東方十能力   作:nite

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三百二十五話 幻想郷崩壊

「しかし…随分と時間がかかりましたね」

「まさか途中ですれ違っているとはな」

 

畜生界から幻想郷に来る途中で、ここの上空も通っている。もしその時からここに隠れていたのだとしたら、俺たちは一度こいつを見逃したということになる。

 

「魔法の森も妖怪の山もお前の仕掛けか?」

「ええ、きれいな爆発だったでしょう?」

「心にもないことを」

 

魔法の森が爆発したせいで、アリスの家と魔理沙の家は吹き飛んだ。そして、妖怪の山では今頃天狗たちが大惨事になっているだろう。

そんなことをしておいて、飄々とした姿勢を崩さない八千慧にイラっとする。

 

「ですが…私には勝てませんよ」

 

八千慧からの威圧感が増す。妖力も放出して、戦闘態勢だ。

 

「俺たちは三人。それに、お前はあまり戦闘派じゃないだろ?ただ痛い思いをするだけだと思うが」

「ふふ、それはどうでしょうね」

 

動物霊の異変のときに、俺は八千慧が霊夢に負けたところを見ている。

あれは弾幕ごっこであり、本気を出していたというわけでもないだろうが、そこまで強いとは思わなかった。

 

「それとも、時間稼ぎか?」

「さあ、どうでしょう」

 

不敵な笑みを絶やさない八千慧。不気味だ。

そんな八千慧は、とうとう弾を放ってきた。弾幕ごっこ…にしては威力が高い。当たり所が悪ければ死にそうだ。

 

結界【緩衝散破】!」

 

大量の結界を出して、弾を相殺する。八千慧の攻撃力が高いせいで、弾一発につき四枚ほど砕かれてしまうが、それ以上の勢いで放出しているので、なんとか耐えている状態だ。

 

「早苗、ユズ、二人も攻撃を」

「分かりました!」

「はい」

 

二人も攻勢に転じ、三人による攻撃が始まる。

すると、一気に八千慧は弾幕に覆われ、被弾していく。やはり、弾幕勝負では、複数人が同時に攻撃すると難易度がとてつもなく上がるんだな。

 

「…なる、ほど」

「さっさとこんなことはやめろ」

 

既に八千慧の見た目はボロボロだ。

 

「やはり多勢に無勢、ですね」

「当たり前だ」

「でも…」

 

八千慧が俺たちを睨みつけた。

まるで蛇が小動物を睨んだかのような威圧感とともに、体が硬直してしまう。なんだ、これは。

 

「ひぅ…」

 

声がして後ろを見ると、早苗がへたり込んでいた。それに、ユズも攻撃をやめて動けなくなっている。

 

「ふふ」

「魔眼でも持ってるのか?」

「まさか」

 

八千慧の威圧感はなくならない。まるで逆らう気力がなくなるような…蟻の立場で象に挑むような、そんな気持ちになってくる。

八千慧は殺傷能力の高い弾を放ってきて、ここままでは俺たちは揃ってやられてしまう。

…対象:<俺に影響している他者の干渉>、無効化、実行。

 

「おらっ!」

「なっ」

 

無効化して、硬直時間が終わればすぐさま攻撃。

無効化を実行したら、威圧感がなくなった。つまり、あの威圧は八千慧の存在感によるものではなくて、能力による干渉だったというわけだ。

 

「なぜっ」

「悪いが、こういうのはもう慣れたよ」

 

不服だが、不動のおかげで自分自身の不調の原因として他者の能力干渉というパターンがあることを知った。そのため、八千慧に同じことをされてもすぐに対処できる。

早苗たちに能力を使うには霊力消費が多くなってしまうので今はできないが、八千慧を倒せばなんとかなるだろう。

 

「このっ、私に」

「悪いが、この異変はここまでだ」

 

八千慧はなんとか防ごうとするが、俺の浄化付与した輝剣の前では防御の意味もない。

そしてとうとう追い詰めたとき、地面が揺れた。

 

「定晴さん、あれ!」

 

へたり込んだままの早苗が声をあげる。早苗が指さした方向には、更なる爆発が起こった妖怪の山の姿が。

 

「ふう、まさか破られるとは思いませんでしたが…」

「やはり時間稼ぎだったのか」

「あら、冷静ですね。悪役というのは、敵と出会うときには既に計画を実行しているものですよ」

 

そのとき、妖怪の山から更なる爆炎が巻き起こった。妖怪の山で何が起こっているのだろうか。

 

『ルーミア!』

 

式神通信で連絡しようとしてみるが…なぜか繋がらない。まるで電波が悪いような…そうか、ここと妖怪の山の間には魔力爆発した魔法の森があるせいで、繋がらないんだ。

 

「そもそも、既に実行された計画に関して、私を倒したところで止まるとお思いで?」

「お前、今まで会った妖怪の中でも群を抜いて性格が悪いぞ」

 

あくまでここにいる八千慧は傍観者となっており、計画の実行は既に止まらない、ということだろうか。

しかし、橙が言っていた八千慧の目的からすると妖怪の山を爆破することは何の関係もないような気がするのだが…

 

「ふふ、もう幻想郷の崩壊は止まりませんよ」

「幻想郷がなくなって困るのはお前もなんだぞ!」

「いいえ、私は困りません。だって、私には幻想郷の代わりとなる結界に覆われた世界があるのですから」

 

結界に覆われた世界…畜生界か。

幻想郷を乗っ取るのではなく、幻想郷をなくして置き換えるのが八千慧の目的だったというわけだ。最初から目的を誤認させていたのだ。

 

「このっ」

「ぐぅっ」

 

俺は八千慧の腹に輝剣を叩きこんで気絶させる。もしかしたら俺の無効化ならなんとかなるかもしれないが、八千慧を野放しにしておく理由はないからだ。

 

「俺は妖怪の山に行くから、ユズはこいつを確保しておいてくれ。はい、対妖怪ロープ」

「わ、わかりました…」

 

俺は浄化作用を持つロープを幻空から取り出す。今のユズならば、俺の浄化に触れても大丈夫なはずだ。

 

「早苗も来るだろ」

「はい!神様なので爆発程度じゃ大丈夫だとは思いますが、神社が…」

 

俺以上に早苗の方が妖怪の山を心配しているはずだ。なんせ、自分の家である守矢神社があるからな。

さっきは天狗のエリアだったからまだよかったが、今は妖怪の山全体が爆発している。守矢神社も無事ではない可能性が高い。

 

「行きましょう、定晴さん!」

「急がないとな…」

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