東方十能力   作:nite

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三百四十四話 知らない女性

『ユズ!大丈夫!?』

『うう、大丈夫じゃないです…』

 

ルーミアさんとはぐれたところから随分離れてしまいました。このままでは、ルーミアさんと合流するのは難しいです。

私のご主人様である定晴さんなら、私たちの方向がわかるんですけど、式神同士だとほとんど分からないんですよね。真逆に行くことはないけれど、それ以上の成果はないって感じです。

人混みばかりで、立ち止まることもできなくて、どうすればいいでしょうか。定晴さんの方向は分かるので、定晴さんのところに行く方がいいかもしれませんが…

 

「ううぅ…」

 

人が多くて足がすくんでしまいます。人、怖いです。

ふと、建物の間に隙間を発見したのでそこに逃げ込みます。幻想郷とは違うというのがとてもよくわかるんですけど、それと一緒にもう幻想郷に帰りたくなりました。

 

「はぁ…ここで待っていればいいでしょうか…」

 

ルーミアさんには通信で建物の間にいると伝えました。でも、通りからは少し見えにくいから見つけてもらうのにも時間がかかるかもしれませんね。

外の世界の建物はどれも大きいですね。紅魔館のよりも高い建物というのがそこら中に立っていて、空を飛ぶのも大変そうです。外の世界に空を飛べる人がいないのは定晴さんから聞いているので飛びませんけど。

 

「…」

 

建物の間で座っていると、自分がとても小さな存在のような気がしてきますね。いえ、小さい存在ではあるんですけど。

独りぼっちになるのがここまで寂しいとは思いませんでした。定晴さんに会いたいなぁ…

 

「そこの暗い顔をしてる君、大丈夫かな」

「!?」

 

突然の声掛けにびっくりして立ち上がる。

声がした方に目を向けると、そこにはまるで魔法使いのような、それでいて怪しい恰好をした女性が立っています。

 

「迷子かな?」

「いえ、その、待ってます」

 

確かに、ここで一人で座っていたら迷子と間違われてもおかしくありません。そうでなくても、こんなところで座り込んでいるのであれば何かしら事情があると思うのが普通です。

私は事情を説明してどこかへ行ってもらおうとしますが、その前に女性からの言葉で私は口を閉ざすことになります。

 

「待ってるって言うのは…妖怪かな?」

 

私が妖怪であるとこを見抜いている?だとしたら、彼女は妖怪のことを知っている、ないし妖怪のことを探知できるくらいに強いってことでしょうか。

定晴さんから聞いた話に、未だに外の世界で活動している陰陽師のことを聞きました。現代科学が発展して出番が少なくなっても、大妖怪と対等に渡り合える陰陽師というのは存在すると。

まさか彼女がそうなのでしょうか。

 

「ああ待って待って。別に敵じゃないよ。こっちで妖怪に会うのが珍しかっただけだから」

「…」

 

うう、早くルーミアさん来てください。突然知らない人に話しかけられたときの対応の仕方なんて知らないですよ。

 

「写真撮っていい?まあ別に許されなくても撮るけど」

 

パシャパシャと私の写真を撮る女性。私の体って写真に映るんでしょうか。

私が怯えながらルーミアさんを待っていたら、後ろからやっと声が聞こえた。

 

「ユズ、大丈夫?」

「だ、大、じょ、ぶじゃ、ない、です」

 

いつも以上に片言になってしまう私の言葉。知らない人に話しかけられること自体が恐怖体験になってしまいました。やっぱり知らない人は怖い。

 

「……離れなさい。容赦しないわよ」

「うーん、怖いなぁ…ばいばーい」

 

そのままビルの奥まで走って行った女性。一体何だったのだろうか。

 

「ごめんなさい」

「まあユズが無事ならよかったわ」

 

まさか迷子になるのに加えて知らない人と会話しないといけなくなるなんて思いませんでした。

幻想郷ではあまり一人で行動することがないから、一人っきりで対応する方法なんて知りません。もっと一人でも行動できるように練習をしておくべきでしょうか。

ルーミアさんは女性が去って行った方向を見ながら呟きました。

 

「あの子は宇佐美董子、幻想郷にも来るわよ」

「え!?知り、合いなんで、すか?」

「あまり会話はしないわよ」

 

というよりも、幻想郷に来るって、そんな簡単に幻想郷って跨げるようなものですっけ?

 

「あの子はちょっと特殊なのよ。ちゃんと人間なんだけど、半ドッペルゲンガーみたいな子なのよね。どちらかといえばこっち側の人間なのは間違いないわ」

 

よくわかりません。使っている道具とかは現代っぽいものでしたし、よくわからないことだらけです。

ルーミアさんは話を切り上げて、私の手を引いて定晴さんのもとへ連れて行ってくれました。定晴さんの姿を見ると安堵で力が抜けます。

今後は外の世界に行くときは定晴さんについていく方がいいかもしれません。ご主人様の場所なら式神は分かりますので。

 

「何か問題があったのか?」

「些細なことよ。社会勉強みたいな」

 

社会勉強、もうしたくありませんね。

 


 

ユズが消沈しているので、あとでメンタルケアをしておこう。流石に知らない土地は怖かったのかもしれない。

 

「じゃあ料理しに行こうか」

「はーい」

「…はい」

 

必要な道具は揃えられたからな。思ったよりも値段が張ってびっくりした。俺が幻想郷に行ったときに比べて明らかに物価が上がっているような気がしてならん。

ついたのは小さめの倉庫。今は使っていないうえに、中にあったものは総じて紫に幻想郷に送ってもらっているので中はがらんとしている。

 

「じゃあルーミアとユズはこれとこれを混ぜてくれ」

 

ティラミスの材料は特殊なものも多いが、実のところ簡単なレシピというのは存在する。折角なら本格的に作るものの、簡略化できるところは全部楽に終わらせるぞ。

さささっと料理を終わらせてしまえば、目の前には二つの大き目のティラミスが。

 

「あれ、なんで二つなんですか?」

「一つは八雲家、もう一つは俺たちが食べるものだな」

 

だって、俺たちが食べないのはもったいないし。そのためにルーミアたちに買ってもらった材料は多めだった。

 

「スイーツできたー!?」

「ちょうどできたよ。持ってけ」

「はーい!」

 

紫はティラミスをどちらもスキマの中に収納して…

 

「おい!片方は俺たちのだ!」

「キャー!」

 

まったく、大きさでどう見ても一人用ではないだろうに。

こいつの食い意地に関しては藍に一言伝えておいた方がいいかもしれないな。

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