東方十能力   作:nite

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三百十話 式神のボヤキ

ご主人様の能力は、少しずつ改善していっている。でも、このペースじゃ一年以上この魔界にいることになってしまう。

神綺はいつまでもいていいと言っているけども、私はそんなにいるつもりはない。ご主人様も、ユズもそんな長期滞在をするつもりはないだろう。

なんとなく、ご主人様は焦っているようにも見える。先日来た紫のことを見てから、焦りが強くなったようにも思う。

 

「定晴さん、大丈夫でしょうか」

「まあ、まだ切羽詰まっているわけじゃないから大丈夫よ」

 

ユズが心配そうにご主人様を見ている。

実のところ、私は地上での動向を知っている。ご主人様のことが好きな人同士で作られた特殊な連絡網によって、私に情報が回ってきたのだ。ご主人様に知られずに連絡するにはとても役に立つ。

それによると、幻想郷に何体も妖怪を送ってきた犯人を見つけたらしい。そして、霊夢はその犯人を倒すために畜生界へ…畜生界に行ったのはつい数か月前だというのに、霊夢も病み上がりで大変ね。

 

「ユズは、もっと妖怪らしくなれるように頑張りなさい。ご主人様のことを気にかけるのはいいけど、自分のことにも集中しなさい」

「は、はいぃ…」

 

ご主人様に比べると、ユズはちゃんと成長している。繊細な操作も、豪快な操作もできるようになっており、普通の弾幕ごっこなら私とも互角に戦えるようになった。

幻想郷はスペルカードルールがあるのに、殺し合いにも強くならないとご主人様の役に立てないのが皮肉なことだけど…ユズにはもっと強くなってもらわないといけない。

ご主人様の話によると、ユズは不動のところにいたときは私達を殺せるほどに強かったらしい。

喋り方も今とは違いはっきりとしていたし、堂々としていたらしい。今のユズはまだまだ生まれたてって感じだから、天と地ほどの差がある。

 

「ん〜〜」

 

ユズは頑張って霊力が練れるよう練習している。そこに、私は妖力を一欠片混ぜてやる。

 

「あっ!」

 

どーん。

弾を維持することができなくなり、爆発した。魔界に来た当初から、爆発などをすぐに無効化できるように練習してきたご主人様によって、爆発の影響はゼロになる。

 

「ちょっと、ルーミアさん、何するんですか!」

「だめよ、あれくらいは制御できるようにならないと」

 

私の体には、今もご主人様の霊力が流れている。意識すれば、ご主人様の繋がりだってはっきりわかる。

最近は、その霊力を感じながら寝るのがルーティンだ。霊力の練習にもなるし、ご主人様のことを感じられてとても安心して眠れるのだ。

睡眠があまり必要のない種族だというのに、安心して眠るなんて変な話よ。

 

「ほんと、やられちゃってるわね」

 

意識しすぎると、妖怪としての本能が出てしまって、ご主人様のことを食べたくなってしまう。

肉体的にも、性的にも。頭の中がご主人様のことでいっぱいになって、妙に興奮してしまうのだ。

どうも、ユズも最近ご主人様との繋がりを意識できるようになったらしく、たまにユズも妖怪的な一面を見せるようになってきた。

あの感じ、もう少ししたらユズも私達のようになるかもしれない。

 

「はぁ、はぁ…だめだ。無効化が強くなってる感じがしない…」

 

ご主人様は苦労している。

ユズは、まだこの修行を楽しむことができる余裕があるが、ご主人様にはそれがない。幻想郷に被害を及ぼしたという事実が、私達が思っている以上にご主人様にダメージを与えたのだろう。

ご主人様は幻想郷が好きだからね。

 

「ルーミア、俺に闇を飛ばしてくれ」

「いいわよ」

 

槍のようにした闇を、ご主人様に飛ばす。

ご主人様に近付くと、闇の槍は霧散して消えてしまうが、段々と消せなくなっていき、ほどなく槍はご主人様に当たるようになった。

当たったといっても、ぬいぐるみを投げつけられたような衝撃しかないけどね。私がご主人様を本気で攻撃できるはずがない。

 

「ルーミア、強くなってると思うか?」

「元々強い能力だから、よく分からないわ」

 

とはいえ、ご主人様のこの能力には欠点が多すぎるのも事実。

霊力消費の多さ、ターゲットの少なさ、連続使用までのスパン…必殺技であることは間違いないのだけど、本当に切り札的必殺技なのだ。

これを実戦の中で多用できるようになれば、それこそ幻想郷最強を名乗ってもいいくらいなんだけど…

 

「やっぱりなにか違う気がする。そもそも、俺ってあまり反復練習しても伸びないんだよな…」

「でも全く伸びないわけじゃないでしょ?」

「まあそうなんだが…」

 

ご主人様の【十の力を操る程度の能力】もとい、【打ち勝つ程度の能力】は、必要なときに必要な能力を生み出すという性質がある。

そのため、平和な状態だとどうしても伸びなくなってしまうのである。器の問題があるから、意味がないわけじゃないんだけど…

ミキが言っていたことも、未だにわかっていない。嘘をついていることだの勘違いしていることだの、あいつがご主人様の何を知っているというのだろうか。

でも、それがご主人様の成長を妨げているのであれば、原因究明も必要になってくるだろう。

何はともあれそろそろ刺激がないと、ご主人様は強くなれない。でも、今のままなら魔界から出るのは当分先ね…

 

 

 

 

そう思っていたけれど。

私達が魔界から出たのは、僅か三日後のことだった。

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