東方十能力   作:nite

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三百二十一話 奇跡と言えば奇跡

俺たちが魔法の森にたどり着く前に、ルーミアから式神通信が来た。

 

『私たちは無事よ』

『よかった…』

 

魔法の森から妖怪の山はそれなりに距離がある。だというのに大爆発として見えたということは、相当な爆発だったはずだ。

あの爆発に巻き込まれたらまず無傷ではいられない。二人が大丈夫だと聞いて一安心だ。

 

『霊夢とは別行動中よ』

『…それ大丈夫なのか?』

『さすがの霊夢も同じミスを何度もしないわよ』

 

それならいいんだが…今のところ俺は霊夢が活躍しているところを見ていないからなぁ…

 

「ルーミアと霊夢は無事らしい」

「それはよかったです。流石二人って感じですねっ」

 

早苗はルーミアの詳細を知らないと思うんだが…まあ仮にも神様が近くにいる環境で生活しているわけだし、案外分かったりするものなのだろうか。

 

「あ、あの…」

 

ふと、後ろから声をかけられた。

振り向くと、そこには小さい人形が浮いている。操っているのは、人形遣いで魔法使いのアリスだ。

 

「アリス。どうした?」

「今の爆発は何?なんで突然魔法の森が吹き飛んだの?」

 

随分と動転している。確かに慌てたくなるような大爆発だったが…と思っていたら、早苗が耳打ちしてきた。

 

「忘れたんですか。アリスさんの家…」

「あ…」

 

アリスは魔法使いだ。そのため、魔法の森の環境がとても体質に合っている。研究だとかをする上でも、魔法使いにとって魔法の森は非常に好立地なのである。

そんなアリスの家があるのは、ちょうど俺たちが見ている、木々がなぎ倒されている森の中。

 

「わ、私の家…」

 

浮かびながら崩れ落ちるという器用なことをしている。そのアリスを上海人形が慰めていて…上海人形ってアリスが操ってるんじゃないのか?自分で自分を慰めているということなのだろうか。

大爆発の衝撃で巻き上がった砂埃が空中を漂っており、アリスの家が無事かどうかはここからは見ることができない。流石に大丈夫だと信じたいのだけど…

 

「というか魔法の森って魔理沙の家もあるじゃん」

「魔理沙さんの家…吹き飛んでるかもしれないですねぇ…」

 

魔理沙が家にいなければいいのだけど…

そんなことを考えていると、アリスが立ち上がった。浮きながら立ち上がるってこれまた器用なことをしている。

 

「許せないわっ!犯人は誰!」

 

随分とご立腹な様子。そりゃまあ家を吹き飛ばされたら誰でもこうなるか。

 

「どうせ定晴さんたちは事件を追ってるんでしょ」

「まあそうだが」

「私もついていくわ!絶対に後悔させてやるっ」

 

アリスがここまで感情を剝き出しにしているのは珍しいな。いつも冷静というか、魔女らしい性格だというのに、流石に家を吹き飛ばされたら冷静ではいられない。

とはいえ、これ以上パーティメンバーが増えるとユズが辛そうなので、アリスとは別行動。

 

「霊夢が魔法の森の中にまだいるらしい。合流してくれないか?」

「分かったわ。私の方が土地勘あるし適任ね。霊夢と一緒に犯人をボコボコにしてくるわ」

 

いつもよりも語気が強い。それに口調も荒れている。こんなアリスを神綺が見たらどう思うでしょうか。

ともかく、アリスたちに魔法の森は任せることにする。というのも、この爆発を囮にして逃げているかもしれないからだ。この大爆発を何かを契機にしているのであれば、既に行動を開始している可能性が高い。なんせ、幻想郷のどこからでも見えるほどの爆発だからだ。

 

『ルーミアも霊夢に合流してくれ』

『了解。ご主人様、気を付けてね』

 

式神通信は俺とルーミアの間でしか聞こえない。電話みたいなものだな。そのため俺の呼び方もいつも通りである。

さて、魔法の森から八方どこにでも可能性があるが…

 

「早苗は霊夢のような勘とかってないのか?」

「あれは天賦みたいなものなので…ただ、私には神様のご加護がありますよ。どこの神を祀っているかもわからない博麗神社とは違って、ご神託もばっちりです!」

 

そのご神託って諏訪子と神奈子のものじゃないのか?二人が知っているとは思えないのだけど…

 

「ということでちょっと待ってくださいね…」

 

早苗がどこからか取り出した御幣を振る。巫女さんとかが祭儀のときに振っているやつだ。

御幣を振ると同時に、僅かに神力を感じる。諏訪子たちと通信でもしているのだろうか。

 

「むむむ…東です!」

「ご神託か?」

「いえ、奇跡が起きるだけです!」

 

おっと…勘よりもあやふやなものが来たぞ?と思っていたら、早苗が口を開いた。

 

「私の能力を教えていませんでしたね。私のは【奇跡を起こす程度の能力】といいます」

「…それって奇跡なのか?」

「奇跡です!」

 

起こされた奇跡は必然というとかなんとか…まあでも、確かにたまたま起きていると考えることもできるのか。早苗がいればソシャゲのガチャでハズレなしになれそうだ。

 

「小さい奇跡を起こすくらいなら、ちょっと念じればできるんですよ」

「犯人捜しが小さい奇跡なのか?」

「完全に見つけるのはちょっと…なので、ここから東を中心として百八十度くらいのどこかで出会います!これが奇跡ってことですね」

 

範囲が広いな。しかも、東中心の百八十度って北と南もギリギリ入っていないか?

 

「確実に会うなら…一時間くらい念じれば行けますかね」

「大変じゃないか、それ」

「正直三十分を越えると私自身の力じゃ足りないんですよね。だから長時間の祈祷はいつも神社でやってるんです」

 

先ほど感じた神力は僅かだったが、それが三十分、一時間も続けば消費量はとてつもないことになる。神様本人から神力を借りなければ、少なくとも神聖な場所である神社でもなければ継続できないのだろう。

まあ、反対方向に行く心配はほとんどないってことだから、今はこの即席祈祷に頼ろう。

 

「じゃあこのまま東に行くか」

「あ、定晴、さん」

「どうしたユズ」

「その、博麗神社の方に、行った方がいいかも…水那さんに、会えたら、協力してもらいましょう」

 

早苗が言った範囲の中に、博麗神社の方角も含まれている。

この大爆発は博麗神社からも見えただろうし、霊夢曰く水那も動いているらしいから会える可能性は低いが、もしかしたら何かメッセージがあるかもしれない。

 

「なら博麗神社の方に向かおう」

 

吉弔八千慧、どこにいる?

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