東方十能力   作:nite

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三百五十五話 ルナ弾幕ダイアル

「急遽相手をすることになったわけですが…お嬢様から何も制限は受けていないので、全力でいかせていただきます」

「よ、よろしくお願いします」

 

美人だけど、なんだか怖そうなメイドさんですね。

この紅魔館という館のメイド長らしいのですが、私の知ってるメイドってそんなに戦闘力高いものじゃないんですけど…

 

「うーん、どうすれば…」

 

でもルーミアさんはとても悩んでいますし、警戒しています。レミリアさんの代わりではありますが、こうして候補に挙がってくるのですから、きっとお強い方なのでしょう。

先日の神様たちを相手にした戦いでは、私たちはどちらも敗北してしまっています。絶対に勝てる相手ではなく、どちらかと言えば負ける可能性のほうが高い相手との戦いだとルーミアさんは前に言っていましたが…やはり練習とはいえ、戦うのであれば勝ちたいです。

 

「ルーミアさん、どういう作戦で行きますか?」

 

私はこっそりとルーミアさんに耳打ちをして、作戦会議を試みます。しかし、ルーミアさんから返ってきた答えはとても苦しいものでした。

 

「作戦なんて考えても無駄よ。どちらかと言えば、これは臨機応変に戦えるのかを訓練する場だわ」

「どういうことですか?」

「あいつの能力は時を操るものよ。気が付いたら後ろにいるなんてザラだし…」

 

時を…操る…?

 

「作戦会議は終わりですか?」

「作戦は…無駄…」

「ふふ、では行きますね」

 

開戦の合図、それと同時に…

 

「ふえぇっ!?」

 

目の前にナイフの壁!

 

「このっ」

 

私は驚きすぎて何もできませんでしたが、ルーミアさんが咄嗟に壁を作ってくれました。

しかし、今のルーミアさんは封印されている状態。壁は堅牢と言えるほどのものではなく、何本ものナイフが壁を破って私たちに襲い掛かります。

なんとか私が壁を補強して立て直しますが…

 

「後ろ!」

 

ルーミアさんの声で振り向くと、そこには同じくナイフの壁。

ルーミアさんはもうこれ以上壁を展開できませんし、私には結界を張るほどの力はありません。どうにかして回避できないと、これだけで落ちてしまいます。

 

「うぐうっ…」

 

ですが、私にはそこまで色々できるほどの技量はありません。ナイフを何本も受けて、腕は血だらけ。ふらついて、今にも落ちてしまいそう。

 

「ふふ、まだまだ序の口ですよ。大丈夫ですか?」

「咲夜、あなた意外とそういう趣味だったりするわけ?」

「そ、それは心外です!殺し合いでいいと言うから、私だってこうして…」

 

ルーミアさんの言葉に焦る咲夜さん。

ただ、そうして感情を出す余裕があるほどに咲夜さんは余裕。私は血だらけだけど、ルーミアさんも軽くはない傷を既に負っています。時を操る能力とはここまで強いものなんですね…

 

「まったく…回復する時間をあげましょうか?」

「結構よ。ちょっとびっくりしただけなんだから」

 

私たちは妖怪。少し時間があれば、すぐに回復することができます。

しかし、それではいけません。これは殺し合いであり、回復する余裕なんてないような戦いを再現しなければいけないんですから。

でも、私はもう寝たいです。

 

「そちらの子がもうフラフラですわよ」

「ユズ、大丈夫?」

「大丈夫じゃ、ないです」

 

頑張って回復しようとしてみますが、私は大妖怪というわけではないので、妖力もそこまで多くはありません。回復に回せば回すほど、あとの戦闘で使える妖力がなくなっていきます。

 

「無理しないでいいわよ」

「うーん…」

 

実のところ、既に浮くことがギリギリの状態。このまま戦えば本当に死んでしまうかもしれません。

私の状態を見た咲夜さんが思案するような表情を浮かべました。

 

「無理をさせるわけにはいきませんね。では…」

 

次の瞬間、私たちの周囲、全方位にナイフが…

 

「ちょっと聞いてないわ!」

「きゅぅ…」

 


 

「はっ」

 

目が覚めたら、周囲には本棚。

なぜか、私は図書館で眠っていたようです。

 

「あら起きた?妖力量の割に意外と早かったわね」

「あなた、は…」

 

傍には紫色の服を着ている人間…人間?魔力を持っているから、魔理沙さんと同じ魔法使いかな。

 

