東方十能力   作:nite

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三百三十八話 花観光

今日の俺は外にいる。夏だからと言って全く外に出ないというのはあまりよろしくないことであり、不健康だ。

まあ、今日は呼ばれたから外の出ただけなのだけど。

 

「飲み物を用意しておいて正解だったな」

 

先日の海水浴でも思ったが、やはりこの時期の外は暑い。俺は外の世界の色んなところで活動したが、夏という時期はあまり仕事にも身が入らない時期だったのは確かだ。

特に現場作業のような仕事の場合は、こっそり身体強化を使うくらいには疲弊がすごかった。再生の力ではスタミナは回復しないのだ。

 

「お、見えた。見事なものだな」

 

俺が外の世界での出来事に思いをはせていたら、目的地が見えてきた。

広い敷地に黄色い花が所せましと並んでいる…そう、太陽の花畑である。幽香に誘われて、この太陽の花畑まで飛んできたのだ。

 

「こっちよー」!

 

花畑の端っこの方に幽香がいて、こちらに手を振っている。俺は花に影響がないように風をなくして、霊力だけで着陸する。

ルーミアに教わった霊力だけで浮かぶ技だが、上昇と下降くらいしかできず、横移動はとっても遅い。本来は霊力だけでも移動できるようになった上で、風による加速をするのがいいらしいのだが、まだその域までは達していないのである。

閑話休題。

 

「久しぶりね定晴」

「確かにそうだな…最後に会ったのも随分と前か」

 

俺はしばらく魔界で鍛錬をしていたし、帰ってきてからもこっちに来ることは中々なかったので、幽香と会うのは魔界に行く前振りということになる。

その間に、この太陽の花畑はこうして向日葵が咲き誇る花畑となったのだろう。

 

「先日ミキによる強制海水浴があったんだが、幽香のところには来なかったのか?」

「来たけど追っ払ったわ。私にとってはあまり海は珍しくないし…それに、海に行くなら定晴と二人っきりがいいもの」

 

こちらを見てほほ笑む幽香。まるで少女のような笑顔であり、いつもの幽香からは感じない雰囲気を感じて…ついでに違和感も覚えた。

 

「ミキを追い払ったのか?どうやって?」

「…秘密よ」

 

うーむ、幽香は確かに妖怪の中ではとても強いが、強いだけではミキは追い払えない。なんせ、あっちはほとんどの攻撃をガードする上に超規模超火力の技を持っているのだ。幽香では追い払えないような気がするが…

もしかして、何かしら弱みを握っているのだろう。あのミキが弱みを握られることなんてあまりないと思うんだが…まあ、そこは幽香とミキのみぞ知るといったところか。

 

「それで…どう、この花畑!今年もこの子たちは元気に育ってくれたわ」

「見ていて壮観だ。空からもとてもきれいに見えたぞ」

「うふふ、ありがとう」

 

幽香は、花々をまるで自分の子供のように扱う。そして、花が褒められたら幽香も嬉しそうにするのだ。

花の妖怪として、フラワーマスターとしての名を体で表現している。名は体を表すとはこのことか。

 

「一応向日葵以外も咲いてるから案内するわ」

「よろしく頼む」

 

俺は幽香ほどではないけれど、花に関する知識がある。何でも屋をしていた頃に、植物に関する依頼も多かったのだ。俺の仕事はどちらかといえば危ない仕事が来るので、花よりも薬草・毒草の知識の方が多いけどな。

 

「こっちにあるのが桔梗よ。そしてあっちがアジサイ」

「色んな色で育ててるんだな」

「ええ、見栄えがいいでしょ」

 

向日葵は黄色一色だったが、こちらは様々な色の花が咲いており、とてもカラフルだ。向日葵畑は圧巻といった感じだったが、こちらは感嘆といった感じ。

折角なので、幻空に入れていたカメラで写真を撮る。全く同じに咲く花などないので、この風景は今ここでしか見れないのだ。撮影をしておく価値は十分にある。

 

