「二人とも大丈夫?」
「ええ…」
「うん…」
またもや爆発に対する瞬発力が試される場面だった。今回の爆発は足元ではなかったが、咄嗟に張った闇が削られ妖力消費が増えることとなった。至近距離で爆発に巻き込まれた妖怪は瀕死になっている可能性がある。
「びっくりしたわ…って、山が削れてるじゃない!」
「巻き込まれた人が大変なことになってるかも…」
爆発がした方向を見ると、そこからは噴煙のような煙が立ち上っていた。噴火したわけではないけれど、大爆発が起きているから噴煙でも間違いではないか。
『ご主人様!』
反応なし。まあ、こういうときに繋がるようにしている相手ではないだろう。
どうせご主人様は無事だろうから、私たちだけで妖怪の山は対処しなければならない。流石に、吹き飛ばされた妖怪を前にして放置することはできない。
「定晴とは繋がらない」
「まあ定晴さんを頼るまでもないわ。さっきの爆発で開いた穴の下にいるはずよ!」
え、待って。吹き飛ばされた妖怪を放置するの?
「私の家の恨みをぶつけてやるわ!」
待って待って、二人とも妖怪たちを無視して行こうとしないで。
「吹き飛ばされた妖怪たちを助けるとか…」
「あいつらは頑丈だから大丈夫よ。私たちはさっさと犯人を懲らしめないと」
えぇ…
たしかに妖怪が吹き飛ばされるのは日常茶飯事だし、わざわざ助ける必要はないような気もするけど…ここで見捨てるのは違うと思ってしまうのは、私がご主人様に染まっている証明だろうか。
「助けるならあんた一人でやってなさい。私とアリスは行くから」
「…わかった。先に行ってて」
私は妖怪たちを助ける。頑丈とはいえ、岩肌を削るような威力の爆発を食らって無事でいられるはずがない。
霊夢は何をするかわからないけど、比較的常識人のアリスが一緒にいるのであれば少しは安心だ。
「連続で爆発するかもしれないから気を付けてね」
「大丈夫よ。最悪夢想天生でなんとかするわ」
「ねえ、それ私は無事じゃないんだけど」
霊夢とアリスは爆発の影響で開いた穴の中に入っていった。
そして私は吹き飛んだ妖怪を探しに行く。一瞬だけど、吹き飛んでったのが見えたのよね…確かこの辺に…
「うっ…ぐ…」
「あ、いた」
男の天狗が倒れていた。片足が吹き飛んでいて、いい感じにグロい。まあ、私も過去に人間食べてるしこれくらいの血でもなんとも思わない。
「さっさと運ぶわよ」
時間が惜しいので、闇で腕を捕まえて運ぶ。闇を実体として操れるようになったのは本当に楽ね。
途中で他にも天狗が吹き飛んでいたのを見つけたので、そいつらも腕を捕まえて運ぶ。ただ、封印状態だとここらへんが同時に出せる闇の限界なのよね…
「意外といるわね。まったく…避けられなかったのかしら」
私の病の許容量を超える数がぶっ倒れている。一応他の天狗たちが運びに来ているのだけど、大部分が麻痺しているのかその数は多くない。
私は髪のリボンに触れる。
封印状態を解いてもいいんだけど、それすると周囲の天狗たちに敵対されそうなのよねー…まだあまり妖力を隠すのは上手じゃないから、封印を外したら周囲にばれるし…
「あれ、ルーミアさんじゃないですか」
「ん、狼」
椛が来た。そういやこの子は千里眼が使えるし、私が捜索しなくても倒れている妖怪を見つけられるはずね。
「ルーミアさん、そんなことできたんですね…」
私の闇を見てそんな感想を呟く椛。これはご主人様に妖力の制限をかけてもらってるからこそできることなので、前はできなかった。知らないのも無理はない。
私は闇で引っ張ってきた天狗たちを椛に押し付ける。
「あ、ありがとうございます。あとで運んでおきます」
「そう」
