東方十能力   作:nite

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三百三十五話 能力全開建築法

「アリス、ここでいいのか」

「ええ、魔力測定して、ここが安定してたから」

 

少し時間は経ったものの、今日はアリスの家を建築する日である。必要なものはすべて幻空に入れているので、現状は問題ないはずだ。

 

「そんで…そっちは?」

「手伝いよ」

「頑張りまーす」

 

白い髪と赤い服。なぜか、神綺がこの建築場所に来ていた。

 

「神綺、建築とかできるのか?」

「あのパンデモニウムだって私が作ったようなものよ?アリスちゃんの家くらい作れるわよー」

 

そういえば魔界の神だっけ…でも、それって魔界だからこそ神様らしいことができるだけで、この幻想郷ではそんなすごいことはできないんじゃなかろうか。

神様って自分の信仰がない地域とかじゃまともに力を使えないとかなんとか…だからこそ、諏訪子たちも信仰集めをしているんだろうし。

 

「夢子もやるのか?」

「神綺様に手伝えと…それに、これを終わらせないと神綺様が帰りそうにありませんので」

 

メイドも大変なんだなぁ…レミリアが建築してくれって言ったら咲夜が建てるのだろうか。建てそうだなぁ、時間を止めて一瞬で。

 

「設計図は渡した通り。私に何か手伝えることはある?」

「いや、特にないな。ゆっくりしててくれ」

 

一応神綺と夢子の他にも、俺の式神であるルーミアとユズもいるので、手伝いとしては十分だ。外の世界基準だと、家を建てるのに少なすぎると思うだろうが、幻想郷なのでこれでも問題ない。

なんせ、重機が必要ないのだ。鉄骨くらい一人で運ぶことができる。

外の世界で建築業をしていたときは、周囲を気にするのでとても力持ち程度の能力にセーブする必要があったので、全力でできるここは楽でいい。

 

「それじゃあ、あとはよろしくね」

「はいよ」

 


 

建築をするときの基本的な流れは、土地の整備、区画整備、骨組みを作り、頑丈にしながら壁と屋根を作る。もちろん、細かいところは色々あるのだけど、全体的な流れはこんなもんだ。

こうも色々とすることがあるので、外の世界では新築を建てるのにどれだけ早くても半年くらいはかかる。だが、ここは幻想郷。家を建てるのなんて一日もあれば十分である。

 

「それじゃ、ルーミア頼む」

「ん」

 

ルーミアが闇を使い、土地をきれいに均してくれた。細かい小石などはすべて吹き飛ばされていて、これ以上ないほどにまっさらである。

これで土地の整備は終わりだ。外の世界ならば地下のことや水道管を考える必要があるが、ここにはどちらもないので関係ない。

 

「骨組みを建てるのよね」

「いや、その前に区画の調整だ。設計図だけじゃサイズが分からんからな」

 

プロになれば設計図だけでもぴったりに作ることができるのだろうけど、俺はプロではないので慎重に行う。

 

「ここがポイント、そしてこっちもポイント…階段の前にポイント…」

 

俺が設計図とにらめっこをしながら、ユズに妖力でポイントを打ってもらう。本来は杭などを使うが、幻想郷流ならばそういった目印はすべて霊力や妖力によって行われる。

設計図を見ながら必要なポイントをすべて打った後に、骨組みを作る。

 

「じゃあこれが用意した建材だ。取り敢えず、鉄骨を使っていくぞ」

 

幻空から鉄骨だけを取り出して地面に置く。

この鉄骨は河童たちによって作られた、特殊な素材の鉄骨であり、魔力を吸収すると固くなる。柔らかいうちに必要な加工は済ませているので、固くなっても問題ない。本来は人一人分の魔力が必要なのだが、ここで幻空の外に出した瞬間にはもうすべての魔力吸収が終わっている。

一度固くなればもう戻ることはないらしいので、鉄骨として使うのには十分な強度となる。

固定するために使うのも普通の釘ではなく、一度刺したら抜けないとされる釘だ。抜けなくなるので、刺すときは十分に気を付けないといけない。

 

「神綺様、気を付けてくださいね」

「大丈夫よ夢子ちゃん。私も馬鹿じゃないわ」

 

