東方十能力   作:nite

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三百十七話 二手に分かれて

「私がいない間に随分と結界に綻びが出たわね」

「そんな一目でわかるのか?」

「ええ。このままじゃ幻想郷が崩壊するってのも存外冗談にはならないわね」

 

幻想郷側までやってきて、久侘歌と別れた後。

取り敢えず俺たちは博麗神社まで帰ってきた。博麗神社から見える結界の様子を見た感想が、さきほどの霊夢のこれだ。

 

「さて、さっさと犯人をやっつけないと取り返しのつかないことになりかねないわ」

「霊夢の勘は、どこだって言ってるんだ?」

「そうねぇ…妖怪の山か魔法の森のどちらかね」

 

妖怪の山は妖力が集まる場所であり、術式を作るのにも適しているようにも思える。

魔法の森は魔力が集まる場所であり、妖怪の山に比べると空気中の量も多いのでコスパはいいように思える。

どちらも確かにありえそうな場所だ。どちらも潜伏場所にもうってつけなわけだし、幻想郷の中で何かしているのならその二か所は非常に怪しい。

 

「二手に分かれましょ。私は魔法の森に行くから、妖怪の山を定晴さんよろしく」

「了解」

「あと人数的に式神のうちどっちか借りたいんだけど…」

 

ユズとルーミアを見る。ユズは全力で首を振っている。

俺たち以外の住人の中では、ユズと霊夢はそれなりに交流がある方ではあるのだけど、流石に二人っきりはまだ辛いか。

 

「ルーミア、行ってくれるか」

「まあユズがこんなだしね。仕方ないわ」

 

ついでに言うと、ユズの実力がまだ未知数な部分が多いので、霊夢と二人っきりにするのは不安だという部分もあるのだ。

 

「あ、これ連絡用お札ね。何かあったら霊力を込めて伝えなさい」

「はいはい」

 

古式電話である。霊力がある限り無限に使えるし、霊力は自然に回復するので、外の世界の電話よりも物持ちという意味ではよい。嵩張らないしな。

霊夢とルーミアが魔法の森に飛んで行ったので、俺たちは妖怪の山へと行く。妖怪の山は過去の異変の関係で、それなりにフリーパス的に入れるので俺が適切だ。霊夢は何かと警戒されているらしいし。

 

「よし、俺たちも行こう」

「はい!」

 

霊夢がいるときは静かだったユズが、霊夢が飛んで行った瞬間元気になった。やはり霊夢はまだちょっと怖いらしい。

 


 

妖怪の山までやってきた。雰囲気から察しているのか、いつもよりも哨戒天狗の動きが激しい。

 

「お、定晴じゃないか。何しに来たんだい?」

「にとり」

 

それとは別に、河童が荷物を運んでいた。その中には見知った妖怪であるにとりの姿もある。

その体の何倍も大きな荷物を、滑車やトロッコ。タコみたいなアームによってスイスイと運んでいる。

 

「その荷物は…」

「これかい?なんて説明したらいいかわからないんだけど…河童仲間のレーダーで変な反応が出たから、貴重なものを倉庫に運んでいるところさ。妖怪の山はどうしても他の妖怪に攻撃されることもあるからね」

 

何かあったときは霊夢が攻めてくる。そして、霊夢の攻撃によって妖怪の山に住んでいる妖怪が慌てて流れ弾が飛んでくる。そうなると貴重なものが壊れてしまう。

そんな流れで、河童たちは作った機械以外にも貴重な資料や書類を非常用倉庫に運んでいるらしい。倉庫がどこにあるのか知らないけど、いつの間にそんなものを作っていたのだろうか。

 

「それで、定晴は妖怪の山に何の用だい?」

「ああぁ…知らない妖怪を見たりしてないか?幻想郷で見たことのない妖怪とか、そういうやつ」

 

詳しく言うのも憚れるので、内容を濁しつつ情報を求める。

 

「知らない妖怪?うーん、妖怪の山は結構入れ替わりが多いからなぁ…」

「天狗がそれなりに管理してるんじゃないのか?」

「あれはあくまで治安維持だよ。わざわざすべての妖怪を検閲してるわけじゃないからね」

 

妖怪の山では天狗が哨戒しているが、流石にすべてを見ているわけではないらしい。幻想郷は妖怪が多いので、すべてを記憶しているわけにもいかないのだろう。

 

「じゃあ個人的に、何か気になるようなこととか」

「うーん、天狗たちが慌ただしいこと以外は特にないかな」

 

ふむ…少なくとも、にとりからは特に有用な情報はなさそうだな。

ただ、天狗たちでも感じ取れるくらいの異変であることには変わりないのだから、ここで調査するときは注意する必要がありそうだ。

 

「じゃあ私は仕事があるから」

「ああ。引き留めて悪かったな」

「私が話しかけたからね。多分また面倒ごとだろう?気を付けてね!」

 

それだけ言うとにとりは河童の列に戻っていった。この距離で見ると、まるで蟻の行列みたいだ。

 

「定晴さん、どうしますか?」

「取り敢えず入山しよう。結界に関することなら、早苗たちも把握してるだろうし、もっと情報を得られるかもしれない」

 

早苗たちが住む守矢神社は、妖怪の山の頂上に近いところに立っている。その影響で訪れる妖怪も多いので、情報が集まりやすいと思われる。

あまり住処から外に出ない河童に比べても、情報が集まりやすい場所であることは確実であろう。

 

「多分相手は隠れているだろうから、周囲には警戒しておけよ」

「了解ですっ」

 

俺たちは妖怪の山に入った。一応天狗が話を聞きに来たけど、調査だって言ったら普通に素通りさせてくれた。

 

「信頼されてるんですね」

「諦められてるに近いんじゃないかな…」

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