周囲を見た感じもう他に倒れている妖怪はいないようだ。死んでいる妖怪はいなかったのが、不幸中の幸いだろうか。まあ、妖怪はそうそう死なないけれど。
「じゃあ私は…」
霊夢たちを追うから…その言葉は、遮られることとなった。
「なっ、また爆発ですか!?」
妖怪の山がまたも爆発した。今度は山頂付近の、大妖怪が多く住んでいる区域のはず。
大妖怪なので、爆発では死にはしないだろうけれど、どちらかと言えば…
「落石がっ!」
「ああもう!」
闇を展開して近くの椛と気絶している天狗たちをまとめて守る。私がどれだけ力を使おうとも、最終的にご主人様が説明することになるんだからもうなりふり構ってられないわ。
「あ、ありがとうございます…」
「まったく…」
もう子供らしい口調をするのも疲れるので、できる限り言葉は発さない。
流石に妖怪の山が爆発してる中でパパラッチの真似事をするような天狗もいないだろう。
霊夢たちのことを追うのは後になりそうだなぁ、と思いながら浮かび上がると、さらに爆発が起きた。またもや妖怪の山の山肌が吹き飛んでいる。
「なんなんですかぁ!」
地面に立っている椛がそんなことを叫ぶ。知らないわよ、私も。
というか、この爆発って霊夢たちのせいじゃないでしょうね。流石の霊夢も自分から妖怪の山を破壊するわけがないから敵の仕業なのはそうなのだけど、戦闘の余波とかそういう…
ともかく、霊夢たちに妖怪を助けると言ったからには最後まで助けなければいけない。
ご主人様がいてくれたら再生の力でまとめて回復してくれるのだけど、肝心なときにいないわね。まああっちはあっちで犯人を見つけてる頃だろうから、すぐにこの場に現れてもらっても困るんだけど…
「紫ー!藍ー!」
移動手段もとい救助方法としてスキマが手伝ってくれたらすごい楽なんだけど…私の呼び声に反応する気配はない。ご主人様の声なら反応するのかしら。
空を見ると、博麗大結界の亀裂は未だに残っている。多分、あれの修復のためにリソースを割いているのだろう。紫の手伝いには期待できないか…
「ルーミアさん!こんなところで何してるんですか!」
「…パパラッチ」
「ひどいですね。私だって今は救助側ですよ」
空に浮かんでいる私を見つけた文が飛んできた。取材根性を輝かせているのかと思ったら、きちんと救助の手伝いをしているらしい。
天狗たちの中でも屈指の移動速度を持つ文であれば、確かに救助と捜索にはうってつけだろう。
「河童エリアや山姥エリアも吹き飛ばされて、この後が大変ですよ」
「そう」
「あれ、ルーミアさんいつもと雰囲気違います?」
取材はしないんじゃなかったの?
「うわ、そんな睨まないでくださいよ。いつもの子供らしさはどこに行ったんですか」
「…」
「あーはいはい。私も行きますから」
無言で睨みつけるの、いいわね。喋らなくても、人を遠ざけることができる。
文はフラフラと飛んで行った。疲れているのかしら。
「ルーミアさーん!北の方に怪我人が多いようです!」
「ん」
千里眼を使って、椛が怪我人のいる方向を教えてくれる。
私はその指示に従って飛んでいこうとしたら、今度は背後で爆発が起こった。どうなってるのよこの山は。地雷でも山に埋まってたんじゃないでしょうね。
そのとき、今までで一番大きな爆発が起こる。それと同時に空に何かが飛びあがる。
「あら、霊夢とアリスじゃない」
二人は、何者かと対峙して弾幕勝負をしている。いや、二人が対峙している人物は逃げる気満々のようで、二人が追いかける形だ。
救助もそうだけど…目の前に犯人がいるなら、そっちを倒した方がいいわよね。私は霊夢たちが追っている人物を追いかけることにした。