東方十能力   作:nite

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お久しぶりです。やっと少しだけ満足できる戦闘描写ができました


三百六十一話 怪力弾幕乱神

勇儀と戦うのは二度目。萃香とは違って、鬼らしくその筋力で戦うというスタイル。隠し事とか飛び道具とかもなく、ただひたすらに力技となる。

いつもの大きな盃はなく、万全の状態な勇儀は、凄まじい速さで俺に近接する。

 

「せいっ!」

「ぐあっ…」

 

反応に遅れて勇儀の一撃を腹に受ける。

結界を全身に張り巡らせるように張って、身体強化も使い、さらに知っている身体強化系の魔術を自身にかける。しかし、それでも勇儀の一撃を受け止めるには足りない。

俺は足で自らを支えることもできず、後ろへとものすごい勢いで吹き飛ぶ。周囲にいた鬼たちの観客すらも巻き込んで、そのさらに後ろにあった壁へとぶつかる。

意識を失いそうになるのをなんとか耐えて顔をあげると、勇儀が更なる一撃を加えようと突撃してくるのが見えた。痛みを再生でなんとか治しつつ、風を使って上空へ。

 

「燃えろ!」

 

魔術で勇儀の足元を燃やす。鬼に火って効くのかね。

幻想郷の住人は基本的に種族関係なく空を飛べるので、足元を燃やすだけではあまり意味がない。だが、勇儀を相手に地上戦の接近戦を行うことこそ愚の骨頂だ。

勇儀を相手に空中の遠距離戦を行うのが、勝利へのセオリー。鬼からすれば真っ向勝負をしていなくて印象が悪いだろうけど、今回は勝利することを目的としているので仕方ないのだ。

例え腕力が凄まじくとも、足に力を入れることができなければその強さを百パーセント出し切ることはできないだろう。戦場を空に移すだけでも、勇儀相手ならば勝機が見えてくるというものだ。

 

「空は苦手なんだっ!」

 

そう叫びながら勇儀が腕を前に伸ばす。その速度は尋常ではなく、腕を前に出しただけだというのに風圧がこちらに伝わってくる。

勇儀の手からは弾幕が展開され、更に、勇儀自身も突っ込んできた。

地上で戦うときよりも速度は遅いとはいえ、勇儀と近接戦闘はしたくない。魔術を使いながら距離をとりつつ、結界を使って弾幕を処理する。

 

「無駄無駄ぁ!」

 

だが、勇儀は俺が放った魔術の悉くを無視するかのように突破してきて、俺に肉薄する。

魔術を使う姿勢になっていた影響で反応が遅れ、俺は勇儀の拳をもろに受ける。地面に叩きつけるように振るわれた腕は、俺を真下に吹き飛ばす。

 

「っ…出鱈目め!」

 

追撃してこようとしてきた勇儀に向かって、浄化を付与した輝剣を飛ばす。

流石の勇儀といえど、浄化の力が乗った剣を弾くのは難しいらしく、勇儀の動きが止まった隙になんとか体勢を立て直す。もし急所に攻撃されたら、一撃で気絶してしまうだろうことは目に見えている。

 

「魔術を無視するな!」

「そんな小細工が私に通用するわけないだろ!」

 

火や風、光などの魔術は拳で吹き飛ばされる。まるで魔法使いキラーのような動きをする勇儀は、俺を徹底的に近距離戦に持ち込もうとしてくる。

だが、近距離戦で勇儀に勝てるわけがないので、なんとか遠距離戦を保ちたいところ。

 

「これならどうだ」

 

質量がない魔術だから拳に吹き飛ばされる。ならば、質量を使って勇儀の攻撃をどうにかしたい。

水の魔術を勇儀の周囲に展開。勇儀がパンチで水を打ち払おうとするが、その程度で水は存在を失わない。勇儀に一斉に水を突撃させたあと、それらの塊をすべて氷に変化させる。

普通の氷ならば勇儀にとっては何の障害にもならないだろうが、魔術を使って固めた氷は、通常の氷の数十倍の硬度を持っている。流石に一撃で砕けることはな

 

「無駄ぁ!」

 

…一撃だった。なんだあの筋力妖怪。

例え俺が身体強化付きで輝剣を振るっても一撃では破壊できないような氷を、勇儀は一撃で破壊しつくした。しかも、氷に纏わりつかれて力を入れづらいであろう状態からだ。

 

「そんなことせずに、ぶつかりあおう!」

「くそっ」

 