「私はパチュリー・ノーレッジ。傷が深かったから私の魔法を使っておいたの」

 

私が眠っていたところをよく見ると、私を中心に魔方陣が形成されていて、私に妖力を送っていたらしい。

妖力が回復したおかげで、私の傷の治りが早かったのでしょう。

 

「咲夜、久しぶりではっちゃけちゃったみたい」

「その、ルーミア、さん、は」

「別のところで寝てるから大丈夫よ。あっちは妖力が多かったから魔法は使ってないけど。あと、無理に喋らなくていいわよ。喋るのが苦手なのは私も同じだから」

 

喋るのが苦手というわけではないんですけど…ですが、喋らなくていいのは気が楽です。

パチュリーさんは椅子に座りなおして、本を読み始めました。栞が挟んであったってことは、途中だったんですかね。

しかし、時折近くに置いてある水晶玉に目が移動していて…

 

「あれ、定晴、さん…」

「近くで見るのは危ないから、こうやって遠隔で見るの。あなたも見る?」

「お願い、します」

 

パチュリーさんが水晶に写っていた映像を少し大きくしてくれました。

私たちはすぐに戦いが終わってしまったようですが、定晴さんはいまだに戦っている模様です。

定晴さんもレミリアさんもボロボロで、そろそろ決着がつきそうという場面。レミリアさんの弾幕の濃さもさることながら、それをすべて斬り落とす定晴さんもすごいです。弾幕を斬りながら魔術を使う定晴さんの攻撃がレミリアさんに当たり、その魔術行使の隙をついてレミリアさんの攻撃が定晴さんに当たります。

どちらも少しずつ傷を増やしていく中で、レミリアさんが、大きな槍を生み出しました。水晶越しでもわかるその力にびっくりしていると、定晴さんも輝剣を何本も生み出して、大技を仕掛けるみたいです。

どちらが勝つんでしょうか…

 

「おっと」

「っ!!」

「きゃあ!」

 

水晶の映像が乱れると同時に、大きな揺れが起こりました。どちらが勝ったのか分かりません。

それと、揺れの時に本棚の向こうから声が聞こえました。誰かいるんですかね。

 

「んー…だめね。魔力場が乱れて見れないわ。結果を知るには直接足を運ぶしかないみたい」

「大丈夫、ですかね」

「もう何も感じないから戦闘は終わったみたいよ。フランも来る?」

 

どうやら隣にいたのはフランちゃんのようです。以前紅魔館にお泊りしに来た時に出会った子で、定晴さんのことが好きな良い子です。

 

「いかない…」

「フラン、ちゃん?」

「気にしないで。姉への思いと兄への思いで板挟みになってるだけだから」

 

フランちゃんはレミリアさんも定晴さんも好きなので、ボロボロになってるのを見るのは嫌みたいです。

私も気持ちは分かりますが、式神としてどうなったかは自分の目で確認しないといけません。

 

「行きましょ」

 

パチュリーさんが本を置いて立ち上がります。

まだ紅魔館の構造を把握できているわけではないので、パチュリーさんに置いて行かれないようについていきます。二人っきりで緊張しますが、怖い雰囲気もないので安心です。

しばらく歩いて、やっと庭に出ました。見た目以上にこの館は中が広いんです。

 

「レミィ、どうだった?」

「引き分けた!楽しかったわ!」

 

レミリアさんが、子供のような笑顔で笑います。定晴さんは…あ、いました。ルーミアさんも既にいますね。

 

「定晴、さん」

「おおユズ。大丈夫か?」

「大丈夫、です」

 

話を聞いてみると、どうやら最後の技でどちらも墜落。両方すぐに目が覚めたけれど、墜落しているので引き分けということになったみたいです。

レミリアさん、見た目では侮れないほどに強い力を持っていました。

 

「咲夜ー!色々の準備ー!」

「かしこまりました」

 

レミリアさんが大声を上げると、いつの間にかレミリアさんの隣にいた咲夜さんが一礼。瞬きすると、もういません。

あんなメイドさんにどうやって勝てばいいんですかね。

 

「定晴、あれは私たちと相性が悪いわ」

「みたいだな。次は俺と咲夜で戦ってもいいかもなぁ」

 

これから今日は紅魔館で皆お休みする予定です。

もっと強くならなきゃ…定晴さんに捨てられちゃいます…

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