東方十能力   作:nite

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三百四十二話 厄集めと厄祓い

にとりに示された山にたどり着く。

妖怪の山に比べると、少し標高は低いものの、岩肌はごつごつしており、作業員らしき服を着ている妖怪がちらほらいる。河童ばかりなので、河童専用の採掘場なのかな?

 

「一応俺たちもヘルメットくらい被っておくか」

 

幻空の中にあるヘルメットを被り、予備を雛にも被せる。

身体強化を使えば岩が降ってきても死にはしないが、不慮の事故だと死ぬからな。

 

「これって定晴さんの…」

「それは予備のホームセンターで買ったやつだ。使ったことはないけど」

「そっか…」

 

ヘルメットは汗とか匂いが気になるからな。言うて幻空のおかげで忘れ物をすることも、事故に遭ったこともないので予備を使ったことはない。

 

近くの河童に話しかけて、どこで鉱石が掘れるかを尋ねる。どうやらこの山全体が鉱山となっているらしく、どこの坑道からでも鉱石を掘ることができるらしい。

 

「何で掘るの?」

「そりゃピッケルだ」

 

まあドリルもあるけど。状況を見て、ドリルじゃないといけなさそうならドリルを使おう。

 

「雛はそういう能力じゃないから大丈夫だろうけど、火は使わないようにな」

「大丈夫。火を生み出す能力はないから」

 

一酸化炭素中毒になる可能性もあるし、坑道自体が吹き飛ぶ可能性もあるからな。

クラウンピースがいたら、火を消してもらうしかないだろうな。魔法使いたちも、火の魔術を使わないように頼むしかない。

閑話休題。

近くの坑道から中に進む。照明は、河童たちの技術によって光る石が使われているようだ。燃料的なものはないけれど、石が光ってるのは永続的なものなのかな。

 

「意外と明るいのね」

「ああ、河童たちのおかげだな」

 

そもそも、ここの坑道を掘ったのは河童たちだろうから、照明の管理も当然だろうけど。

坑道の中を物珍しそうに眺めていた雛だったが、途中から表情が曇り始めた。

 

「どうした?」

「ここ、とっても厄が強いわ。近々事故が起きるかも」

 

雛の目線だと、そこら中に濃い厄があるらしい。それこそ、不用意な行動をしたら約束された偶然により必ず事故が起きるほどに。

 

「どうすればいいんだ?」

「私たちが歩いてるだけで大丈夫よ。私が歩いて厄を集めて、定晴さんに浄化してもらうから」

 

どうやら、俺が歩いているだけでは浄化しきれないらしい。雛に集めてもらって、初めて浄化されるということだ。

やはりそういったところは厄神様的な役割があるということだろう。

 

「因みに俺が全力で浄化したら祓えるか?」

「祓えるけど、洞窟内の河童たちも浄化されると思うわ」

 

でしょうね。試しに言ってみただけだ。

ある程度奥へと進むと、壁や床に少しずつ黒いものが混じるようになってきた。これが鉱石だろうか。

 

「本当にピッケルが入ってるのね」

「殺傷性も高いからな」

 

俺は幻空から取り出して、慎重に鉱石を掘る。

アニメや漫画みたいなカンカン叩くような掘り方では、鉱石に傷がついてしまう上に、細かい欠片しか手に入れることができない。あれはあくまで周囲の岩を掘るための方法であり、鉱石を掘るのであれば少しずつ掘るのである。

それなりに掘れたら、小さめのハンマーと杭を使って鉱石を完全に掘り出す。手慣れた動作で掘り出せば、数分で鉱石を取り出すことができた。

 

「これが鉱石なのね…」

「原石は雛たちも見ることはないのか?」

「たまに河童たちが運んでいるところを見るくらいね」

 

原石からまた精錬しなければ金属として扱えないが、それはにとりがやるだろう。

俺は掘り出した鉱石を幻空に片づけて、別の鉱石を掘る。

 

「いくらくらい掘ればいいんだろうな」

「さあ?採れるだけ採っちゃえ」

 

お茶目にそんなことを言う雛。

まあ掘りすぎたところで、俺が使わなかった分の鉱石はにとりたちが管理して使うだろうから無駄になることはないだろう。

俺は今いるところから見えるところにある鉱石をどんどん掘っていく。幻想郷の山っていうのはこんなに鉱石が採れるものなのだろうか。

 

「因みにこの鉱石の名前って知ってるか?」

「なんだったかしら…アタマンテイト?みたいな…」

 

もしかしてアダマンタイトだろうか。それって幻の金属の一つだったような…いや、だからこそ幻想郷にあるのかもしれない。外の世界で幻想だと思われたものというのは、総じて幻想郷にやってくるから。

アダマンタイトは創作物の世界で、加工が非常に難しいものとして登場することが多い。オリハルコンとかと似たようなものだ。

 

「これを加工する河童の技術…」

「外の世界には河童たちのレーザーとかもないって聞いたけど」

「それもそうか」

 

河童たちは幻想郷でも科学担当のイメージだけど、外の世界の科学とは別の方向に発展している科学だ。

こちらには妖力や霊力などのエネルギーを機械に用いることができるから、発展の仕方が変わるのは仕方ないのだけど、それにしたって幻想的な科学となっている。

 

「これくらい採れば十分だろ」

 

相当な量を採ったので、あとはにとりがなんとかしてくれるだろう。

俺たちは来た道を戻って地上へと向かう。

 

「あんなに採ったのに荷物がないのは楽ね」

「幻空のいいところだ」

 

