夢子が言っていた、特に面白いところもないということも事実なのかもしれない。

 

「そうだ、せっかくだし私と戦う?」

「はい?」

 

このお人は何を言っているのだろうか。

 

「見る限り、貴方も結構やるみたいだし…お手合わせ願いたいわね」

「…まあ、いいけど」

 

どうやら好戦的な魔界人に出会ってしまったようだ。

 

「あらぁ、じゃあ早速やりましょ」

 

そう言った瞬間、ルイズから殺気が放たれた。

ああ、そうか。魔界だから弾幕ごっこじゃないのか…

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