東方十能力   作:nite

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三百十九話 ユズの主張

守矢神社までやってきた。ずっと魔界にいたこともあって、ここに来るのも随分と久しぶりだ。

 

「あ、定晴さん!魔界に行っていたと聞きましたけど」

「さっき帰ってきたんだ」

 

境内では早苗が掃除していた。天狗たちは騒がしかったけど、守矢神社は平常運転といったところか。

 

「早苗は…何か感じるか?」

「結界の歪みですか?」

「感じるのか」

 

流石は巫女…というか風祝。

 

「それは勿論です。でも、諏訪子様から何もするなって止められてるんですよね…」

「そうなのか?」

 

ふむ、異変として見るのであれば、原因を探るのは当然の動きだと思うんだが…もしかして、神様にしかわからない何かがあるのかもしれない。

 

「そうだよんっ」

「うわっ」

 

思考を巡らせていたら、いつの間にか後ろに諏訪子がいた。釣り竿を持っており、足元のバケツには二匹の魚が泳いでいた。霧の湖で釣ってきたのだろうか。

 

「早苗にはまだちょっと早い事例だからねー。それに、博麗大結界におかしいのであればこれをどうにかできるのは流石に霊夢じゃないとね」

「なるほど」

「それで、霊夢はどこに?」

 

今までの経緯を軽く説明した。

流石に霊夢が畜生界に閉じ込められていたことは知らなかったようで、霊夢が動物霊の中にいたことを伝えると、とても笑っていた。

 

「はぁ、笑った笑った。つまり、霊夢は別機動隊として動いているわけだね」

「そうだ。それで、妖怪の山で何かおかしなことはなかったか?」

 

守矢神社は妖怪の山でも、情報が集まりやすい場所だと思うので何かあるなら知っていると思うんだが…

 

「うーん、少なくとも私は知らないなぁ…早苗は?」

「私も特には…天狗たちはいつもよりも慌ただしいですけど、それくらいですね」

「そうか…」

 

天狗たちは結界や妖力の変化を見て慌てているようなので、誰か怪しいやつを見つけたということではないだろう。むしろ、何かしらを見つけた場合はそこに天狗が集まるはずなので、今のように飛び回っているということは、何も見つけられていないということだろう。

 

「すみません、お役に立てなくて…」

「いや、気にするな。何も情報を得られていないのは俺たちも一緒だ」

 

八千慧の位置は分かっていない。霊夢の勘により、幻想郷の方にいるだろうということにはなっているが、詳細は分かっていない。

もしかしたら何の目印もない森の中にいるのかもしれない。こうやって住人から情報を集めるほかないのだ。なんせ、俺と霊夢は数日間幻想郷にいなかったのだから。

 

「紫さんたちとは連絡がとれないんですか?」

「今は結界の維持で忙しいらしい。橙ですらすぐに帰ったから、相当だ」

 

先ほど試しに一度呼んでみたが、返事はなかった。冬眠しているわけではないので、確実に仕事をしているはずなのだが、呼びかけに応えられないほど忙しいらしい。

 

「私よりも神奈子の方が交流があるから知ってるかもしれないけど…」

「神奈子はどこにいるんだ?」

「この異変を見てどこかに行っちゃったんだよね。私もよく知らないや」

 

どうやら神奈子は不在らしい。この社は諏訪子と神奈子の二人のものなので、どちらかいなくても問題ないとは思うけど、神社に神がいないとは…

 

「というか、首謀者ってわかってるの?」

「ああ、それは分かってる」

「ふーん…?」

 

諏訪子が思案顔になる。ミキの例があるので、神の思案には少しばかり警戒してしまう。神が考え事をするときは、大抵よくないことが起きるからである。

 

「定晴、ちょっと待ってて」

「いいけども」

 

諏訪子は早苗を連れて社の中に入っていった。そして、ここから少しだけ見える位置で、何かを話している。距離があるので、何を話しているかまでは聞き取れない。

 

『私なんかじゃ…』

『寂しかったんだろう?ここでばしっと目立ってきなよっ』

『ですが…』

『よし、神様命令、行ってこいっ!』

『ええっ!?』

 

しばらくすると、二人が戻ってきた。さて、何を話していたのかな。

 

「話し合いの結果、定晴には早苗を連れて行ってもらうことにしました」

「お、お願い、します…」

 

どんな話し合いをしたのかは不明だが、早苗が仲間になった。

ただ…

 

「ユズ、大丈夫か?」

「…大丈夫、です。私の都合で、色々拒否するのは、よくない、ですから…」

 

うーむ、こうは言っているけれどユズには負担になってしまうな。

住人の中ではまだ慣れている霊夢でも、未だにスムーズなやりとりができないというのに、まだあまりコミュニケーションがない早苗ともなれば、ユズのストレスが増えてしまう。

俺がそのことを言おうとすると、後ろからユズに服を引っ張られた。

 

「大丈夫、です」

「ユズ?」

 

ずっと俺の後ろに隠れていたユズが、俺の前に出た。突然会話に参加してきたユズに、諏訪子と早苗の視線が集まる。

 

「よろしく、お願い、します…」

 

ぺこりとユズが頭を下げた。今まで自分からコミュニケーションをとろうとしなかったユズにとっては。早苗への挨拶は相当なハードルであるはずだ。

それを、自分からやろうとするだなんて…ユズも成長してるんだな。

 

「よろしくお願いしますね、ユズちゃん」

「は…はいっ…」

 

それだけ言うと、ユズはまたもや俺の後ろに下がってしまった。でも、ユズは頑張った。

親しい人以外には、自分から話そうともしなかったユズが、こうして自己主張をするようになったということはとても嬉しいことだ。ユズ自身もそういう性格をどうにかしたいと願っていたので、少しの成長が喜ばしい。

 

「よし、行くか。妖怪の山の中をもう少し…」

 

ユズの成長に感動しつつ、もう少し妖怪の山を探索しようと思ったとき、妖怪の山が揺れた。

 

「な、なにあれ!?」

 

大爆発。

方向は魔法の森。

 

「ルーミア、霊夢、大丈夫か!!」

 

お札からの返事はない。

 

「あれは…やばそうだね。三人とも、急いで向かった方がいい。神社の方は私の力で守っとくからさ」

「お願いします諏訪子様。定晴さん、行きましょう」

「ああ」

 

無事であってくれるといいんだが…

 

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