東方十能力   作:nite

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三百三十話 復興

異変は終わった。首謀者の八千慧と尤魔はロープにまかれたまま、紫に連れていかれた。

だが、異変の影響は計り知れない。なんせ、魔法の森と妖怪の山の両方の大部分が吹き飛んだのだ。元通りというわけにはいかなかった。

 

「こういうときこそ信仰をー!神が救いますよー!」

 

畜生界から戻ってきて、次の日。妖怪の山に来たら諏訪子が妖怪たちに向かって信仰を呼び掛けていて、妖怪たちは拝んでいる。やはり妖怪も住処がなくなったら神頼みもしたくなるのだろうか。

 

「あ、定晴さん。お疲れ様です」

「早苗も信仰集めか。大変だな」

「そうですねぇ…特に今回はいっぱい使うことになるので、妖怪たちも必死に拝んでくれてますよ」

「いっぱい使う?」

 

俺が早苗に訊き返したとき、諏訪子が大声で叫んだ。

 

「キタキタキター!行くぞー!」

 

諏訪子が大きく両手を地面につけた。

その瞬間、地面が揺れる。また爆発かと思ったら、昨日爆発で欠けた山肌がどんどん戻っていく。

まじで神の奇跡ってことか…!?

 

「諏訪子様はああやって創造できるんですよ。だから、山肌の欠けた部分はこうして信仰して力を集めないといけないんです」

「なるほど…信仰ってああやって力に変換されるのか…」

 

実際にご利益があるからこそ、妖怪たちが素直に諏訪子へ拝んでたのかもしれないな。ここまでわかりやすくご利益を見せてくれる神様もそうそういまい。

 

「植物とかってどうなるんだ?」

「植物は諏訪子様の範囲外なので、各自で植えて育つのを待ちますね。場合によっては幽香さんに頼みますけど」

 

そうか、幽香に頼めば植物はどうとでもなるのか。幽香自身あまり植物に負荷をかけたがらないので、すべての木々を元通りにすることはできないけれど、どうしても必要な部分は生やしてくれるだろう。

ということは、元に戻すのが大変なのは環境ではなく…

 

「家は?」

「建築するしかないですねぇ…外の世界だと逆なんですが、幻想郷では建物を建てる方が時間がかかるんですよ」

 

普通自然環境というのは、手を加えるのが大変になる。何年、何十年もかけて戻すのが一般的だからだ。

だが、幻想郷では自然に手を加えるのが容易なので、建築の方が時間がかかるというなんとも不思議な現象が起きる。家を建てる程度の能力とかいないのだろうか。

 

「それで…定晴さんはどうしてここに?」

「妖怪の山の様子を見に来ただけだ。犯人たちは紫に絞られてるからな」

 

俺たちが確保した八千慧と尤魔は紫に渡した。幻想郷が崩壊する可能性があったので、流石の紫も怒り心頭だ。

拷問は俺よりも慣れてるだろうし、俺は二人を護送したあとは自由というわけである。

 

「それに、結界の様子を見る必要があるしな」

「これ、いつ戻るんですかねぇ」

 

幻想郷の空には、未だに亀裂が残っている。

博麗大結界は相当な力を持って維持している。そのため、このように大きく破損してしまうと修復に時間がかかってしまうのだ。霊夢や紫が毎日色々するようだが、それでも一か月はかかる見込みらしい。

大結界への干渉は難しいので、水那が何もできないと嘆いていた。

 

「結界がこうなっている悪影響とかってあるんですか?」

「今のところはないみたいだ。別に完全に割れてるわけじゃないからな。ただ、脆くなってるから同じような異変が起きると今度こそ壊れるかもしれない」

 

博麗大結界が壊れれば、その瞬間幻想郷が外の世界に認知されるようになり、妖怪たちは力を失うことになるだろう。

外の世界には東方プロジェクトがあるから、生粋のオタクたちによってなんとかなるかもしれないが、妖怪たちの衰退を止めることはできない。

 

「じゃあ俺は家に帰るから」

「はい…そういえば魔界に行っていたんですよね?そちらは…」

「ああ、それはな…」

 


 

「急に出ていくからびっくりしたわ。出るのなら先に言っておいてほしかったんだけど…」

「すまん…」

 

現在、俺の家には神綺がいる。緊急のこととはいえ、突然魔界を出ることになったので、神綺に余計な心配をかけさせてしまったようだ。

 

「一応紫様からの連絡は受けたのですが…」

「だめよ夢子ちゃん。紫の連絡なんてあまり信用できないんだから」

 

神綺と共にメイドの夢子も家に来ている。異変が終わったのを察知して、魔界からこちらまで遊びに来たらしい。家はアリス伝いに聴いたようだ。

 

「それで、魔界には戻ってくるの?修行の途中だったんでしょ?」

「そうなんだが…」

 

俺の無効化の能力は魔界に行く前となんら変わっていない。そのため、修行をする意味はあるし、可能ならもっと修行をしたいとも思っているだが…

 

「少なくともすぐには無理だな。紫から、八千慧たちの処遇が決まるまでは幻想郷にいるように言われてるんだ」

 

処遇を聞くだけなら魔界でもいいとは思うのだが、異変の影響とかもしかしたらまだ何かあるかもしれないからとかで、しばらく幻想郷にいるように言われたのだ。スキマがあるとはいえ、緊急事態だと少し時間がかかってしまうからな。

博麗大結界に影響を与えたという大事件だったので、紫も神経質になっているらしい。

 

「残念ねぇ…なら、定晴さんたちが魔界に戻るまで私たちもこっちに滞在しましょ」

「神綺様、仕事が…」

「魔界なんて放置してても勝手に回るんだから大丈夫よ。こっちのアリスちゃんの家も見たいし」

 

ワクワクした様子でそう話す神綺。悪いが、アリスの家はなくなったよ。

魔法の森をよく見たのだが、やはり魔理沙の家とアリスの家はなくなっていた。アリスの半自動人形(命令を与えると、それを繰り返すだけの人形)が森を彷徨っていたので、その子たちを回収したのち、二人は現在人里にいる。

魔理沙は人里で過ごすくらいなら野宿をすると言っていたのだが、やはり落ち着ける場所がないと大変なのか、渋々人里の端っこの方で生活している。家は慧音に用意してもらった。

 

「じゃあアリスちゃんに会いに行きましょ」

「失礼します」

 

ワクワクした顔で出ていった神綺。多分アリスに凄い嫌な顔をされるんだろうなぁ…

 

「ご主人様、しばらく休暇?」

「そういうことになるな」

 

俺の隣に座っているルーミアがそう言う。

幻想郷にいるように言われたので、しばらく休暇だな。今回の異変のおかげで、俺の無効化の残滓もないみたいなので、普通に生活しても大丈夫そうだ。

 

「宴会はあるんでしょうか?」

「復興が終わってからじゃないかな」

「でしたら、本当に何もないんですね」

 

もしかしたら復興よりも先に宴会をするかもしれないが…スケジュールが出るまでは分からんな。

 

「あ、そうそう。ちゃんとご主人様が幻想郷に帰ってきたってみんなに伝えておいた方がいいわよ」

「なんでだ?」

「後々に面倒を残したくないでしょ?」

 

よく分からないが、面倒は残したくないからそうするか。

ひとまず、しばしの休暇を楽しむとしよう。




今章はこれで終わりです。次の章は日常系です
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