河童たちが頑張って運んでいるところを横切っていく。申し訳ない気分にもなるが、俺が持っている能力なので仕方ない。

そうして地上に向かっていると、少しだけ地面が揺れた…気がした。

 

「地鳴りか…」

 

俺がそう呟いて、雛の方を見たら、その顔は具合の悪そうな表情をしていた。

 

「大丈夫か、雛。ずっと閉所にいたから気分が悪く…」

「違うわ………今の地鳴り、厄によるものだから」

 

雛の目にははっきり見えたのだ。地鳴りが起きた瞬間の、厄の動きが。

 

「もしかして事故か」

「ええ、もっと地下の方の事故ね」

 

俺たちは地下坑道の構造を知らない。それに、河童たちはこういった事態に慣れているはずだから、俺たちが何かしなくても解決できる可能性が高い。

だが、雛の表情を見ればわかるのだ。

 

「行くか」

「お願い」

 

俺たちは駆け出した。雛の厄の流れを見て、事故現場と思われるところまでできる限り早く。

妖怪は頑丈だ。生き埋めになっても即死することは少ない。だが、苦しいものは苦しいし、そのままだったらいつか死ぬ。

厄によってそんなことが起きたのならば、雛は我慢することができないのだ。だって、彼女は厄を集めて祓う厄神様だから。

 

「あそこ!」

 

ひたすら坑道を降り続けて、とうとう事故現場が見えた。

ずっと繋がっていた坑道が、岩で塞がれているのである。誰も巻き込まれていないのならばそれでいいのだけど…

 

「ありえないんだよな?」

「厄が動いたもの。厄は、人間であっても妖怪であっても悪いことが起きるものだもの」

 

誰かが厄に触れたせいで、この事故は起きたらしい。向こう側なのか、岩の下かは不明だけど、この事故現場の周辺に誰かがいるのは確実だろう。

 

「雛、離れててくれ」

「お願い!」

 

身体強化、全力。

崩落しているので、岩の動かし方を間違えると追加で岩が崩れてくることになる。そうなれば被害が拡大するほか、助けるのにも時間がかかってしまうだろう。

 

「雛、ここらへんの厄を全部集めてくれないか?全部浄化しちゃえば、二次被害が起きる可能性も減るだろう」

「うん!任せて!」

 

雛がパタパタと周囲を走り回っている間に、除去できる岩を除去してしまう。一時的に幻空の中に除去した岩を片付けてしまえば、処理は楽になるだろう。

大きな岩をどかそうかとなったとき、雛が近寄ってきた。

 

「集めたわ!」

 

厄を見ることができない俺でもはっきりと何かあると分かるほどの厄だ。厄が濃すぎて雛の周囲が微妙に歪んで見える。

 

「因みに雛には浄化効くのか?」

「一応私も妖怪の一種だから…」

 

俺の浄化はそこまで強く指向性を持たせて使うことができないので、雛を浄化してしまわないように気を付けよう。

雛の周囲を全力で浄化する。みるみるうちに雛の周囲の歪みがなくなっていく。

 

「なんだかピリピリするわ」

「少しだけ我慢してくれ」

 

厄は雛の周囲を漂っているので、雛を飲み込まない程度の範囲で浄化を使えば雛を浄化せずに厄だけを浄化できるはずだ。

そして、数分浄化すれば、雛の周囲の歪みはまったくなくなった。

 

「流石定晴さんね。もうほとんど厄はないわ!」

「よし、岩を除去しよう」

 

ここからは迅速に、丁寧に。

大きな岩を除去して、幻空に片づけていく。そうすれば、大きな事故もなく岩を除去することができる。

 

「さて…あ、大丈夫かー?」

「ん…わあ、ありがとう盟友!」

 

岩の下には謎の空間があり、そこには一人の河童がいた。

見た感じ、河童の発明の中に空間を作る装置があり、それを使って潰されないように空間を生み出したようだ。

 

「いやぁ、これ使うと岩を掘れなくて…改善の余地ありだなぁ…」

 

河童はブツブツ言いながら、開発の次の段階の構想を練っている。

他にはいないらしいし、これでなんとかなったということでいいだろう。補修に関しては他の河童たちがしてくれるはずだから、幻空の中の岩を開けたところに置いておこう。

 

「雛、帰ろうか」

「ええ」

 

坑道を出て、妖怪の山に戻る。

いやはや、結構時間がかかってしまった。

 

「にとりー」

「お、やっと帰って来たね。同胞を助けてくれたみたいで、私からも感謝を伝えておくよ」

 

俺は幻空の中にずっと入れておいた鉱石をにとりに渡す。

そうすれば、数十分で鉄骨と釘が完成した。俺はそれを幻空の中に片づけて、俺の仕事は終わりだ。

 

「よし、じゃあこれを霖之助に渡せば終わりかな」

「お疲れ様ね」

 

麓まで戻ってきた。今日はずっと雛と一緒にいたな。

 

「楽しかったから、また暇なときは遊びに行くわね」

「それは構わないが…麓にいなくてもいいのか?」

「別に私の持ち場とかじゃないのよ。ただ、流し雛をするのに楽だからここにいるだけで」

 

どうやら雛は結構自由に歩き回れるらしい。なら俺が心配する理由はないか。

 

「それじゃあ、またな」

「またねー!」

 

素材を霖之助に渡して、魔理沙からお金とキノコを貰って家に帰った。

まあまあ大変な仕事だったが…雛と一緒だったし新鮮な気持ちで仕事ができたな。たまには違う同行者と一緒に仕事をするのもいいかもしれないな。

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