東方十能力   作:nite

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三百二十三話 軋轢

無縁塚までやってきた。ここに漂う独特の空気と、死の匂いには慣れたくないものだな。

 

「見たところ何もありませんね…」

 

早苗の言う通り、見た限りだと何も見つからない。いつも通り、腐敗したものと土とそれを荒らす妖怪がいるだけだ。

 

「…何かいる」

「ユズ?」

 

ユズが一点を見つめている。

見ているところには何もない。しかし、ユズには何かが見えるらしい。

 

「どこだ?」

「こっち、です」

 

ユズの先導で、俺たちは無縁塚を歩く。たまに妖怪が襲ってくるので返り討ちにする。

 

「早苗は何か感じるか?」

「いえ…私にはいつもの無縁塚にしか見えません」

 

早苗にも俺にもわからないが、ユズには分かる何か。

 

「ここ、です…」

 

たどり着いたのは、無縁塚の中心からは少し離れているとある一点。目立つものがないので、具体的にどこと言うことはできないが、だからこそ俺達には何もないように思える。

 

「何があるんだ?」

「魔法陣みたいな…でも、魔法陣じゃない、何か、です」

 

ふむ…そういえば、俺は昔見えない魔法陣を見つけたことがあったな。三妖精が騒いだとき、チルノと一緒に見つけ出した魔法陣のことだ。

あの時はチルノに魔法陣の周囲を凍らせてもらい、屈折率が変化したことで見えるようになったものだ。

俺はチルノほど火力の高い氷を出すことができないので、今は可視化することができない。

ただし、存在していることを把握できれば術式の無効化は問題ない。能力を使えば、見えないものに対して使うくらいは問題ない。

 

「魔法陣ではないのか?」

「えっと、魔力が出てますが…魔法陣じゃ、ないみたい、です」

 

魔法ではないのか…なんだろうか。あまり魔法の方面に精通していないので、魔法陣ではない魔力を発する何かなんて言われてもわからないのだ。

 

「早苗、魔法とかは…」

「専門外です…アリスさんについてきてもらえばよかったですね」

 

魔法の森に住んでいるアリスと魔理沙は魔法使いだ。どちらか片方でもいれば、何かわかったかもしれない。とはいえ、ないものねだりをしている場合ではないので…

 

「無効化するぞ」

「周囲に結界を張っておきますね」

 

早苗が周囲に結界を張ったのを確認して、俺はユズが見えているであろう結界を対象にして、無効化を実行する。

まずは見えないという現象に対して無効化を使うことで、しっかりと魔法陣を見れるようにする。

 

「白い…枠?」

 

無効化を使うと、白い線で作られた枠が現れた。見えるようになると魔力を発しているのがわかるが…この形状は明らかに魔法陣ではない。

そもそも陣となる要素がなく、枠組みだけだ。枠の中に何かが書いているというわけでもなく、現状効力を発しているようには見えない。

 

「なんか形が無限、もしくは数字の八に似てるな」

 

独特な形状であり、それこそ無限とかじゃないとみることがない形をしている。ただし、魔力を発している以外に何か見つけることはできない。

 

「解除してしまっていいんですかね」

「どうだかな。そもそも関係ないものかもしれないし」

 

隠されていたから後ろめたい何かであるのは確かだろうけど、これがいつ仕掛けられたものかは不明だ。

 

「確かルーミアたちは魔法陣に干渉したら爆発したらしいから…」

「変に干渉すると爆発するかもしれないんですか…」

 

魔法の森と違って、無縁塚にはあまり物がない。そのため、魔法の森に比べたら周囲への影響は少ないだろうが、爆発の中心にいる俺たちは大変なことになる。結界でなんとかなるらしいのだが、無意味に幻想郷で大爆発を起こす理由はない。

 

「そもそも何なんですかねこれ」

「さあな」

 

今のところ、相手のすることはよくわからないものが多い。動物霊を使ったタンク、畜生界を丸ごと覆う結界、爆発する魔法陣に、無限の形をしている謎の印。

俺たちが気が付いていないところで暗躍されている感じがして、とても不愉快だ。

 

「でも定晴さんの完全な無効化なら爆発せずに済むのでは?」

「うーむ…」

 

もしかしたらこれをスイッチとして別の何かが作動する可能性はあるのだけど…無効化すれば大抵のものはシャットアウトできるから、相手の意表はつけるかもしれない。

 

「よし、無効化!」

 

俺はこの謎の印に無効化を使った。その瞬間…

 


 

妖怪の山まで来たが、めぼしい成果はない。ご主人様は聞き込みをしたみたいだけど、霊夢はそういう性格じゃないので、自分勝手にどんどん進んでいく。

 

「私の勘がここまで外れることってあまりないのだけど」

「霊夢だって万能じゃないってことじゃない?」

「家を吹き飛ばされた魔女に言われたくないわね」

 

霊夢の勘では、魔法の森と妖怪の山が怪しいと言っていた。魔法の森はあの魔法陣があったので、何かあったといえばあったのだけど、犯人につながる証拠や道筋は見つけることができなかった。

だからこそこうして妖怪の山に来たのだけど、魔法の森以上に何も見つけることができない。そもそも、ここには哨戒天狗がよく飛んでいるので、相手もそこまで目立つような行動はできなかったのだろう。

 

「まあ何も見つからないなら仕方ないし…」

 

下山しようとしたとき…

 

「…え?」

 

空が、割れた。

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