買い物をしに人里へ来た。あらかた必要なものは買い終えて、人里を適当に歩いていると、人形劇をしているアリスを見つけた。
子供たちに囲まれており、その中でいくつかの人形を持前の技術を使って操り物語を進める。よくあるドラゴンと騎士のお話のようで、特に男子の客が多いみたいだ。
『ドラゴンよ!私が倒して見せよう!』
『ぎゃあああ!』
『私の剣の錆となるがいい!』
アリスってドラゴンの人形とかも持ってるんだな。上海人形とかとは違い、本当にただの人形のようだけど、その造形は素晴らしいの一言に尽きる。
しばらくして騎士がドラゴンを倒すと、そこで物語が終わった。盛り上がりを見せていた人形劇が終わり、客の子供たちは帰っていく。
「どうだった、私の人形劇は?」
「こういうのもしてるんだな」
「慧音に頼まれているのよ。ほら、娯楽が少ないじゃない?」
弾幕を撃つこともできない人里の子供たちの娯楽は、運動くらいしかない。あとは駄菓子屋で買えるような遊び道具で遊ぶくらいで、外の世界に比べて明らかに娯楽が少ないのだ。
勿論、アニメを見るような媒体もないので、こうしてアリスが人形劇をすることでそれを補っているようである。
「それに、一応あれってお金が貰えるの」
「そうなのか?」
「人里の大人たちから受け取るのよ。謝礼金ってやつね」
アリスは魔女で長生きなので、きっと謝礼金を渡す大人の中にもアリスの人形劇を見て育った者がいるだろう。
「私の家を建て直すのにお金が必要って言われて…人形を新しく作るお金もないわ」
「そうか…」
アリスの家は先日の異変で吹き飛んでしまっている。辛うじて人形たちを救出したものの、家を建て直すには時間とお金がかかる。
その資金調達をここでしているということらしい。
「魔理沙はどうしてるんだ?」
「あっちはあっちで食用のキノコを売ってるみたいよ。それに、あっちは元々魔法店があるからなんとかなってるみたい」
「霧雨魔法店って動いてたんだな」
「みたいよ。私も知らなかったけど」
あれは便宜上というだけで、そういう仕事はしていないと思っていた。俺の何でも屋とやることはほとんど同じだろうし、魔理沙はそういう仕事をしたがらないと思っていたからだ。
聞くところによると、人里での仕事は多いらしい。今まで魔法の森にいたから仕事が少なかったらしく、人里に来てからは色々稼いでいるみたいだ。
「異変の被害として損害賠償とかなかったのか?」
「基本的に異変の被害って自分たちで何とかしないといけないのよ。博麗神社倒壊みたいな緊急性があるならその限りじゃないけど」
一応異変の主犯からある程度絞れるみたいだが、幻想郷の妖怪がお金を持っていることは少なく、結局あまり意味がないらしい。
建築に使える能力があるなら、それで償うみたいだが、今回は八千慧たちだからなぁ…あの二人に建築能力があるとは思えない。尤魔の方はよく知らないが、建築系の能力ではないだろう。
「主犯が鬼ならよかったのに…」
「残念だったな」
鬼は怪力なので、建築に向いているのだ。例え萃香のように小柄な鬼だとしても、そこらへんの妖怪より断然怪力なので鬼ならば建築の手伝いができるのである。
「そうだ!定晴さんって建築できたりしない?!」
「一応建築の仕事はしたことあるが…」
「お願い!お金は出すから手伝って!人里での生活も悪くはないんだけど、魔力の関係上住みづらいのよ。鬼って中々見つからないし、できる限り早めにお願いしたいわ」
魔女たちは日夜研究をしている。その中で魔力を使うことも多い。
魔法の森は魔力に満ちているので、そういった日頃魔力を使うような種族にとっては住みやすい環境だったのだ。言うなれば、常に周囲にバッテリーがあるようなものだしな。
「魔理沙と違って私はちゃんと貯蓄してたものもあるし、もうすぐ集まるわ。お願いできる?」
「いいぞ。じゃあ準備ができたら家まで来てくれ」
「分かったわ」
まさか幻想郷で建築の仕事をするとは思わなかったが…倉庫に道具があったかね。
「萃香じゃだめだったのか?」
「爆発があって妖怪の山の方に仕事で出てるみたいなの。だから博麗神社にいないのよ」
「そうか…地上の鬼はそういう仕事に出るのか」
妖怪の山と鬼の関係は非常に深く、こういった非常時は仕事として出ることが多いらしい。
そのため、萃香は現在妖怪の山の復興に力を出していて、こっちまで来ることがないらしい。いつもだらけている萃香が仕事に出なければいけないくらいの被害だと考えると、甚大だったということがわかる。
「前の家みたいに立派なものじゃなくてもいいわ」
「立地を見る必要があるから…まあ、家で準備しておく」
「ええ、よろしく」
さて、じゃあちょっと久しぶりに本気で仕事をするとしますか。
俺は建築の準備をするために家に帰った。