夢子サポートのもと、神綺が骨組みを作り始める。同時に何本も鉄骨を支えたり釘を打ったり…神様パワーはここでも健在だったらしい。

骨組みを作るのは二人に任せて、俺たちは次の準備をしておく。この様子だとすぐに終わりそうだしな。

 

「次に使うのは萃香から貰った木材だ。妖怪の山の木が大量に吹き飛んだのを加工したらしい」

 

妖怪の山復興用に加工したものだが、萃香から善意で分けてもらった。アリスの家も、場所は違えど復興の対象だからだろう。

これは河童素材とは違って特殊なものではないのだけど、魔力や妖力と相性がいいらしい。流石妖怪の山に生えていた木である。日々妖力を吸い取っていたことだろう。

 

「これを張ればいいのね」

「そうだ。使うのはさっきの釘だな」

 

神綺が作り終わっているところから、同時並行で壁や床を張っていく。ルーミアやユズは妖力を使って何枚も同時に張っている。

さて、かくいう俺はそこまで霊力の扱いが上手ではないのだけど、二人よりも早く張ることができている。その理由は…

 

「あらぁ、定晴さんはそういうこともできるのね」

「建築とかにしか使えないけどな」

 

張る場所に直接木材を、打つ場所に直接釘を出現させているのだ。そのため、場所を合わせるという行為も必要なく、一枚の壁を張るのに数秒で終わる。どれだけ大きな壁であっても、同じ時間で施工することが可能なのだ。

幻空は目視できるところにしか出現させることができないが、張る場所も打つ場所も目視できるからこその技である。

 

「だから建築に一日しか必要ないのね」

「ああ、さくっと終わるからな」

 

言葉通り、すべての壁と床、天井を張るのに数分しかかからなかった。途中で神綺の骨組み建築に追いついてしまったほどだ。

まだ屋根を作っていないが、そこ以外はもう住めるほどになっている。

 

「随分と家らしくなったじゃなーい」

「家具輸送も請け負ってるから、神綺はこれを頼む」

 

俺は幻空からアリスの家具をすべて取り出して家の中に置く。一応設計図に家具の指定場所があるが…神綺がそれに合わせて置くかは不明だ。

神綺が家具を動かしている間に屋根を作る。とはいえ、屋根も壁とかと同じように高速施工が可能なので一瞬で終わる。屋根は釘ではなく専用の接着剤を使うので少し時間がかかるが、それでも三十分にも満たない時間で屋根も作り終わる。

 

「そろそろお昼ごはんだから作ってあげたわよー…って、もう終わってる!?」

「お、アリス。ちょうど終わったところだ」

 

アリスがトレイにいっぱいのおにぎりを作ってくれた。流石に料理をする余裕はないので非常に助かる。

 

「流石に一日はかかると思ったんだけど…」

「半日で終わらせた方がアリスもありがたいだろ?」

「それはそうだけど…手抜きじゃないわよね」

「少なくとも博麗神社よりも頑丈だ」

 

俺のその言葉に満足して、アリスはおにぎりを置いて家の中に入って行った。

満足できる出来ならいいのだが…

 

『家具は置く場所決めたでしょ!』

『こっちの方がかわいいじゃなーい!』

 

どうやら神綺は設計図通りに置かなかったようである。

 


 

「ありがとう定晴さん。これでいつも通りの生活に戻れそうだわ」

「それはよかった」

 

報酬も貰って、こちらとしても満足だ。魔界にいる間は仕事をしてなかったからな。こうして大きな収入があったのは嬉しい。

 

「神綺様、帰りましょう」

「えー…」

「魔界だって色々あるんだから、早く帰りなさいよ」

「アリスちゃんが冷たいわー」

 

神綺がしくしく泣きながら飛んで行った。本当にあれで魔界に帰れるのだろうか。

 

「魔理沙の家はどうなったんだ?」

「魔理沙は自分でなんとかするみたいよ。実家を飛び出したときも霖之助さんに助けてもらったみたいだし、今回もなんとかするんじゃない?」

 

ならいいか。

久しぶりの能力全開建築、楽しかったからもう一度したかったが…致し方あるまい。




ルーミア「全部ご主人様だけでよかったんじゃない?」
ユズ「私たち必要でした?」
定晴「ものを作るときは第三者ってのも時には必要なんだ」
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