東方十能力   作:nite

35 / 503
三十四話 対時空神

俺が部屋で本を読みながらくつろいでいたら目の前の椅子に突然ミキが現れた。まるでずっと座っていたかのような様相だけど、転移してきた瞬間を見ているのでそんなわけがない。

紫と似たようなものなので驚くことはない。というよりも、これで驚いていたらこいつと付き合うことなど絶対に出来ない。

 

「どうもー」

「どうした」

 

いつも通り剣を背負ったままのミキは、周囲をキョロキョロと見た後に誰もいないことを確認すると、前置きをすっ飛ばして用件をすぐに伝えてきた。分かりやすくてありがたい。

 

「たまには戦闘しようぜ!」

「弾幕ごっこか?」

「いや、普通に肉体を使った勝負だ」

 

昔から俺とミキは度々戦闘訓練をしてきた。俺の剣術や魔術は、こいつが教えてくれたようなものである。ミキは蘇生も片手間でできるので、殺し合いの範疇になろうとも安心して戦えるのだ。

幻想郷に来てからは殺し合いとも…いや、腕は一度吹き飛んでいるけれど死にはしなかったので、たまにはこういうこともいいだろう。俺は本を置いて立ち上がり、ミキに連れられ外に出た。

 

「そんじゃ先に倒れたら負けな」

「了解」

 

周囲に被害が及ばないようにミキが大きく結界を張る。周囲の森も合わせて半径五百メートルくらいが囲われており、戦闘をするには十分な広さだ。俺は既に輝剣を召喚し右手に、家宝の一振りを左手に装備している。

俺と向かい合う形で立っていたミキは、俺が構えると同時にその腕を振りながら魔法を放ってきた。

 

「合作【パーフェクトスパーク】!」

 

俺の周囲、全方位に魔方陣が出現すると同時に極太レーザーが放たれた。その一本一本が魔理沙のマスタースパークとほぼ同程度の威力を持っており、直撃すればそれだけで腕の一本程度なら吹き飛ぶことだろう。

 

「【完全結界】」

 

しかし、こいつが奇襲を仕掛けてくることくらいはわかっているので、先んじて結界を展開している。人一人分しか守ることができないが、例え弾道ミサイルが直撃したとしても破壊されない防御力を持つ結界が、ミキの魔法を完全に防ぐ。

 

「それって魔理沙のマスタースパークとチルノのパーフェクトフリーズを合わせたやつだろ」

「そうだな。だから題が合作なんだ」

 

ミキは一度見たものを模倣するという技を使える。どうやら時空神としての権能で空間模倣というらしいのだが、詳しい理屈はよく分からん。こいつに理屈を求めては負けなのだ。知っていることと言えば、模倣したやつの威力が落ちるといったことのみ。

実はチルノと一度戦ったことがある俺は、チルノのスペルカードを知っていた。弾幕勝負ではないものの、その時見たチルノのスペカと同じ美しさがミキの魔法にはあった。

ミキは俺から離れるようにバックステップをしたあとに詠唱を始める。俺は輝剣を飛ばして詠唱を中断できないか試みたが輝剣が届くより先に詠唱は完了した。

 

「崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!エクスプロージョン!」

 

ありえないほどの破壊力を持つ爆裂が、俺と結界を襲う。その暴力的な衝撃は、俺の完全結界にヒビを入れた。

どうやら弾道ミサイルよりも威力があるようだ。それを人の身で撃てるのは恐ろしいことだが…多分これも模倣したものだろう。となれば、これを撃てる誰かがどこかにいるということだが…

 

「防戦一方じゃだめだなぁ!」

 

風による加速に、身体強化も上乗せ。さらに、技の出が早い剣技を持って、一瞬にしてミキへと肉薄する。

ミキはそれを平然と受け止める。俺が二撃、三撃と放ってもそれをミキは確実にその二振りで受け止めた。

俺の剣術の師はミキであり、俺は未だに超えることができていない。剣術勝負で勝てる見込みはないのだ。なので、小手先の色々をしていくほかあるまい。

 

「魔術【火炎焦熱】!燃えろ!」

 

詠唱なしで大規模魔術を行使する。本来は俺が制御できるような代物ではないのだけど、今に限っては制御をする必要すらない。ミキが結界により周囲を保護しているからこそできる、破れかぶれの一撃だ。

だが、俺の魔術がミキまで届く前に、ミキは腕を一振り。

 

「縛道の八十一【断空】…」

 

俺の魔術が一瞬で消えうせる。きっと対魔術の対抗魔法か何かだろう。この手の対抗魔法は、それ以上の威力を持つ魔法で攻撃しなければ基本攻撃が届くことはない。

俺が攻めあぐねている間に、ミキは右手を突き出し一言。

 

「ファイアボルト!」

「ぐっ…!」

 

速度の速い炎の弾が俺に向かって飛んでくる。俺はそれをギリギリ結界で受け止めることに成功するが、衝撃で少しだけ後ろに吹き飛ばされる。

お返しとばかりに俺は右手を突き出し、宣言。

 

「恋符【マスタースパーク】!」

 

これは魔理沙のスペルなのだが、秘密は俺の能力にある。能力の一つに模写というものがあるのだが、その効果は登録した技を瞬時に発動するというもの。同時に三つまで登録でき、登録した技はいつでも使える。模写ができる条件は、俺が直接見たものであること。映像などで見ても模写はできないのだ。

本来はミニ八卦炉を使わなければ安定しないこの技を、模写を使うことで素手で使うことができるのだ。

 

「縛道の八十一【断空】!」

 

またもやミキが右腕を振るう。だが、意外にもマスタースパークはかき消されることなくミキへと直撃した。衝撃でミキの体がくの字に曲がり、吹き飛ばされる。

どうやらマスタースパークは俺の魔術よりも威力が高いようだ。なんだか少し悔しいな…

 

「油断禁物ってな」

「な!?」

 

俺が思考していると、背後から突然ミキの声がした。よくよく感じてみると魔力の残滓があり、吹き飛ばされたあとに空間転移により俺の背後まで来たということがわかる。

ミキは俺が反応をする前に、その二振りを振りかぶり俺のことを切り刻んだ。

 

「スターバスト・ストリーム!」

 

ミキの持つ二振りが超高速の連撃となって俺の背中に叩き込まれる。結界を張ることも、剣で防ぐこともできないままに俺はその連撃をすべてもろに食らうことになる。

そしてとどめとばかりに打ち込まれた剣の突きが俺の心臓を貫き、血が噴き出る。俺の意識は一瞬にして暗闇に沈み…そして目覚めた。傷がすべて癒えている。

 

「俺の勝ちで良いか?」

「ああ、良いよ」

 

ミキによる蘇生だ。いつの間にか上空には暖かな光を放つ機械が浮いており、そこから出る光がすべてのもとを治癒している。

負けてしまった…と俺が項垂れいると、怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「こらー!ミキ、やりすぎー!」

「なんだ紫、見てたのか」

 

スキマから顔を出した紫がミキのことを叱責する。まあ、命が一度尽きているのでやりすぎといえばやりすぎではあるけれど…

こいつに勝つには少々重い代償がある奥の手を使うしかないのだ。それでも、確実に勝てるというわけではなく完璧に刺さったときだけだが。

紫に怒られながらもへらへらしているミキ。だが、こいつに勝てるようになるのはいつになるのか。正々堂々勝ちたいところだが…今のところその未来は見えそうにない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。