東方十能力   作:nite

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三百五十九話 未来永劫弾幕斬

私の剣は黒い壁に阻まれた。ルーミアさんの闇だ。

昔のルーミアさんは闇はただ暗いだけのもので、ルーミアさんの視線すらも遮ってしまうせいで弱い妖怪として数えられていましたが…いつの間にか、ルーミアさんは強者へとなってしまっていました。

見た目は幼く見えるとはいえ、既に何百年と生きている妖怪らしいので、強い妖怪であるだろうということは予想していましたが…

 

「斬れぬ…ものなど…!」

 

私がどれだけ斬りつけても、闇の障壁は斬れません。祖父ならば斬ることもできたのでしょうが…私はまだまだ未熟なようです。

私が闇の障壁に阻まれている間に、横からユズさんが攻撃を仕掛けてきたので一時退却。無理に攻めても仕方ないので、少し体勢を立て直します。

 

「ふぅ…」

 

定晴さんは、私の攻撃のバリエーションを増やしてくれました。弾幕を展開し、それを斬ったり混ぜたりするだけではなく…もっと、手数を。

 

「疾っ!」

 

楼観剣をユズさんに振り、同時に弾幕を放つ。そして、その弾幕の中から、白楼剣を突き出す。ユズさんが回避しようとバランスを崩したところで、左足で全力で蹴る!

 

「あぐっ…」

 

ユズさんは後ろに飛んで、近くの壁に叩きつけられました。でもまだ動けるようなので、ここでトドメを刺しておきたい。私は剣をユズさんに向けて振り…そして、闇の障壁に阻まれました。

どうやら、いつの間にかルーミアさんが近くまで来ていたようです。私はまだ動きに無駄がありますね…

 

「体術…」

「元々できたんですよ。弾幕勝負じゃ使わないだけでっ!」

 

ルーミアさんの障壁は固いけれど、全方向をカバーできるわけではない。弾幕を周囲に展開し、ルーミアさんを囲うように動かす。

ルーミアさんはそれでも弾幕の圏内から逃げたけれど、距離を取ることができた。剣術を使うのであれば、距離を取られるというのは悪手と言える。しかし、剣術と体術、そして弾幕を同時に扱える今の私の身であれば、こうして距離をとるのもまた一つ作戦とすることができます。

 

「…厄介」

「ありがとうございます」

 

ルーミアさんは、私の剣を忌々しそうに見つめる。だけど、私だってルーミアさんの闇の障壁を忌々しく思っている。剣士たるもの、そういった感情は表に出さないけれど。

この勝負の中で私がすべきことは、ある程度の溜め時間を作ることだ。定晴さんとの修行の中で、私は何度も自分の持ち味である敏捷性や攻撃力について見直してきた。その中で、やはり私の瞬発性は活かしていくべきだという結論に至った。

少し私が力を溜めることができる時間さえあれば、あの射命丸文の速度すらも上回る速度を出すことができる。その速度で叩きつけることができれば、妖怪のルーミアさんたちであっても一撃で沈めることができるはずだ。

 

「とはいえ…」

 

弾幕をルーミアさんのほうに放ちながら考える。

弾幕勝負の中であれば、比較的作りやすいその時間ですら、この殺し合いの中では中々作りづらい。一瞬でも気を抜いたら、ルーミアさんは私の心臓を目掛けて攻撃をしてくるだろう。

普通の人であればある程度躊躇うであろう全力の攻撃であっても、妖怪のルーミアさんは躊躇なくできるだろう。私の溜め時間なんていう隙を見逃すはずがない。

 

「企みが分かりやすい…」

「…精進します」

 

私の動きで、私が何か企んでいることがバレてしまう。とはいえ、作戦を考えているのはあちらも同じはずだし、そういう意味ではあっちだって企んでいるはずです。

それぞれ、一瞬の隙を探している。先に隙を見せたほうがこの戦いを制するのは両者ともに理解している。

 

「ほら、ユズ、起きて」

「あううぅ…」

 

ルーミアさんに手間取っている間にユズさんが起きてきました。二対一という状況は、ただそれだけで私が不利になってしまうので、どちらかを先に倒してしまいたいところです。

ルーミアさんの障壁は、二人ともを守るには少々小さい様子。ルーミアさんは今回の戦いのために出力を制限されていると聞いたので、もしかしたらいつもであれば二人守ることも余裕なのかもしれませんが、今はそこが一つ隙となります。

いつもと違う感覚というのは、戦いの中で致命的なミスを引き起こします。

ルーミアさんがユズさんを気遣っている間に…

 

「そこっ!」

 

剣を突き出す。敢えて声を出すことで、注意を剣に向ける。

攻撃を与えるタイミングで横から弾幕をぶつける。だが、私の攻撃は面ではなく点なので、ルーミアさんは障壁をピンポイントに展開して、完全に防いだ。

障壁がない部分に向かって全力で蹴りを放つ。やっていることは先ほどと同じなので、ルーミアさんに防がれる。突き出していないもう片方の剣をさらに別のところに突き出して、ルーミアさんの障壁を増やす。

 

「ユズ、防御を!」

 

ルーミアさんとユズさんは防御姿勢になっている。

つまり、攻撃までに少し時間があるのだ。なら、ここを利用しない手はない。

 

「ふぅ…」

 

…先ほど溜め時間と言ったが、定晴さん曰く、溜めとも言えない時間だという。

私の準備はすぐに終わる。ルーミアさんが防御をやめたとき、障壁をなくしたその瞬間が、隙だ。

 

「ふっ!」

 

私は超速で二人に近づいて、私の二振りの剣を全力で振るう。やはり妖怪の力故かルーミアさんは防御をしてくるけれど…足りない。その程度の防御では、私の攻撃は防ぎきれない。

定晴さんと修行をしてきた成果を、ここに!

 

「…甘いわよ。半妖」

 

ユズさんをやった感触を実感したあと、ルーミアさんのほうに振った剣が動かないことに気が付く。

障壁だったはずのルーミアさんの闇は、いつの間にか私の剣を捕まえて完全に止めていた。

 

「捕まえた」

 

ルーミアさんがこちらに妖力を放つ。同時に爆ぜる私の視界。

私は、まだ未熟で…

 


 

「定晴さんとの勝負、楽しかったわ~」

 

人里で、何か食べるものを探しながら夜道を歩く。前は見かけた妖怪の屋台は、私が近づくといなくなってしまうようになっていた。

妖夢は式神二人、特にルーミアに負けてしまって悔しがっていた。まだまだ自分は未熟だと反省しなおして、定晴さんに対してもっと多くの学びを乞いていた。

対する私も定晴さんに負けてしまった。殺し合いなんて久しぶりだったから仕方ないのだけど…女性のお腹に容赦なく蹴りを入れてくるのはいただけないわ。危うく朝食を吐いてしまうかと思ったもの。

 

「でもまあ、いい企画を作ったわね紫も~」

 

ただ一つ思うことは…

 

「戦いを行わせることで定晴への恋心を忘れさせようだなんて、紫も悪い人ね~」

 

 

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