東方十能力   作:nite

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三百十五話 頭は使わない

「取り敢えず前回行かなかったところに行こう」

「そうね。もっと奥まであるかもしれないものね」

 

俺たちは畜生界を、あてもなく飛んでいた。

時々動物霊が飛んできているものの、それ以外に目立ったことはない。景色も変わらないし、動物霊以外の何かが出てくるということもない。

 

「定晴さん、前回の畜生界はどうだったんですか?」

「前回もそんな変わらなかったな。途中でこんな風に閉じ込められるところも含めて、あの時と変わらない」

 

あの時は不動が助けてくれたが…畜生界に来るたびにこれをやらされていては世話ないので今回は甘えない。

あの時も霊夢は途中から合流したのだし、傍にいるのがルーミアとユズであること以外は本当にあの時のままだ。

 

「そういえば、あの時の霊夢って気絶してたのよね?」

「そうだな。それに、霊力も減っていた」

 

とはいえ霊力自体に問題はなく、霊夢もすぐに動けるようになっていた。そのため、特に気にしてはいなかったが…

 

「もしかして、霊夢の霊力もあの結界維持に使われてるとかは…」

「どうだろうな。ありえない話ではないけど…それはつまり、ルーミアのように霊力を操れる妖怪がいるということになるが」

 

俺の中で、別の力を使うのはなかなかの難易度であると思う。そういう意味では、ルーミアはとても異質な存在だと考えているのだが、そのような妖怪がほかにいるというのはあまり考えられない。

 

「でも私はそこまで苦労してないわよ?」

「そうなのか?」

「ああ、そういえばルーミアさんは前にご主人様の力g」

「はい、ユズは黙ろ。取り敢えず、私は苦労してないわよ」

 

ルーミアの闇で器用に口を塞がれたユズがムームー言ってる。ルーミアの闇ってそんな使い方もできるのか…

 

「あ、ほら。あそこ、光ってるわよ」

「ふむ。行ってみるか」

 

ルーミアに話を逸らされつつ、発見した光へ進む。

 

「ぷはっ、酷いですよルーミアさん」

「ユズが変なことを言うからじゃない」

「事実じゃないですかぁ…」

 


 

光は明滅しており、誰かが単純に光っているわけではないことを物語っていた。

 

「あれは…」

 

そこには動物霊の塊があった。一軒家ほどの大きさであり、先ほど俺たちを襲った大きい動物霊も混じっている。

光源はその動物霊の塊の中心らしい。明滅しているのは、光が動物霊の隙間から漏れたものだからだ。隙間から出た光だというのに、遠くからでもわかるほど光っている。近くで光源を見たら目がつぶれてしまうかもしれない。

 

「確実にあそこに何かわるわね」

「取り敢えずあの動物霊を消すか」

 

俺たちは動物霊の塊に近づいた。すると、何匹かはこちらに気が付いて攻撃してくるが、大部分は光源に向かおうと塊になったままだ。

一体中心には何があるというのだろうか。

 

「闇で包んで引きはがす?」

「光源が何かわからないからな…外から飛ばしていくしかないんじゃないか?」

「でしたら任せてください!物量は得意です!」

 

そう言ったユズが前に出る。そして展開されたのは超密度の弾幕。俺やルーミアでも使わないようなほぼほぼ回避不可能な弾幕である。

 

「せいっ!」

 

しかも弾の威力は高いらしく、一気に塊が削られていく。

 

「魔界での鍛錬で妖力が増えたから、精密な操作は苦手だけど、物量は得意らしいのよ」

「ふーむ、俺が知らない間に二人ともできることが増えてるなぁ…」

 

魔界での鍛錬はずっと一緒にいたわけではない。そもそも、暴発などの危険性があるのでそこまで近距離で鍛錬ができないのが現実だ。

そのため、自主練として離れたところで鍛錬することも多かったのだ。そういったところで、二人は俺が知らない技を身に着けたというわけだ。俺は目立った成長がない分、とても悔しく感じてしまう。

 

「そろそろ光源かしらね」

「ああ。一体なんだろうな」

「…正直、私はあの光を見たことあるのよね」

「え?」

 

ユズが動物霊を削り切ると同時に、光源がこちらに飛んできた。とてつもなく眩しい。

そして、光源が一気に光を放出すると周囲にいた動物霊は全部消えてしまった。この範囲の霊を一度にまとめて除霊したみたいだ。

光が収まると、光源があったところにいたのは、畜生界で行方不明となっていた霊夢だった。

 

「ふう、助かったわ。霊の癖して面倒なのよあいつら」

「霊夢?」

「あら、定晴さんじゃない。それに式神の二人もいるのね」

 

あれだけの動物霊に囲まれていたというのに、霊夢の服には一切の乱れがない。強いて言えば、少しだけリボンが解れているようにも見える。

 

「俺たちはお前を探しに来たんだが…」

「そうだったの?というか、今何日の何時?」

「正確な日時は俺たちも知らないが…霊夢が行方不明と騒がれるくらいは経ってるぞ」

 

霊夢は無事だったが、まるでタイムトラベルをしたかのような質問をされてしまう。

こんなところで数日も生活する方法があるとは思えないし、もしかして本当にタイムスリップでもしたのだろうか。

 

「あー、やっぱりそんなに経ってたのね。うーん、時間間隔がおかしくなるのは困りものよねぇ…」

「数日間、何をしてたんだ?」

「そういえば定晴さんには見せたことがなかったわね。あれは夢想天生って言って、反則みたいなものよ」

 

そこにルーミアの補足を加えると、こうだ。

霊夢の能力である【主に空を飛ぶ程度の能力】というのは、その名の通り空中浮遊もできるが、拡大解釈としてあらゆるものから飛ぶこともできるのだという。夢想天生という技は、それを最大限に生かした技であり、使っている間は霊夢に一切の攻撃を加えることができないらしい。ただすべての物質をすり抜けられるというわけでもないらしく、動物霊に物量で捕まっていたらしい。

数日間過ごせた理由は、博麗の巫女としての成果らしいが…水那も将来何もなしで数日間も過ごせるようになるということなのだろうか。

 

「それで、今はどういう状況かしら?」

 

俺は橙から聞いた現在の幻想郷の様子を伝える。そして、現在の畜生界の状況も。

 

「なるほど、嘗め腐っているわね。実は私も罠に嵌められたわけで、畜生界から出れなかったのよね」

「今も出れないが…」

「あら。私はもう出方に検討がついたわ」

 

おや、あまり霊夢は頭を使うタイプではないと思っていたが…

 

「畜生界をぶっ壊せばいいってことよ!」

 

やっぱり頭は使っていなかった。

 

「いや、でも…」

「二度も私たちを捕まえたこんな場所なんて知らないわ。定晴さんの能力で結界が消えるなら、それでいいじゃない。ここにはもう味方はいないんだから」

「…豪快だな、霊夢」

「豪胆なのよ、私は」

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