東方十能力   作:nite

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三十二話 太陽の花畑

「暑いな…」

「ええ、そうね…」

 

俺は博麗神社に来ている。魔理沙はおらず萃香は妖怪の山に、針妙丸はアリスに連れられて人里に行っているらしい。故に実質今ここには霊夢と俺の二人だけだ。

実を言うと俺と霊夢はあまり会話をする方ではなく…というかそこまで頻繁に博麗神社に来るわけではないので、若干気まずい。

仕方ないので霊夢でも答えられる話題を振ってみる。

 

「なあ霊夢、夏っぽい場所とかないのか?」

「残念ながらそんな場所無いわ。強いて言うなら霧の湖で水浴びするか、太陽の花畑で…あー、あそこは絶対行っちゃダメ」

 

水浴びか…夏らしいと言えば夏らしいが、生憎俺はそこまでして涼しくなりたい訳じゃない。それに霧の湖で泳いでいたらチルノに凍らされるような気もする。

俺が気になったのはもう一つの太陽の花畑だ。絶対に行ってはいけないとはどういうことだろうか。

 

「霧の湖は分かるが太陽の花畑ってなんだ?」

「あそこには沢山の花が咲いていて綺麗ではあるんだけど、そこを管理している妖怪がなかなかの戦闘狂でね、あそこに行ってもただの時間の無駄にしかならないわ。今日は行かせないわよ?貴方のことならすぐに行こうとするでしょ?」

「そ、そんなことは…」

「少なくとも今日は行かせないわよ」

 

どうやら霊夢が相当に面倒だと思うくらいには厄介な妖怪がいるらしい。妙に釘を差されてしまったので、俺は魔術で氷を作り涼むことにした。

 


 

次の日、俺は太陽の花畑に向かって幻想郷の空を飛んでいた。昨日はずっと霊夢に監視されていたのと、()()()行かせないと言われたのでその通りにしていた。逆らっても良いことはないし、昨日は特段暑かったからな。

しかしそれに次の日は含まれない。場所は事前に地図で探していたので大丈夫である。

 

「夏は歩いて向かった方が良いかな…」

 

高いところを飛ぶせいでもろに受ける太陽の光とセミの声に苛立ちを覚えつつ空を飛ぶ。高度が高ければ気温は下がるはずなのだが、夏の暑さを打ち消すにはもっと高く飛ぶ必要があるらしい。

 

「あややや、定晴さんどこに向かっているんですか?」

「ん?文か。今太陽の花畑ってとこに向かっているんだ」

 

飛んでいたらいつの間にか文が後ろにいた。暑いせいで注意力が散漫となっているらしい。

俺がどこへ向かっているのか伝えると文は突然慌てだした。

 

「太陽の花畑ですか!?あそこは駄目ですよ。流石の定晴さんでも生きて帰って来れるかどうか…」

「ははは、じゃあ帰って来た時は祝賀会でも開いてくれ。なあ、花畑ってあそこか?」

 

俺は目の前にある向日葵畑を指差す。明らかに幻想郷の他の場所と色彩が違う。

 

「あそこの黄色で埋め尽くされている所ですが…本当に大丈夫何ですか?」

「そんなに心配すんなって。もしもの時の隠し技も用意しているからさ」

 

俺は文から離れるようにスピードを上げて離れていく。文はあそこから更に近づくつもりはないようである。

 

「本当に無事に帰って来て下さいね!」

 

遠くの方で心配する声が聞こえた。そんなに心配なら一緒についてきてくれれば良いのに。だがまあ一人の方が楽と言えば楽なので俺は意気揚々と花畑の近くに着地した。

 


 

「いやー絶景だな」

 

目の前に広がるのは沢山の向日葵達。ここは本当に太陽のように黄色く染まった花畑である。名前にも納得である…というかそれ以外に名付けようがない気もするが。

俺が花畑の中にある道に入ろうとしたとき、突如後ろから大きな妖力を感じた。

 

「誰だ!?」

「答える必要は無いわ。貴方は気付いたら三途の川の辺りにでもいるでしょうし」

 

言うが早いかビームが飛んできた。俺は咄嗟に避けて後ろを向く。花畑に害が出ないように攻撃をするのはなかなかの業だと思う…が今は厄介でしかない。

今その妖怪は煙に紛れてしまって見えなくなっている。煙が晴れるとそこには傘を持ちスカートを履いている…ん?

何処かで見たことあるような…

 

「その傘…もしかして幽香か?」

「あら?私の事を知っていてわざと名前を訊いたの?ええそうよ、私は幽香。ここの管理をしているわ。そう言う貴方は……えっ…さだ、はる?」

「ああ、久し振りだな」

 

霧が晴れて彼女の姿が露わとなる。

妖力、服、日傘…どれも俺の記憶にある通り。そこにはフラワーマスターの称号を冠する少女、風見幽香が立っていた。

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