東方十能力   作:nite

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三百二十四話 幻想郷破壊

「霊夢…これ…」

「…急展開ね」

 

幻想郷の上空に、はっきりと見えるくらいの亀裂が入った。

博麗大結界に入った亀裂ではあるものの、あまりにも大きい亀裂なので、まるで空が割れたかのようだ。

 

『ご主人様、何かした?』

『…悪い、やらかしたみたいだ』

 

ご主人様からそんな声が届く。一体何をしたんだろう…

 

「霊夢、定晴から」

「なんだって?」

「やらかした、って…」

 

何をどうしてそうなったのだろうか。ご主人様がやらかすって中々ないこと…いや、それなりにするかあの人。ご主人様ってたまに抜けてるところあるからなぁ…

 

「まったく…そもそも博麗大結界が歪んだのだって定晴さんが原因なんだから、あとでちゃんと謝罪の品を貰わないと許さないわよ」

 

謝罪の品があればいいんだ…前に霊夢を怒らせたときに、ご飯を作ることで許されたことがあるとご主人様は言っていたので、今回も霊夢のごはんを作ることになるのだろうか。

それはともかく、結界に亀裂が入った状態は非常にまずい。幻想郷の乗っ取りを目論んでいる吉弔八千慧からすれば、結界が緩むこと自体はとても好都合だからだ。

 

「というか、なんか揺れてない?」

 

アリスがそんなことを言った。

私たちは空を飛んでいるので気が付かなかったけれど、確かに揺れているような気がする。地面に立ってみると、確かに振動を感じる。

 

「何、爆発の次は地震のつもり?」

 

霊夢はそんなことを言うけれど…段々揺れが強くなっている気がする。

 

「霊夢」

「何よアリス」

「魔法の森にいる人形から情報を得たんだけど…魔法の森は揺れてないみたい」

 

魔法の森と妖怪の山はそれなりに近い。そうでなくても、幻想郷自体がそこまで大きくないので、地域で揺れが変わるようなことはほぼ起こりえない。

しかし、現時点で妖怪の山と魔法の森で差が発生している。それが意味するのは…

 

「まさか、局所的地震!?」

 

経験者の霊夢が叫ぶ。

霊夢は依然、天人の天子によって局所的地震を発生させられて博麗神社が倒壊している。あれは博麗神社だけを狙ったものだったけど、妖怪の山だけを狙ったものだとしたら…

 

「天界も絡んでるって言うの?」

「でも、そうじゃないと局所的地震なんか…」

 

霊夢の質問に、アリスが弱弱しく答える。

でも、違う。私は霊夢のような勘を手に入れたのかもしれない。空を見上げる霊夢とアリスに対して、私は下を見た。

 

「来る…」

「なに?」

「間に合わない!」

 

私は正体が露呈することも顧みず、霊夢とアリスを頑丈な闇で包んだ。

その直後…妖怪の山の一部が大爆発した。

 


 

俺が無効化を使った瞬間、白い型は一気に魔力を放出した。そして、その魔力は俺の魔力を飲み込んで空気中に拡散される。

その直後…

 

ピシッ

 

博麗大結界に亀裂が入った。無効化の力が作用されて魔法陣モドキから魔力が放出されることはなくなったが…

 

「くそっ、利用された!」

「定晴さん?」

 

俺は珍しく言葉を荒げる。

 

「今の幻想郷には俺の無効化の力が少し残ってるんだ!今の無効化の力を利用されて、活性化させられたんだ!」

 

そのせいで、一気に博麗大結界の歪みが強まり、亀裂が発生したということだ。

どうやら向こうは俺がここで無効化の力を使うことを予期して、俺の無効化の力を利用するための魔法陣を用意しておいたらしい。

 

「無効化って…拡散…するんですか…」

「普通はしない、というかそういう概念がないものなんだが…」

 

現在の幻想郷は少しばかり不安定な状態なので、可能になってしまったことなのかもしれない。

なんにせよ、俺の不用意な無効化によって吉弔八千慧に有利な状態になってしまったということだ。

 

「博麗神社に戻った方がいいかもしれない」

「そうですね」

 

俺たちが無縁塚を飛び出したとき、爆音が周囲に響いた。

 

「また爆発!?どこが…」

 

探すまでもなかった。なぜなら、そこは幻想郷のどこからでも見える場所だからだ。

 

「妖怪の山が…」

 

妖怪の山の側面が大きくえぐれている。富士山噴火のシミュレーション映像を見たことがあるが、それと似たような光景が目の前にある。

 

「早苗、守矢神社は」

「神社はもっと上の方にあるので大丈夫なんですが…あそこは天狗たちが多く住んでいる場所です」

 

天狗たちは特に警戒していたので、不意を突かれて総崩れということにはなっていないとは思うけど、まさか妖怪の山が爆発するとは思っていないだろうから、巻き込まれた天狗は多いかもしれない。

人間よりも頑丈な妖怪といえど、山を抉るほどの威力の爆発に生身で当たれば致命傷だ。

 

「早苗の奇跡では、こっち側で犯人に会えるんだよな」

「はい。範囲は広いですけど、妖怪の山側にはいないことは確かです」

 

ということは妖怪の山はブラフか?それにしては随分と大がかりな…それに、注意を逸らしたいというのであれば、魔法の森の爆発がすでにその目的を達成している。

 

「もっと奥に行こう」

 

俺たちは無縁塚を通り過ぎて、三途の川まで飛ぶ。その道中、ユズが随分と落ち込んでいた。

 

「どうしたユズ」

「私が…あれを、見つけて…言っちゃったから…すみません…」

「気にするな。罠のすべてを回避するのは不可能だしな」

 

あれに関しては向こうの方が一枚上手だったというだけだ。ユズが気にしていても仕方ない。

 

「そうですよ!守矢神社がやらかしたことの方が大変ですって」

「…何やったんだ?」

「……勝手に原子力炉を妖怪の山の地下に作りました…」

 

好き勝手やってるな。というか、幻想郷にそのエネルギー源って大丈夫なのだろうか。

 

「あ、ほら、三途の川ですよ。それに、誰かいます!」

 

早苗が話を逸らした。後で紫判断を聞こう。

三途の川の畔に誰かが立っていた。いや、あれは確実に…

 

「ここにいたのか、吉弔八千慧」

「あら、妖怪の山が爆発したのに見捨てたんですね。薄情な人間だこと」

「向こうには既に仲間がいるからな」

 

薄い笑みを浮かべた吉弔八千慧が立っていた。

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