東方十能力   作:nite

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私の小説では珍しく惨いシーンがあります。苦手な人はそのシーンを飛ばして最後の十行くらいを読んでください


三百二十八話 浄化式拷問

大結界の亀裂は非常にまずいことになっている。

だがおかしい。俺の無効化の力を流用されたといっても、ここまでの影響力はなく、その後は結界に干渉することはないため亀裂が大きくなる理由がないのだ。

吉弔八千慧はユズが捕まえているはずだし、妖怪の山爆発の犯人もルーミアが捕まえに行った。

もしかして、まだ誰かいるのだろうか。俺たちが知覚できていない、誰かが…

 

「あやや、妖怪かと思ったら定晴さんじゃないですか」

「文?」

 

思考を巡らせていた俺を覗き込んできたのは文。

 

「救助は必要ですか?」

「霊力が切れてるだけだから大丈夫だ」

 

霊力を回復するには、他の霊力を持ってるやつに助けてもらうか、時間経過で俺の霊力が戻るかしないといけないので、霊力を持っていない文では回復できない。

 

「でも、ここで寝てたら妖怪に襲われますよ」

「四肢が飛ぶくらいまでなら大丈夫だから安心してくれ」

 

既に幻想郷で何度か腕が吹き飛んでいる。心臓と頭部への攻撃さえ回避すれば問題ないはずだ。

俺がそんなことを考えていたら、文は呆れた声と表情になった。

 

「妖怪の私が言うのもなんですが、もっと自分を大切にした方がいいですよ」

「大切にしてるぞ、ちゃんと」

「四肢が吹き飛ぶことを前提に話している人が大切にしてるわけじゃないですか。自分の体を大切にしてくださいよ」

 

妖怪退治なんて、死ななきゃ安いんだ。俺の場合、四肢が吹き飛んでも、大抵の場合は再生で戻せるから断然楽である。

 

「文は噴火に巻き込まれなかったんだな」

「私は速いですから」

 

どうやら爆発に巻き込まれる前に退避し、飛んできた破片などは認識してから回避したらしい。なんという動体視力。

 

「でもその割にボロボロだな」

「…小さい破片は回避できませんから」

 

今の文は、服の一部が解れており、顔や腕から少し血が出ている。それこそ、小石が掠ったと言わんばかりの傷だ。

 

「文、こっち来い」

「はい?」

 

文が近づいてきたので、僅かばかり回復していた霊力を使って文を再生させる。

それに気が付いて、文は完治する前に後ろに飛びのいてしまった。

 

「ちょっ、何してるんですか定晴さん」

「そういう傷は跡が残りやすいんだぞ。今のうちに治しておかないと」

「ですが霊力が…」

「俺は別に怪我してないからな」

 

八千慧との戦闘でも、あまり被弾していない。ゼロではないが、俺よりも文の方が傷は深いのだ。

寝転がっていれば霊力は回復するので、再生に使うくらいは問題ない。

 

「まったく…じゃあ安全なところに先に運びますよ」

 

文がそう言って俺を抱きかかえようとする。少し恥ずかしいんだが…

 

バキッ

 

その時、音が鳴った。俺たちの、幻想郷の空から。

 

「定晴さん…あれは…」

 

まるで廃墟のガラスのようにひび割れた博麗大結界は、もう壊れる寸前だ。しかし、なぜ?

 

「紫ー!紫ー!」

 

俺が大きな声を出して呼ぶ。どうなっているのか、結界の管理をしているであろう紫を呼ぶ。

しばらくすると、スキマが俺の近くに開いた。そして、その中から出てきたのは藍と橙。紫の姿はなく、未だに結界の維持のために色々やっているのだと察する。

 

「定晴さん…」

「藍、どうなってる?なんで結界の亀裂が治らないんだ?」

 

しばらく俺は魔界にいたので、俺の力の残滓は少なくなっているはずだ。無効化の力とはいえど、そもそも持続するような力ではないので、いつまで経っても修繕されないのはおかしいのだ。

 

「実のところ私たちも原因がわかっていません。紫様や隠岐奈様が頑張っているのですが…」

「…藍、三途の川までスキマを開いてくれるか?」

「分かりました」

「文、申し訳ないが俺を支えてくれ。一人じゃ立つのがやっとなんだ」

 

文に使った霊力も合わせて、俺の霊力はすっからかんだ。立つことはできるけれど、生まれたての小鹿のようになってしまって、一人で歩くことすらままならない。

藍たちは紫の補佐があるだろうから、あまり自由に動くことができない。式神は二人とも傍にいないので、致し方ない。

 

「…わかりました」

「すまない、助かる」

 

藍が再び開いたスキマを通って、文に支えられながら三途の川まで移動する。女性といえど、妖怪なので情けないとか思わない。

 

