東方十能力   作:nite

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三百八話 取り逃がし

定晴が魔界に行ってから、一週間が経過した。

幻想郷の結界が歪んでしまったのは定晴が原因だということが判明している。実際、定晴が魔界に行ってからは結界の修復が進んだから。

しかし、それとは別にこの結界の歪みを利用して幻想郷に妖怪を送り込んだやつがいる。その犯人を不動成に頼んで捜索させた。同時にチヌには更に別件で動いてもらった。

 

「そろそろ不動から連絡があってもいいとは思いますが…」

「あいつは式神が使えるから、何かあったら連絡はできるはず。定晴と同等にやりあった不動なら、そう簡単にやられるはずもないでしょ」

 

そんなことを言ってたら、式神連絡が来た。紙で作った簡易的な式神だが、汎用性はとても高く、藍はよく使っている。

それによると…犯人は見つけたけど、逃げられたとのこと。

 

「不動が逃がすなんて、中々ですね」

「ええ。幻想郷を侵略しようとするような輩だもの。そう簡単には行かないのは分かっていたことだわ」

 

そもそも、定晴と不動が争っていた時も、不動は前に出るよりも暗躍することでその真価を発揮していた。

犯人の追跡などの任務にはあまり向かない人選だったのだ。とはいえ、藍をそちらに向かわせるほどではないし、私の補助なしでも幻想郷の外に出られる人材なんてそんなに多くなかったので、仕方ない。

 

「犯人の名前は?」

「えっと…吉弔八千慧。前にあった、地獄のほうから動物霊がやってきた異変の黒幕の一人ね。あの時は、驪駒早鬼を確保することで異変解決としたはずなんだけど…まだ終わっていなかったようね。あの時も目的は幻想郷侵略だったみたいだし、それに宴会のときにも八千慧はいなかったみたいだし」

 

とはいえ、面倒なことになった。

どうしてこうも、幻想郷を侵略しようとする輩が生まれるのだろうか。幻想郷は確かに貴重で重要な土地ではあるけど、侵略したところで有効活用できるような場所でもないのだ。

それに、私や隠岐奈がいるうえ、定晴や幽香や幽々子みたいな強者もぞろぞろいる。そういう意味では、その強者を仲間にした不動は侵略一歩手前だったわけだ。不動の目的は侵略じゃなかったからよかったけど。

 

「藍、式神を飛ばして吉弔八千慧を探すようにしてくれるかしら」

「了解です。不動はどうしますか?」

「取り敢えず一度帰還してもらうわ。式神だけじゃ伝えられる情報に限界があるし…直接詳しく聞くわ」

 


 

剣の修行は、妖夢が岩を斬れたところで終わりになった。

再生を使って、痛みは回復したのだけど、どうしても腕に違和感があったので俺が教えられなくなったからだ。

 

「折角だから妖夢さんもパンデモニウムの中にいらっしゃい」

「あ、えっと、失礼します」

 

時間もいい感じなので、妖夢たちと一緒にご飯を食べることになった。

 

「料理は俺がする。妖夢は休んでてくれ」

「ええっ。私がやりますから、定晴さんこそ休んでてください」

 

このメンツで料理ができるのは俺と妖夢。ついでに夢子。

夢子は神綺の料理以外はこちらに任せるようにしているので、幽々子たちの料理を作るのは俺か妖夢になるわけだけど…

 

「…二人でするか」

「…そうですね」

 

こうして二人で料理することになった。

料理人…というのは違うのだけど、料理ができる環境で他の人に全部任せるのは落ち着かないんだよな。

紅魔館のように咲夜がやる気だったりすると、そちらに任せるのだけど、ここのような俺がすることも選択肢にある環境だと、人任せにできないのだ。

 

「幽々子もいるし、肉料理で行くか」

「そうですね。じゃあ私はお米とサラダを作ります」

 


 

「幽々子のは大きいけど、取り敢えず、サイコロステーキを作ったぞ」

「サラダも食べてくださいねー」

 

神綺が、こんなに人がいるのに仲間はずれは寂しいと言ったらしく、途中から夢子も含めた三人で料理をした。

パンデモニウムでは、俺とルーミアとユズの三人で食べていたので、妖夢と幽々子と神綺と夢子がいる今の状況は久しぶりである。

 

「「「いただきます」」」

 

昼から肉か、とも思うのだけど、妖怪の性質からかルーミアたちは肉が好きなので、自ずと肉料理が増える。

結果として、俺も昼から肉を食べることに抵抗はあまりないのだ。

 

「神綺って食事が必要な種族なのか?」

「それは幽々子にこそ言うべきじゃな〜い?私は生きているけど、そっちは生きているのか…」

「酷いわね〜。私は生き霊だから、ちゃんと生きてるわよ」

「幽々子様、未だに死んでしまったことにお気付きでなく…およよ…」

「ちょっと妖夢!冗談にならないわよ!」

 

和やかに食事が進む。

うーむ、魔界という辺境ではあるものの、平和だ。

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