東方十能力   作:nite

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三十三話 花の妖怪

「え、本当に、定晴、なの?」

「ああ、少なくとも偽物じゃ無いぞ」

「う、嘘…」

「ほんとだ」

 

幽香は未だに信じられてないのか固まったまま口だけ動かして会話をする。そこまで驚くようなことだろうか。

暫くすると少しずつ歩いてきて…

 

「会いたかった!」

 

思いっきり抱き締めてきた。目には一筋の光が見える。そこまで寂しかったのだろうか。妖怪にとっちゃ長い長い人生の中の短い出来事だったろうに。

 

「ど、どこ行ってたのよ?」

「ん?俺は人間だからな。そんなに長い間都市から離れられない。友人もいるしな」

 

その友人は幻想入りした俺のことを忘れているだろうけど。

 

「それでも、それでも!ちゃんと別れの言葉は言って欲しかったわ」

「お前のことだから言ったら絶対引き留めようと聞かないだろ?」

「そりゃそうよ。貴方ほど大切な人は居ないから。本当にまた会えて良かった」

 


 

所変わってここは幽香の家である。中には花が至るところに置いてあって、とても幽香らしい。

さて、俺と幽香の関係性だが実は二年ほど前に会っている。

それはある森の中で、開けた所にあった大きな花畑。俺がとある仕事の依頼で妖怪の退治をしてくれと頼まれたときだ。聞いた話だと、花畑に近付くだけなら何も問題はなかったのだがある業者の人が花を摘むようになってから近付くだけでも突如攻撃されるようになったらしい。因みに依頼者は小さな農村。

俺は闘うことしか脳がない奴は排除してきたが、話が出来る奴は基本的に話し合いで解決してきた。俺は出来る限り犠牲は少なく迅速にをモットーにしていたため、基本的に俺の妖怪退治のときの対処法はこの二つしかない。

花畑の近くに住んでいたのがこの風見幽香で、花を摘まないでと言っても聞いてくれないため実力行使に出たようであった。

幽香は話し合いが出来る妖怪だったので話し合ったのだが、人間の言い分は信じられないらしく暫く一緒に過ごしたのだ。今思うと幽香も幽香で凄い決断だと思う。それで、一週間ほどだったのに気付いたらこんなに信頼されていた。信頼していなければすぐに抱き締めて来ないだろう。

 

「せめてメモぐらい残してくれれば良かったのに」

「その時紙を持ち合わせてなくてな。半年後に戻った時にはもう居なくなってたし」

 

俺と幽香が一緒に過ごした古い民家がもう一度訪れたときは葉や草で覆われていたときは流石に苦笑してしまった。

 

「当時は既に幻想郷に住んでいて、ちょっとした遠征気分でそこにいたら貴方と会ってしまったのよ。すぐに帰る予定だったのに帰ろうにも帰れなくなって…」

 

しばらくあそこにいたのはどうやら俺が原因だったらしい。紫と会ったのもそれくらいなので幻想郷に住んでいても何らおかしくない。因みにミキと会ったのは三年位前である。

 

「ねえ、また一緒に暮らさない?」

「残念ながら俺には家があってね」

 

完全なオレの持ち家というわけではないが。

 

「なら私と付き合ったら…」

「俺より断然良い奴が絶対いるからな」

 

俺なんてそんなに優しくないのに俺と付き合うなんてだめだ。幽香は戦うことは好きだが、花が好きだし美人だ。人間であろうと妖怪であろうと隔てなく接してくれる誰かがきっといるはずである。

俺がそう言うと幽香は顔を下に向けてボソッと俺に聞こえない声で何かを呟いた。

 

「貴方が一番なのに」

「ん?どうした?」

「別に何もないわよ!それよりさ、貴方の家って何処なの?」

「人里と博麗神社の間の森だ。あそこら辺は俺の家だけだから分かりやすい筈だ」

「ふーん…いつか行くわね」

 

どうやらいつか俺の家まで幽香が押しかけてくるらしい。まあ俺もこれといって忙しいというわけではないし、全然来てくれて構わない。幻想郷散策で家にいない可能性はあるので事前に連絡してもらえると尚助かる。

 

「ああ、でも料理位しか出来ないぞ」

「貴方の料理は凄く美味しいじゃない。絶対行くわよ!」

「お、おう」

 

なにやら凄まれた。別に人並み以上にはできるというだけであって、咲夜や妖夢のような人達の作る料理の方が美味しかろうに。

その後は日が沈むまで色々話した。知っている妖怪と会えるということは嬉しいものだな。

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