東方十能力   作:nite

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三百二十二話 結界の弱点

博麗神社までやってきた。しかし、博麗神社に入ることはできない。

 

「これは結界ですね…博麗の巫女じゃないと解除できなさそうです」

 

というのは早苗の言。どうやら、水那が留守にしている間に博麗神社が襲撃されないように結界を張っておいたらしい。こんな頑丈な結界を張れるようになったんだな。

博麗神社は博麗大結界の要である。なので、ここを襲撃されたら一巻の終わりということになるな。

 

「あ、定晴さーん!あうー!」

 

下から声が聞こえたので、見下ろしてみると、そこには狛犬のあうんが座っていた。博麗神社の狛犬は結界の中なので、いつもの行き場がないあうんは階段に座っている。

 

「あうんは結界の外にいるんだな」

「博麗の巫女以外が中にいると結界が使えないって水那さんが言ってたので。怪しい人がいたら追い返してって水那さんに頼まれたので、ここで見張ってるんです!」

 

肝心な時にいないことが多いあうんだが、今日はちゃんと見張りの役割を果たしているらしい。

ただし、博麗神社の結界を破れるような猛者の場合あうんが一人でいてもまともな戦力にならないように思えるが…まあ言ってあげないのが優しさだろう。

 

「水那がどこに行ったか知ってるか?」

「水那さんは人里に行くと言っていました!でも、それも今朝のことなので今はもういないかもです…」

「了解だ」

 

水那を見つけることが目的ではないので、出会えないならそれでもいい。博麗神社がこのように結界で覆われているのであれば、ここで情報収集することも叶わなさそうだ。

 

「あうん、他に何か伝言とかあるか?」

「んー…あ、結界の外の倉庫におやつがあるって言ってました!」

「それはあうんへの伝言だろ」

 

あうんへのおやつの準備を欠かさない水那…霊夢よりも巫女らしい性格に育っているように思える。外の世界で出会ったときは他者を寄せ付けない空気だったが、幻想郷に馴染んだのだろう。

それはともかく、俺たちへの伝言は…

 

「特にないですね…」

「そうか。わかった」

 

水那は俺たちが戻ってきていることを知らない。橙たちが伝えていなければ、霊夢が畜生界から戻ってきていることも知らないはずなので、もしかしたら水那は一人で解決しようとしているのかもしれない。

取り敢えず、水那と合流する理由はないので、俺たちは俺たちで調査しなければいけない。犯人がわかっているので、探すだけなのだけど…

 

「幻想郷で隠れるならどこだろうな…」

 

妖怪の山にも魔法の森にもそれらしい発見はなかった。霊夢の勘はこの二つだと言っていたが、全然違う方向にいる可能性もある。早苗の奇跡によると、こっち側で会える可能性があるらしいし。

 

「早苗、幻想郷に隠れるような場所はあるか?」

「うーん、人の手が入っていないところは多いですから、強い妖怪ともなれば幻想郷のどこにでも潜伏できると思います」

 

幻想郷は人と妖怪の共生が実現している場所だが、パワーバランスが均衡というわけではない。弾幕ごっこという手段がなければ、人間が妖怪に力で勝つことは中々難しいのだ。

そんなわけで、幻想郷の森はほとんどが手つかずだ。狼のような野生の妖怪が生息している限り、もしくは人間が重火器のようなものを手に入れない限り開発は進まないだろう。

 

「妖怪の山に隠れられる場所は?」

「洞窟とかはありますけど…方向は全然違いますよ」

 

早苗の奇跡によると、妖怪の山は範囲外だ。霧の湖がギリギリ入るといったところで、紅魔館も入らないような範囲なので、妖怪の山は一切範囲に入っていない。

しかし、博麗神社の向こう側に隠れられる場所はそう多くない。なぜなら、この向こうは俺たちが来た彼岸があるからだ。その前に太陽の花畑などが存在しているが、そこには幽香が住んでいるので隠れるには向かない。

 

「幽香が何か知ってるか…?」

「ゆ、幽香さんですか…」

 

