東方十能力   作:nite

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三百五十四話 ドタキャン

今日の戦いの場は紅魔館。俺の相手がフランで、ルーミアたちの相手がレミリアだ。

主であるレミリアがルーミアたちの相手をするのは不思議な感じだが、フランのほうが殺し合い向きな能力を持っているので、こういうことになったのだろう。

そもそも、ルーミアたちはキュッとされたらどうしようもない。無効化を使わないと戦えないのだ。

 

「いらっしゃいませ、定晴様」

「よう咲夜」

 

出迎えはいつもの通り咲夜。ここからレミリアのところまで行くのがいつもの流れである。

美鈴?寝てたよ。

 

「…定晴様、最近紅魔館に来てくださいませんよね」

「いやー、色々と忙しくてな」

 

特にここ数か月はあまり休む暇もなくて、時間が取れなかったのだ。ずっと来ないでいるとフランが拗ねて突撃してくるので、一応たまには来ていたのだけど、以前に比べたら頻度が減っているのだ明白だ。

俺の無効化が幻想郷に影響を与えているって聞いてから、随分と忙しくなったものだ。

 

「私、定晴様に料理を教えてほしいのですけれど」

「あー、フランが疲れて寝たらな」

 

妙に拗ねたような口調で言う咲夜。

紅魔館に来るときは、基本的にフランの相手をするために来ているので、咲夜たちと関わる回数は少ないのだ。

フランが疲れ切るというのは中々ないのだけど、まあそれを期待するしかあるまい。

咲夜と雑談しながら歩けば、すぐに応接間の部屋の前に来た。応接間と言っても、謁見の間みたいな構造なんだがな。

 

「お嬢様、お三方を連れて参りました」

「入って頂戴」

 

レミリアの声で中に入ると、そこにはレミリアと…あれ、レミリアだけ?

 

「レミリア、フランはどうした?」

「…うーん」

 

俺が訊くと、レミリアは悩むような表情を見せた。

しばらく頭を抱えたあと、レミリアは口を開いた。

 

「今日の貴方の相手は私よ、定晴。式神の子たちは咲夜が相手をするわ」

「それはいいが…フランはどうしたんだ?」

 

突然の相手変更。体調不良だろうか。必ずしも今日である必要があるわけではないので、別日に変更したほうがいいなら変えるのだけど…

 

「その…フランがあなたと戦いたくないって」

「はい?」

 

あの戦い大好きなじゃじゃ馬吸血鬼が、戦いたくないだと?

 

「いえ、その、殺し合いはできないって言ってて」

「フランって殺し合い初めて?そんなわけないだろ。フランの部屋に絶妙に死の気配感じたぞ」

 

フランの部屋に行ったことはあるが、一見きれいな室内であっても死の気配は残っていた。言語化は難しいのだけど、過去に誰かが死んだことがあると分かるのである。

実際、フランは狂気に陥っている状態だと人を殺すのも厭わないような性格に豹変しているはずだ。まあ素のフランはいい子なので、狂気がない状態で戦いたくないというのであればまあ分からないこともないのだけど…

 

「そのー…貴方とは殺し合いできないって」

「どういうことだ?」

「あー、分かった。定晴、戦いを始めるのだー」

 

なぜかルーミアが理解を示して戦いを促してくる。何その理解力。

 

「そういうわけなので、僭越ながら私も参戦させていただきます」

 

咲夜が恭しくお辞儀をする。咲夜は時間を操ることができて、まともに殺し合いをすると確実に負けるような相手だが…

 

「ルーミアたち、頑張れよ」

 

きっと二人なら頑張ってくれるはずだ。勝てるかどうかは分からないが、まあ主である俺は勝ちを信じよう。

 

「定晴、私たちは紅魔館の上空で戦うわ。咲夜は庭ね」

「了解」

 

実は、現在時刻は夜の九時。レミリアたち吸血鬼が存分に戦うのであれば、昼間ではなくこの時間のほうがいいだろうと時間を変えたのだ。

若干ユズが眠そうにしていたが、戦いの前の緊張感で今では意識もはっきりとしている。この戦いが終わったらゆっくり休ませないとな。

 

「ふふ、本気の戦いは久しぶりだから楽しみね」

 


 

紅魔館の外で魔力やら妖力やらが高まってぶつかりあっているのを感じる。どうやら前から言われていた『殺し合い』が始まったらしい。

 

「フラン、本当に行かなくてよかったの?」

「ううぅ…」

 

いつも通り大図書館で本を読みながら、すぐ近くで丸くなっているフランを見る。

『殺し合い』の話を賢者から受けたときは、定晴と一緒に遊べるってワクワクしていたそうなのだけど…昨日になって、定晴と殺し合いなんてできないと言い出したのだ。

 

「お兄様のこと攻撃するって考えたら、苦しくなって…」

 

一昨日まで色々とイメージトレーニングをしていたらしい。その途中で、好きな相手を殺しにかかるのは無理だとなってしまったらしい。

私たちからすると、フランは何がなんでも遊ぶし、人殺しも厭わないような性格だと思っていたんだけど…いつの間にか、フランはすっかり乙女な女の子になっていたらしい。恋は女の子を成長させるって何かの小説で読んだけれど…実例が近くにあると参考資料としてちょうどいいわね。

 

「せめて、戦いを見に行ったりしないの?」

「お姉さまがボロボロになってるのも、お兄様がボロボロになってるのも見たくないもの…」

 

異性として定晴のことを好いているフランは、レミィのことだってとても好きなのだ。そんな二人が殺し合いをしていて、どちらかは負けてしまう以上、フランにとっては苦しい光景が待っている。そう考えれば確かに見に行きたくなくなるか。

ちなみに、私は紅魔館の外に置いておいた映像魔方陣を通して今もリアルタイムで戦いをチェックしている。幻想郷の強者同士の殺し合いなんて今の幻想郷じゃそうそう見れないので、参考資料として録画しておくのはとても重要なのだ。

 

「…おすすめの本があるんだけど、読む?」

「読む…」

 

とはいえずっとここで丸まっていても仕方ないし、折角だから本を読ませよう。小悪魔に持ってこさせた恋愛小説だ。

読書家としてこういうのも読んだことがあるけれど、恋をしたことがない私とりもフランのほうが楽しめるだろう。ついでに、途中で告白の描写もあるのでフランも一歩踏み出せるように…

フランが本を読み始めたのを後目に、戦いの映像に視線を戻す。それにしても…レミィ、運動不足じゃない?

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