東方十能力   作:nite

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三百三十七話 魚の定義とは

続いて砂浜に拉致られてきたのは自宅を取り戻したばかりのアリス。やはり、既に水着姿となっている。

 

「さ、定晴さんっ!」

 

アリスは俺を見た瞬間にその場でしゃがみこんでしまって体を隠してしまった。どうやら水着姿が恥ずかしいらしい。

霊夢たちが平然としていたから気付かなかったけど、普通は水着姿を見られるのは恥ずかしいものか。

 

「びっくりしたわ…」

「大丈夫か?羽織るものでも出そうか」

「ええ、お願い」

 

俺は幻空の中から大きめのブランケットを取り出してアリスに渡す。これで少しは肌も隠れるだろう。

 

「霊夢たちも来てるのね」

「ああ。霊夢は砂浜で寝てるけどな」

「霊夢らしくていいじゃない」

 

それはそう。あまり水場ではしゃいでいる姿をイメージすることはできない。

そもそも霊夢がはしゃぐ時などお金を貰ったときくらいしかない。賽銭箱の音で表に走ってきた霊夢との出会いは忘れることはないだろう。

 

「それはそうと定晴さん」

「ん、なんだ?」

「日焼け止めとか持ってたりしないかしら?」

 

ブランケットを羽織ったアリスが日焼け止めを要求してきた。確かに、今日は日差しも強いし海で遊んでいたらすぐに日焼けしてしまうだろう。

 

「持ってるぞ、肌に合うかは分からないけど」

「大丈夫よ。肌は強いから」

 

俺は幻空に入れていた日焼け止めをアリスに渡す。

夏じゃなくても日焼け止めが必要になる場面というのがたまに存在するので、こうして持っているのだ。実は日焼け止めは遊び以外にも使う場面があるのだ。

 

「霊夢たちはいらないのかな」

「どうかしら。聞いてみるわ」

 

アリスは自分で日焼け止めを塗って海に霊夢たちに話しかけに行った。

そんなことをしていたらさらに追加で誰かが浜辺にやってきた。全然海に入れないな俺。

 

「出迎えは定晴なのー?ありがとー!」

 

出現と同時に飛び込んできたのを回避。そのまま彼女は砂の中に突っ込んだ。

 

「あっつい!!」

「自業自得だ。危ないだろ」

「定晴酷いわ!異変の後始末でいっぱい働いているこの私をぞんざいにするなんて!」

 

来たのは紫だ。紫色のビキニを着ているが、既に砂だらけでセクシーさは半減している。

ずっと異変の後始末に駆り出されていて、八千慧たちの対応とかもする必要があったせいでいつまで経っても休暇が取れないと藍から聞いたのだけど…

 

「仕事は終わったのか?」

「まだよ。でも、ミキから少しは休めって言われちゃった。あいつ、メイドを雇ってることもあってマネジメントが上手よね」

 

紫とミキは俺以上に前からの知り合いなので、紫にしては珍しくフランクに話す。

紫と駄弁っていたら、その後ろから紫の他にも藍と橙が現れた。

 

「あら、二人も来たのね」

「え、言ってなかったのか?」

「ミキの来訪が急なんだもの。伝言する暇もないわよ」

 

まあ確かに。ミキが事前にアポを取ってくることなどない。ほとんど、ではなく全くない。やろうと思えば時空間連絡もできるはずなのだが、一切それをしない。

 

「紫様、羽目を外しすぎないようにしてくださいね」

「分かってるわよ。どうもここは外の世界というわけでもないみたいだし」

「そうなのか?」

 

紫が何やら気になることを言った。外の世界というわけでもない…ということは、ここは外の世界ではないのだろうか。

 

「そもそも日本じゃないみたい。時空自体違うみたいよ」

「ってことは、ここには魔物みたいなのがいる可能性もあるってことか?」

「そうね。まあ、妖怪とそんな変わらないわよ」

 

そうだろうか。

前にミキに拉致られて魔物討伐をしたことがあるが、あれは妖怪とは全く違うものだと思う。妖怪はまだなんとか理解ができる範疇なのだが、魔物は違う。あれは理解を越えたものだ。

まあ、紫とかにかかればそんな魔物も相手にはならないだろうけどな。

 

「さて、定晴も一緒に遊びましょー!」

 

突然足元が消えて、スキマが開いた。

 

「きゃあっ!」

「ひゃっ!」

 

そして、次の瞬間には海に落とされていた。

ユズとルーミアのところに落ちてしまったようだ。急に落ちてきたことで二人を驚かせてしまったみたいだ。

更に俺の上から紫が降ってくる。

 

「受け止めて定晴ー!」

 

取り敢えず回避。紫は海にたたきつけられた。

 

「ブクブク……ひっどーい!」

「そも急に落とす方が悪い」

 

俺は紫に文句を言いつつ、ルーミアたちの様子を見る。どうやらユズは一人でもある程度泳げるようになったらしい。習得までの期間がとても短い。

 

「定晴に悪いことをするからよ。おしとやかにしてなさい」

「何よ。定晴にはグイグイ行った方がいいのよ」

「逆効果よ」

 

なぜか紫とルーミアが喧嘩を始めた。この二人、思いのほか仲が悪いんだよな。

 

「ユズ、代わりに俺と遊ぶか」

「わあ、嬉しいです」

 

ユズが泳げるようになったので、今度は潜ることを教えることにする。俺はミキから貰ったものの一つであるゴーグルをユズに渡して、一緒に潜る。海の中はきれいだから、こうやって潜るのも楽しいだろう。

早速潜ってみると…なんか俺の知らない魚が泳いでいる。

なんか顔側の半分は魚なのに、後ろはタコみたいになっている。なんだろう…キメラかな…

 

『魚ってすごいですね』

『あれを魚と認識するのは些か…』

 

式神専用念話で海中でもユズと会話がスムーズにできる。

ユズが魚に対しての知識を歪ませないように、あとで外の世界からちゃんとした魚を買ってこよう。あんなキメラみたいな魚いませんからね。

 

「ふぅ…」

「息は大丈夫か」

「大丈夫です。肺活量が大切ですね…」

 

今日初めて泳ぐというのに、こんなに泳げるのはすごいな。もしかして泳ぐことに関する妖怪だったりするのだろうか…

少なくとも人魚みたいな妖怪ではないのは確かだけど…結構海の妖怪も多いから分からんな。

 

「ちょっと!私を置いて遊ばないでよ!」

「待ちなさい紫!」

 

ルーミアと喧嘩していた紫が飛び込んできた。

ずっと仕事をしていたからか、今日の紫はテンションが高いな。取り敢えず紫を回避する。

 

「ブクブク……」

 

沈む紫を見ながら、海ってこんなんだっけと思うのだった。

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