東方十能力   作:nite

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三百十八話 躊躇いなく

定晴さんと別れて魔法の森へ。

ルーミアと二人っきりになるってあまりないから、ちょっと新鮮ね。まあ誰が同行者でも気にしないから、私の調子に影響はないけど。

 

「ここに怪しいやつがいたら、先に魔理沙がなんとかしてるんじゃないの」

「それはそれとして行かないわけにはいかないでしょ。それに、魔理沙に頼るのは癪だわ」

 

ご主人様は勘違いしている節があるけど、霊夢と魔理沙は仲間ではない。むしろライバルであり、商売敵でもある。なんせ、霊夢は異変解決が仕事であるし、魔理沙は目立つことで宣伝になっている。

だから、魔理沙が先に異変解決をすることは、霊夢にとって必ずしもメリットとはならないのである。まあ、霊夢は面倒くさがって積極的に動こうとしないことも多いけど。

 

「森の中のどこが怪しいとかないの?」

「そんなに高精度な勘じゃないわよ。それができるなら、定晴さんも連れて全員で元凶を叩いてるわ」

「レーダー霊夢、目指しなさいよ」

 

レーダー霊夢…語感がいい。口に出して読みたい日本語ランクインだ。

私もご主人様も探知には不向きなのだ。私の闇は広範囲にできるけど、区別することはできないし、ご主人様はそもそもそういった広範囲系の技が極端に少ない。そのため、霊夢がレーダー役になってくれると動きやすいんだけど…

 

「幻想郷が大変ってときに、厄介な妖精ね」

「蹴散らすわよ」

 

魔法の森にはあまり妖精が住んでいない。遊び場にはなるけど、住むには流石に魔力が濃すぎるらしい。ただの人間が体調不良になるほどの魔力の濃さなのだけど、妖精もずっといると体調が悪くなる。

だから、ここで飛び出してきた妖精はたまたま今日ここで遊んでいた妖精ということになるのだろう。申し訳ないけど、邪魔だから一回休みになってもらうわよ。

 

「なんとなくあっち!」

 

霊夢が指さした方向に向かいながら、闇を棘のようにして妖精に刺していく。痛いと思うけど、ビジュアル的にわかりやすくピチュったほうが、周囲に妖精が委縮して出てこなくなるのだ。

 

「中々痛々しいことをするわね…」

「邪魔したほうが悪いわ」

 

霊夢に若干引かれた。うーん、効率的だと思うんだけどなぁ…実際、飛び出してくる妖精の数は目に見えて減ったし。

これご主人様の前でやったら、ご主人様にも引かれるかしら……やめよう。今の私は、ご主人様に嫌われることを考えるだけでコンディションが悪くなる。

 

「…」

「なによ」

「定晴さんのことを考えてるのかなーって思っただけよ」

「なんでわかるのよ」

「勘よ。あまり間近で見たことなかったからあれだったけど、私が思ったよりもあなたって定晴さんにぞっこんなのね」

 

私の顔が赤くなる。少しの怒りと、とてつもない羞恥で。そんなにわかりやすいのかしら、私。

 

「あら、あなたもそんな乙女みたいな顔するのね」

「あなたも、って誰の事?」

「紫よ。二人とも、同じ人のことを考えて同じような表情をするのよ。近くで見てて、甘さで吐きそうだわ」

 

私はそこまで表に出していないと思うんだけど…傍目から見たらわかるということなのだろうか。霊夢の勘が鋭いことくらいは分かってるけど、恋事情にまで精通しているとは思えない。

 

「ん、止まりなさい」

「あ…」

 

雑談もここらへんで切り上げて、私たちは木の影に隠れた。

目の前では、妖精が何かを見ている。目線の先には魔法陣。

魔力で満ちている森なので、魔法陣の効果は幻想郷のどこよりも強く出る。誰が置いた魔法陣かはわからないけど、注意しないといけない。

 

「魔理沙が置いた可能性は?」

「ないわね。そもそも、魔理沙は魔法陣とかのちまちましたことは嫌いよ?」

 

それはそう。弾幕を火力でごり押ししてくる人が、チマチマ魔法陣を構築したりはしない。

 

「ま、こんなところに置いてあるのが悪いわ」

 

そういうと、妖精ごと魔法陣を吹き飛ばしてしまった。死ぬわけではないとはいえ、なんの躊躇もなくいったわね…

魔法陣を吹き飛ばして満足そうな霊夢に近づく。畜生界でずっと動物霊に捕まっていたストレスを発散したのかもしれない。

ついでに疑問に思っていたことを霊夢に尋ねてみる。

 

「そういえば水那は何してるの?」

「留守番を任せたけど…今はあっちも異変解決のために動いているかもしれないわね。畜生界で連絡用のお札を失くしちゃって、会わないと連絡できないのよ」

 

それは作った意味が…まあ、あの状況のなら失くしてしまうのも仕方ないか。

 

「さあ、これで犯人が出てきてくれたらいいんだけど…」

 

霊夢がそう呟いたとき、私たちの地面が吹き飛んだ。起爆地点は先ほど霊夢が吹き飛ばした魔法陣の地点。どうやら遅延式の時限爆弾の魔法陣だったらしい。

 

「小癪ね!嘗めないで頂戴!」

 

霊夢は結界で、私は闇で即座にガードしたおかげで無傷だ。魔界で特訓してなければ闇の展開が間に合わなかったかもしれない。

 

「これは私たちを狙った罠ってことでいいわね」

「そうとは限らないような…」

「売られた喧嘩は買う主義なの。絶対にぶっとばすわ」

 

普通は置いてある魔法陣をノータイムで破壊したりしない。

霊夢の性格を把握しているからこその罠なのか、それとも完全に誤爆なのかはわからないけど、霊夢の闘争心に火がついてしまった。

これで毎回ちゃんと異変解決してるから面白いわよね。

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