俺たちは途中で広い空間にたどり着いた。ここは杖刀偶磨弓と霊夢が戦った場所だ。ここで俺は霊夢と離れて、埴安神袿姫と出会うことになる。つまり、最奥はすぐそこだ。
「霊夢はどこにいるのかしらね」
「流石にテレポート系の能力ではないだろうから、いるとしたら畜生界のどこかだろうけど…」
今のところ気配は感じない。霊夢の霊力は特徴的なので、近くにいればわかりそうなものだが、今のところ誰も感知していなかった。
「ここに来るなら袿姫でも連れてくればよかったんじゃない?」
「どこにいるのか俺が知っていたらな」
動物霊の異変が終わったあとの宴会で、ある程度動けるようになったと袿姫は言っていたので、もしかしたら地上のどこかにいるのかもしれないが…それを俺は知らないのでどうしようもない。もしかしたら紫に聞けば…いや、忙しいから無理か。
「まあいい。この奥が最奥だ」
少し進めば、広い空間に出る。あの時地震があったせいで、ここは特に崩れている箇所が多い。
「誰もいないな」
「妖力も感じないわね」
動物霊すらいない。ここに来る途中では何度も迎撃したというのに、ここには一匹たりともいやしなかった。
「ここじゃないのかしら」
「うーむ、隠れるならここにいると思うんだが…」
霊夢は畜生界に向かったと報告されている。なので、相当な移動でもなければ畜生界の中にいるはずである。だが、姿が見えない。
もしかして、俺たちが知らないさらなる奥がまだあると言うのだろうか。
「戻ってみる?」
「うーん、前にここに来た時はあまり探索できてないし、もしかしたらまだ奥があるのかもしれない」
俺たちは三人で手分けして、この広い空間を探索することにした。見た限りだと、ここから奥に行けそうな通路はないけれど、隠し扉とかがあるのかもしれない。
「ともかく瓦礫が邪魔ね。ご主人様、これ全部どかしていいかしら」
「ああ、むしろ頼む」
ルーミアが妖力を広げて、闇が瓦礫を包んでいく。
しばらくして闇が晴れたあとには、瓦礫はきれいさっぱりなくなっていた。
「すごいな。どうやったんだ?」
「消えただけよ。家で読んだ本にブラックホールってのがあったから、できるかもなって練習してたのよ」
ブラックホールとは、宇宙にあるなんでも吸い込む星の果てだ。超重力の影響で、光すらも逃れることはできず、消し去ってしまうらしい。正確には滅茶苦茶に圧縮しているらしいが…肉眼で見えないのであれば、それは消えたのと同義だろう。
ルーミアの闇は、とうとう物質の消失もできるようになったらしい。
「ただ疲れたから、ご主人様霊力ちょうだーい」
「霊力でいいのか?」
「変換できるようになったからいいわ」
俺が霊力を渡そうとしたら、ルーミアに制止された。
どうしたのかと思ったら、ルーミアが背中に抱き着いてきた。近くにいればそれだけ力のやり取りがしやすいが…近すぎないか?
「…ルーミアさん、近すぎません?」
「あら、ユズも来る?ご主人様の背中温かいわよ」
ルーミアにそういわれて、逡巡したあとにユズも背中に抱き着いてきた。探索はどうした。
「瓦礫が消えて見やすくなったんだから大丈夫よ」
「ここから見てます」
背中から声が聞こえる。
まあ二人ともこういう場面で緊張しないのはいいことだ。周囲の警戒はちゃんとやっているみたいなので、今回は甘く見よう。
「うーん、この先はなさそうね」
「ということは、やっぱりここじゃないのか」
「もっと奥まで続いている道があるのかもしれません」
三人で周囲を見てみたが、この空洞は完全に行き止まりであり、ここから先に進める場所はない。
致し方なく戻ろうとしたところ、既視感のある現象が起きた。
「地震!?」
「またかっ」
俺たちは急いで元の道を戻る。霊夢を探すのはそうだが、それで俺たちも畜生界から帰れなくなってしまっては意味がない。
「定晴さん、何ですかこれ!」
「俺もわかってないが、このままだと畜生界に閉じ込められる!」
あの時は紫経由で不動が来てくれたので、なんとか畜生界から出ることができたが、今は紫が忙しいので不動が来てくれるかどうかは怪しい。そもそも、あいつを頼るのは個人的に嫌だ。
「あっ…」
しかし、戻った先にあったのは見たことがある結界。またしても、この畜生界に閉じ込められてしまったわけだ。
「ねえご主人様、もう無効化で消し飛ばさない?」
「いや、まずいだろ」
この結界は畜生界全体を覆っていると考えられている。そのため、この結界を無理やり無効化で消した場合畜生界が崩壊する可能性があるのだ。出入口が目の前にある俺たちは大丈夫だが、そうではない霊夢は崩壊に巻き込まれる可能性がある。
「こう言ったらあれだけど、最悪の場合は霊夢は大丈夫よ。能力でなんとかするわ」
「そうは言ってもなぁ…」
というかなんとかなるのか?俺あまり霊夢の持つ能力について詳しくないのだけど。
「仕方ない。戻って霊夢を探そう。どのみち捜索はしないといけない」
俺たちはどうしようもなくなって、半強制的に霊夢探索を再開するのだった。