「おや、あれはユズさんですね」

「ちゃんと逃げられないようにしてくれたんだな」

 

三途の川では、八千慧をぐるぐる巻きにして、逃げられないように紐の先端を持ったユズが座っていた。八千慧は既に目を覚ましており、ユズに色々語りかけている。

 

「定晴…さん…」

「大丈夫だったか?」

「はい…脅されましたけど、私には、定晴さんがいるので…」

 

八千慧め、ユズを脅して逃げようとしたのか。うーむ、幻想郷で根っからの悪人って感じなのは初めてだなぁ…

 

「なぜ彼女には私の能力が効かないのでしょうかね」

「さあな?八千慧、お前に色々と聞きたいことがある」

「どうぞ。答えませんが」

 

そうだろうな。そも、妖怪にとって人間の脅しは何も怖くないのだ。なんせ、生物学的に妖怪の方が人間よりも強いので、人間にできることは妖怪にとって恐怖でないことがほとんどなのだ。

だが、俺には八千慧と強引な話し合いができる方法を持っている。

 

「文、連れてくれありがとな。もう大丈夫だ」

「分かりました。後日、取材料無料でインタビューさせてくださいね」

「はいはい」

 

文はスキマを通って帰っていった。どうやら、スキマは開いたままにしてくれているようだ。

 

「ユズ、なんでもいいから力を分けてくれ」

「定晴さん、からっぽ、ですね。むむむ…」

 

ユズから妖力と、少しの霊力が流れてきた。妖力はユズの、霊力は俺から逆流したものだ。

俺は妖力も扱えるので、そのまま体の中にため込む。これである程度動けるようになったはずだ。

 

「今からちょっとばかりショッキングなことをするから、できればユズは離れておいた方がいいと思うぞ」

「……大丈夫、です。なんであれ、受け入れます」

 

今日のユズは、いつもと違って自分の意見をよく言う。その成長は喜ばしいものだし、まあ、見たくなかったら途中で目を逸らすだろう。

 

「一体何をする気で?」

「紫から禁止って言われたやつだ」

 

幻想郷に来てすぐの頃、萃香を相手に戦ったとき、紫から幻想郷ではできる限りやめるように言われた技を使う。

とはいえ、普通の精神状態だと俺の精神状態にもよくないので…

 

『狂気、ちと交代』

『はいよ』

 

…これで、俺の精神状態が狂ってしまうことはないだろう。

俺は八千慧の肩に触れて…浄化!

 

「あっ、ぐううう!」

「仲間は何人いるんだ?」

「知りませんね」

「そうか…」

「うああああ!」

 

妖怪が人間の脅しに屈する理由として、人間の力が強く調伏されることを避けることが挙げられる。調伏にはある程度準備が必要だが、調伏された場合全くと言っていいほど無力化されるからだ。

それを、俺はノータイムで行える。妖怪である幻想郷の住人に対しては非常に有効な脅し…いや、拷問である。

 

「なら、結界が壊れ続けているのはなぜだ?」

「経年劣化、じゃない、です、か?」

「そうかもな」

「ああああああ!」

 

ちらっとユズを見ると、やはり別の方向を見ていた。それに、耳を塞いでいる。やはり刺激が強すぎたか。妖怪であるユズからしても怖すぎるもんな。

俺の浄化の力で、俺が触れている肩の部分は少しばかり薄くなった。まるで幽霊みたいだな。

 

「早く言わないと消えちまうかもな」

「仲間なんて、いない!私と、もう一人だけ!」

 

流石に消えかかっているのは恐怖なのだろう。涙目でそんなことを言った。

口調も乱れているし、嘘をついている様子もないな。

本当のことを言うのであれば、俺は浄化の力を弱める。拷問は、こういった飴と鞭が重要なのだ。

 

「結界は?」

「知りませんよ、本当に」

 

浄化が弱まって余裕が出たか。浄化の力を強める。

 

「あぐうう!」

「結界、は?」

「畜生界…」

 

それだけ言うと、八千慧は気絶してしまった。

ちっ、やりすぎたか…

 

「ユズ、もう大丈夫だぞ」

「えっと、定晴さん、ですよね?」

「ああ。いつもの俺だ」

 

狂気が表に出ている間、中から拷問を見ていたのだが…惨いな。なんであれを平然とできるんだ?

 

『慣れ』

『そんなに拷問やらせてないだろ』

 

ともかく、八千慧から畜生界という情報を得た。気絶してしまったが…

 

「ユズ、八千慧を抱えられるか?」

「えっと、多分大丈夫です」

 

対妖怪用のロープを巻き付けたまま、ユズが八千慧を抱きかかえた。

それを確認したのち、ユズを連れてスキマに入る。ルーミアの情報を確認したら、畜生界に行かないとな。

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