東方十能力   作:nite

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三百三十二話 種族検査

俺の家は、浄化や結界、無効化の力などに守られており、例え不動であってももう家は壊すことができない。

そんな俺の家は、何かと調べるのには最適だったりする。なんせ、結界で守られている以外は特に何の特殊環境もないからな。

 

「私の身体検査ですか…?」

「そうだ。ユズが何の妖怪なのかも含めて、一度身体検査をしようと思ってな。永琳からも、経過観察は見るように言われてるしな」

 

ユズが何の妖怪なのか、未だにはっきりとしていない。不動が外の世界から連れてきた妖怪だが、不動もユズの種族は知らないみたいだし、ここらへんでちゃんと明かしておきたい。

過去に検査したときは、誰も何の妖怪なのか分からなかったけど、今のユズは落ち着いているし、もう少し深いところまで検査できるはずだ。

 

「もちろん、検査自体は別室で私がするから安心してね。ご主人様は男だし」

「いえ、それは心配してないですけど…それに、私は定晴さんなら…」

「だめよだめよ。ご主人様はそういうのよくないから」

 

検査はルーミアにしてもらう。知識は俺の方があるけれど、ルーミアだって大妖怪だからな。ある程度の知識なら持っている。

永琳からそのための本を貰ったので、それに則って検査をする予定だ。

 

「これで何の妖怪かわかるならそれでいいけど…それでなくても、ユズも妖力の使い方がはっきりするんじゃないかしら」

「妖力の使い方?」

「言わば能力ってやつ。私の場合は闇を操るけど、ユズにはそういうのないじゃない」

 

種族によって、最適な妖力の運用の仕方は異なる。ルーミアや紫のように、能動的に使うことに向いているのであればそのままでもいいが、日頃は妖力を溜める方が生きやすい妖怪もいるのだ。

 

「そういうわけだから、私の部屋に来て」

「は、はい…」

「ご主人様はいつも通り過ごしててちょうだい。何かあったら通信で呼ぶわ」

 


 

さて、ユズの身体検査を始めるとしましょう。

 

「というわけで、まずはこの試験管に妖力を込めてちょうだい」

「妖力を?」

「そう。どういう原理か知らないけど、これは妖力を集めることができるみたいなの。あとで永遠亭に送るみたいだから、よろしくね」

 

永琳から貰った器具は、どれも原理はよくわからないけど便利なものだ。医学のためにこんなものまで作っちゃうなんて、やるわね…

ユズが妖力を込めている間に、何をするべきかのメモを読む。ご主人様が永琳から貰った本を読んで頑張って書き下してくれたものだ。

 

「えっと、服を脱いでもらっていい?」

「はい」

 

メモによると、体に特徴のある妖怪も多いので、それで種族が判明することも多いらしい。天狗とかだったらすぐにわかるから、こういうのが体にあるとは思えないけど…

皮膚は人間のものと変わらない。私も体に特徴が現れる妖怪じゃないから、こういう妖怪は珍しくない。

 

「妖力込め終わりましたよ」

「それはこっちで保管しとくから…あ、服はもう着ていいわ」

 

身体的な特徴でわかるのなら、とっくの昔にわかっているので期待はしていない。

 

「さてと、じゃあ本題よ」

「今までのは…」

「こんなのは前座よ」

 

次は永琳から貰った薬を元に調べる。どうやら、妖力に反応する特殊な薬らしい。

反応したときの色の変化によって、種族の方向性がわかるらしい。正確な種族ではなく、動物系とか迷信系とかそういう感じ。

尚、形としては血液検査らしいので、私が採血をする。

 

「チクっとするわよ」

「はい」

 

まあ今更注射の痛みでどうにかなるような妖生は過ごしていない。

ユズから採血したものを薬と混ぜる。黒なら動物、白なら神話…あれ?

 

「色、変わりませんね。それとも、赤があるんですか?」

「ないわ。妖怪の血なら必ず変化するって書いてあるんだけど…」

 

今見ているのはご主人様が書いたメモではなく、薬に付属している説明書を読んでいるのでミスはないはずだ。

 

「薬が悪いんでしょうか…ルーミアさんも試してみます?」

「そうね」

 

ユズに採血してもらって、私の血で薬の効果を試してみる。永琳のことだからミスが起きてるとは思えないけど、失敗をしない人はいないし試してみなければ分からない。

私の場合は伝承とか迷信系なので、緑になるはずだ。

 

「深緑になりましたね」

「色の濃さは妖力の強さによるからこうなるのよ」

 

私は暗闇への恐怖とかそういう類から生まれた妖怪だから、緑色になるのは正しい。つまり、この薬は普通の薬ということになる。

だというのにユズの血で色が変わらないとなると…

 

「実はユズって妖怪じゃないってことある?」

「え、妖力しか持っていないのに?」

「まあそうなんだけど…」

 

一応、他の検査キットでユズを調べてみるけれど、どれも目立った反応はない。

 

「これはご主人様に報告案件ね」

「そうですね…」

 

自分のことが未だにわかっていないユズは少し落ち込んでいる。どうにか見つけたいんだけど…

 


 

「それで、何も分からなかったのか」

「そうなのよ。永琳に文句を言っておいてちょうだい」

「キット自体は普通だったんだから、特異なのはユズの方なんだろ」

 

俺がおやつとしてフルーツポンチを作っていたら、二人が戻ってきた。どうやら、めぼしい成果は得られなかったようである。

 

「そうだなぁ…となると、あとはもうユズ本人の感覚で探すしかないかもな」

「どういうこと?」

 

俺の言葉にルーミアが頭をかしげる。

 

「ユズ、先日の異変のとき、俺たちには見えていない魔法陣が見えてただろ?」

「そう、ですね…私には見えてました」

「もしかしたら、あれが能力なのかもしれない。どういうものかは分からないけれど、あの現象を突き詰めたら種族がわかるかもな」

 

あの場にはユズ以外にも俺や早苗がいたのだ。特に、早苗は神性を持っているので、結構妖怪寄りなのだが、それでも見えなかった。

ということは、やはりあれはユズの特性と考えてもよさそうだ。隠されたものが見えるようになる妖怪に心当たりはないけれど…

 

「近々パチュリーのところに行って知識を貰おうか」

「そうね。それに、パチュリーは魔術方面から調べてくれるだろうから、行ってみましょ」

「分かりました」

 

ユズのためにも、俺たちはユズの種族を明かす責務があるのだ。必要になったら元凶の不動に調べものをしてもらうことにしよう。




定「ルーミアって迷信系なんだな」
ル「闇への恐怖なんて、根源的なものよ?」
定「根源的恐怖の妖怪ってあまり自我が強くないと聞いたが…」
ル「ここまで感情的にしたのはあなたじゃない」
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