そういえば幻想郷の住人は幽香に対してそれなりに恐怖があるんだったな。なんでだ。

幽香はあまり太陽の花畑から離れないので情報を持っている可能性は低い。だが、何もない現状に比べると、太陽の花畑には何もないという情報が得られる方がマシだ。

 

「あ、そうだ。隠れられるわけじゃないですけど、術式には向いている場所がありますよ」

 

八千慧は、幻想郷全体に対して術をかけている。俺の無効化による影響があったとはいえ、大結界に影響を及ぼせるとなると相当大がかりな術式だ。

 

「それはどこだ」

「無縁塚。外の世界のものが流れつく場所であり、幻想郷の闇の部分でもあります」

 

一度だけ無縁塚に行ったことがある。あれはルーミアが式神になったばかりといった頃だ。

あそこにはほとんど人が来ない。たまに霖之助が物拾いに行くが、そうでもなければ知性ある者は近寄らない。あそこには、知性のない妖怪が多くいるからだ。

 

「霖之助が拾いに行くのは大体一か月に一回だから、その間に準備をしたならあり得るか…」

「それに結界に影響が出やすい場所でもあります。あそこは広いですから、術式を書くのも十分可能だと思います」

 

外の世界のものが流れつくような場所だ。結界が薄くなっているため、結界を破りやすい場所でもある。

 

「だが、それは紫も知ってるんじゃないのか?だからこそ博麗神社があるんだろ?」

「博麗神社は要であり、大結界を壊すなら博麗神社がありますが…」

 

今回の敵の目的は幻想郷の崩壊ではなくて、あくまで乗っ取り…と思われている。そのため、大結界が壊れてしまうのは八千慧からしても不本意なのだろう。

 

「行ってみるか」

「はい!」

「ん…」

 


 

霊夢はどこに行ったんだろう。魔法の森の大部分は吹き飛んだので、そこまで探索できるような場所もないと思うんだけど…

試しに式神通信をしてみるが、やはり繋がらない。ご主人様との繋がりが消えているわけではないのだけど、濃い魔力がまるでカーテンのように遮っているのだ。たくさん妖力を使えばつなげることもできるだろうけど、いつ戦闘になるかもわからない現状では、あまり妖力の無駄遣いはできない。

霊夢を探していると、私の他に魔法の森を飛んでいる人影を見つけた。霊夢ではない。

 

「あら、ルーミアじゃない」

「アリスなのだー」

 

怒り心頭といった形相のアリス。人形たちも、お面の付喪神みたいに顔に鬼の面を付けている。なにそれ、いつも用意してるの?

 

「霊夢を探してるんだけど…」

「私もなのだー」

「あらそうなの。なら一緒に行きましょ」

 

そこでふと思い出す。アリスの家は魔法の森の中。このように木々が吹き飛ぶような爆発のあとは…うーん、アーメン。

 

「まったく。ひどい話よ」

「かわいそうなのだ」

「やめてよ、惨めになる」

 

幻想郷で慰謝料とかって存在するのだろうか。損害賠償請求とか…幻想郷にはそもそも、司法が弾幕ごっこみたいなところがあるからないか。

 

「あ、霊夢ー」

 

しばらく飛んでいると、アリスが霊夢を見つけた。

 

「あら、アリスじゃない。どうし…あ、家がなくなったんでしょ」

「うるさいっ」

「分かるわよー。私も前に、神社を破壊されたことがあるから」

 

局所的な地震のときの話だ。でもあれって霊夢が中々動かなかったのも悪いみたいな結論にならなかったっけ。

 

「定晴は博麗神社の方に向かったらしいのだー」

「ふーん。魔法の森にはなかったし、妖怪の山に行ってみましょう」

「あっちは定晴たちが…」

「定晴は地理に弱いでしょ。それに、途中で爆発が起きたからこっちに来たんだろうし」

 

なるほど。確かにそれはあるかもしれない。

というか、定晴もユズもまだ幻想郷の地理に弱いのだから、どうしたって探索が不十分になるのは分かっていたことじゃない?まあいいけど。

 

「アリスにも付き合ってもらうわよ」

「もちろんよ。私の手でボコボコにしてあげるわっ」

 

アリスがあらぶっている。怖いなぁ…

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