魔界に来て、それなりの時間が過ぎた。
途中経過ということで、今日は紫に魔界まで来てもらっている。
「久しぶりね、定晴」
「ああ。地上はどうだ?」
「特に変わりないわよ。そろそろ六月だから、少し天気が悪い日が増えてきたかしら」
地上はもう少しで梅雨入りしそうだな。魔界にも梅雨というものがあるのかは不明だが、あとで神綺に聞いておいたほうがいいかもしれないな。
「幻想郷の結界はどうなった?」
「ちゃんと修復できたわ。霊夢も回復したから、あとは定晴が無効化を暴走させなければ大丈夫よ」
「肝に銘じておくよ」
俺が無効化の力を完全に操れるようにならなければ、俺は魔界から出ることはできない。
外の世界に行くとしても、無効化の力が及ぼす影響は計り知れないので、やはりこの力を完璧に操れるようになる必要がある。
「それと…いえ、なんでもないわ」
「ん?あー、まだ何か無効化の影響があったか?」
「それとは別件よ。気にしないでちょうだい」
そう言われると気になるが…気にするなと言われたら、引き下がるしかない。問題が起こったとしても、俺は魔界から出ることができないので、対応することはできない。
地上でまた何か問題が起きているのだとすれば心配ではあるけども…紫は起きているわけだし、大丈夫だろう。
「それで…定晴はまあいいとして、ルーミアとユズちゃんはどうかしら?」
俺から視線を外して、式神の二人に質問する紫。
俺が色々とやっている間に、二人も特訓はしていたのだ。わかりやすい成果というと難しいかもしれないが、妖力量が増えていることがわかるだろう。
「ふーん、いいじゃない。ルーミアはこれ以上強くなると、幻想郷のパワーバランスが崩れそうだけど…」
「そんなになのか?」
「ええ。妖力量が少なくても、その能力のおかげで幽香たちに匹敵するもの」
そうなのか…確かに闇を操るという能力は、世界中どこにいても使えるうえに攻撃にも防御にも使える万能な能力だ。
封印されているときは闇のボールになるくらいしかできなかった能力だが、実際には固めたり刺したりできるのだ。幽香に匹敵すると言われても納得してしまう。
「それに今は霊力の修行もしてるんでしょ?」
「当たり前じゃない。定晴の役に立つなら何だってしてやるわ」
「まあ、定晴がいるおかげでルーミアが暴走することはなさそうだからいいけどね。大妖怪が暴走すると大変なのよ…」
そりゃそうだろう。他とは一線を画すのだから大妖怪と言われているのだ。暴走したら他者に与える影響など多大なものになることは分かり切っている。
一番暴走したときに面倒なのは目の前にいる紫だけどな。俺の無効化でもないと、暴走を止めることは難しい。
「ま、ちゃんと定晴が管理してくれるなら何も問題ないから気にしないでいいわ」
「俺に何か起きない限りは大丈夫だ」
「変なこと言わないでちょうだい」
紫は経過報告だけして、スキマで帰っていった。
俺たちも地上に帰るときはスキマを通ることになっている。地上と魔界をつなぐあの謎トンネルは、移動に少しばかり時間がかかるからな。スキマで一瞬で移動できるのならば、わざわざ時間をかける理由はない。
「さて、俺たちは特訓の再開だ」
「おかえりなさいませ。紫様」
「ええ藍。定晴たちは順調そうよ」
「それはよかったです」
吉弔八千慧の捜索は今も続いている。
不動に加えて、隙間時間で藍の式神にも捜索させているけど、逃亡したあとの足取りは掴めていない。どういうわけか幻想郷の外側にいたようだけど…不動ならともかく、吉弔八千慧はどうやって外に出たのかしら。
あの子の能力は、調べた限りだと【逆らう気力を失わせる程度の能力】というもので、強い能力ではあるけども幻想郷の外に出られるようなものではない。
となると、あの子以外にも協力者がいると考えられるけど…そっちは手掛かりすら掴めていない。
「ねえ藍」
「はい?」
「私、結界に自信がなくなってきたんだけど…」
定晴は無効化で抜けられるし、不動は開放する能力で結界を越えられる。吉弔八千慧も外に出ているし、外の世界の董子ちゃんは夢を通じて越えてくる。
私は結界演算能力だと他者にも及ばない自信があったんだけど…なんだか自信がなくなっちゃったなぁ~
「紫様、お気を確かに!大丈夫ですから!あやつらは例外というものです!」
「と言っても、そんな例外がいっぱいいたら困るじゃなーい」
定晴なら別にいいけど、幻想郷にそんな簡単に好き放題入られたら、管理人として疲れてしまうのは間違いないわけで…
「あ、ほら、隠岐奈様から連絡ですよ」
「はいはーい」
飛んできた連絡用式神の内容を見る。
どうやら隠岐奈の方で、吉弔八千慧を捕捉したらしい。どうやら現在は幻想郷の中に戻ってきているらしく、本拠地である畜生界にいるらしい。
場所がわかっているのなら、霊夢を派遣しよう。不動でもいいけど、やはり幻想郷のルールとして博麗の巫女が事件解決はしないといけない。そもそも、不動を動かしたのも霊夢が回復していなかったからだ。
「藍。霊夢に畜生界まで行くように伝えてちょうだい」
「分かりました」
これで事件が解決するといいのだけど…