「カメラなんて持ってるのね」

「便利アイテムは幻空に入れてるんだ」

「いいわね。私もそれがあれば色々片付けたいものがあるんだけど…」

 

幻空は倉庫ではないが…とはいえ、いつでも取り出すことのできるポケットがあるというのはとても便利なものだ。

普通には持てない大きさのものでも容易に持ち運ぶことができて、言うなればこれは動物たちの森のポケットのような…あっちはジンベイザメとか収納してるし俺よりもすごいかもな。

 

「そうだ、幽香も一緒に撮ってやるよ」

「あら、じゃあ…」

 

幽香が画角に入ってくる。幽香が育てたというのがとても分かりやすい。

幽香はあまり撮影ということ自体になれていないのか、顔がこわばっているし姿勢もぎこちない。

 

「もっと自然に立っていればいいよ」

「こ、こうかしら」

 

うーむ、顔がこわばったままだ。別にこの状態で撮ってもいいのだけど…やはり、ちゃんとかわいい幽香を撮影したいところ。

 

「そうだ、定晴もこっちに来なさいよ」

「え、なんでだ?」

「そっち方が自然に写れるわ」

 

理由は分からないが、幽香がそういうならそうするか。

俺はカメラの三脚を幻空から取り出して、タイマーをセットする。そして幽香の隣に並ぶ。

 

「えっと…ん…」

 

俺が隣に並ぶと、幽香は距離を詰めてきた。画角は広めに取っているので、そんなに密着する必要もないのだけど…

ただ、幽香の顔をみるととても自然な笑顔だったので、俺は何も言わずにカメラに映ることにした。幽香が笑えているのであれば別にいい。それに、写真撮影なんてどう撮ってもいいのだから。

 

「うん、いい感じだ」

「そうね。とってもいい」

 

俺はカメラを幻空に片づけて、幽香の先導で道を歩く。

どうやら太陽の花畑にある道も幽香がある程度舗装したものらしい。ただ均されただけの道ではあるものの、畦道が多い幻想郷においては結構歩きやすい。

 

「花をきれいに見せるなら、空間そのものをきれいにしないとね」

「流石フラワーマスターだな」

 

そのまま道なりに歩いていたら、幽香の家に到着した。太陽の花畑の奥にある家だ。

幽香が家の鍵を開けていると、横から誰かの声がした。

 

「幽香ー、もしかしてデートってやつー?」

「な、メディスン!」

 

花の間から現れたのは、メディスン・メランコリー。彼女と会うときは基本的にここなんだけど、もしかしてここらへんに住んでいるのだろうか。

メディスンを見た幽香は、とっても慌てた様子で話す。

 

「今日は忙しいから遊べないって言ったでしょ!?」

「別に幽香と遊べないだけで、私がここで遊ぶのは禁止されてないもーん」

 

幽香の様子を見るに、メディスンにはあまり見られたくなかったようである。別に見られても損をするわけでもあるまいに…

 

「それで、あなたが幽香の彼氏ってことね」

「彼氏ではないが…」

「そ、そうよ!だから別にデートとかそういうわけじゃないし、普通に遊んでるだけだから、えっと、うぅ…」

 

珍しく幽香が赤くなっている。

ふむ…どうやら幽香は、俺といるところを見られたくなかったらしい。理由は恥ずかしいから。

幽香は俺に告白をしていて、俺は返事ができていない状況ではあるが、確かに俺と幽香が並んで歩いていたらデートのようにも見えるかもしれない。

 

「ほら、早く入って!」

 

幽香に腕を引っ張られ、強引に家の中に連れ込まれる。

後ろでメディスンの「楽しんでー」という声と共に扉は閉まった。顔を真っ赤にしている幽香がとてもかわいかった。




後日…

幽香「見なさい、この写真を」
ルーミア「ずるいわ!」
紫「そうよそうよ!」
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