勇儀が飛んできて、俺に一撃。今度は一応時間があったので、結界と身体強化で受け止めるが…結界は一撃で砕けて、俺は衝撃で後ろに下がる。

どうやら俺の遠距離攻撃の火力では勇儀にダメージを与えることはできなさそうだ。幽香たちにもしっかり通用した魔術や結界が一撃で吹き飛ばされているところを見ると…勇儀の規格外ぶりが分かるというものだろう。

 

「仕方ないな」

 

輝剣の召喚。結界を身にまとい、身体強化で動きに精彩を。

かつて、フランと戦ったときに使った騎士スタイルだ。正直、結界を挟まなければ勇儀の一撃を受け止めるのは難しい。

 

「面白いねぇ」

「こっちは不満だよ」

 

もっと遠距離攻撃を鍛えようと思いなおすと共に、勇儀に向かって構える。

勇儀は正直に突っ込んでくる。今の俺のように、しっかりと武装をした相手に向かって真っすぐ突撃するなんてあり得ない話だけれど、勇儀ならばそっちの方が早いのだ。

勇儀のパンチを結界盾で耐えて、魔術による火炎エンチャントを施した輝剣で勇儀を攻撃。勇儀はそれを受け止めることもなく、俺への攻撃を続ける。俺の輝剣は勇儀に刺さったが、それ以上に勇儀の裏拳が俺の腹に突き刺さる。

 

「うぐっ…」

 

しかし、俺はこれを根性で耐える。そう何度も吹き飛ばされて呻くわけにはいかない。

両腕とも既に攻撃に使ってしまっている勇儀は無防備のようなものだ。その隙を突く。

光の魔術を勇儀の顔の前で破裂させる。所謂スタングレネードのような光の魔術の裏で、俺は輝剣を勇儀の脇腹に向かって突き刺す。

非常に硬い筋肉のために、完全には刺さらず途中で輝剣が止まってしまったが、やっと攻撃がしっかり通った。

 

「痛いねぇ」

 

勇儀が腕を引いてもう一度振るおうとしたとき、俺は模倣を発動した。

依姫の剣技、神の剣技…既に若干筋肉痛になっている今の俺の体では負荷が大きすぎるけれど、ここで仕留めなければ先に俺が落ちる。

神の剣閃により振り上げられた輝剣は、勢いそのままに勇儀の左腕を斬り落とした。悲鳴を上げる俺の右腕を無理やり酷使して、神の一撃を斜めに斬り下ろす。

俺の身体強化では完全に刺さらなかった勇儀の筋肉を、神の一撃が貫く。

 

「うっぐっ」

 

勇儀は口から血を吐きだした。だが、勇儀の攻撃予備動作は止まらない。

 

「鬼をなめるな!」

「かはっ」

 

勇儀の一撃が俺の腹を貫き、俺も血を吐く。度重なる腹部への攻撃により、内臓にダメージが入ったようだ。

俺は後ろに吹き飛ぶ。またもや背後の壁に体を打ち付けた俺は、全身に力が入らなくなる。

 

「面白いなぁ、定晴」

 

勇儀はゆったりとした足取りで近づいてくる。まずい、体が動かない。

このままでは勇儀に攻撃を受けて落ちてしまう。くそっ、ここまでやってもまだ届かないのか。

攻撃圏内になるまであと一歩というところで、勇儀は多くの血を吐いた。

 

「はぁ、がぁ…面白…かったなぁ」

 

最後にそう呟いて、勇儀は前のめりに倒れた。血だまりが出来上がり、動く様子はない。

俺は勝利したことを認識し…意識を闇に落とした。

 


 

「救急ー!おにーさんと勇儀さんが死んじゃうー!」

「包帯包帯!回復系の技能が使える妖怪集めてー!」

 

戦いが終わったとき、現場は凄惨な状態だった。戦いを見ていた鬼たちは軒並み気絶しており、周囲の家々は崩壊。当の本人たちもどちらも気絶し、血だまりを作っている。

心を読むに、どちらも死んでおらず、ついでに言うとこの程度では死なないみたいだけど、それでも見た目が酷い。あまり血に慣れていない私は、少々吐き気を催してしまった。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫よ、こいし。こいしも定晴さんを助けてあげて?」

「もうやってる!」

 

そう言うこいしの手元にはたくさんの包帯がある。どうやら、定晴さんたちを助ける途中で、私を気にかけて話しかけてくれたようだ。いつの間に、そんな風に配慮と心配ができる子になったのかしら。

萃香さんとルーミアさんたちの戦いは、定晴さんたちよりも早く終わった。ルーミアさんの闇は、萃香さんの霧をどうすることもできなくて、一人ずつ撃破されてしまった。それを見届けたあとに旧都の方へやってきたら、これである。

どうやらこいしはこっそりと定晴さんを見ていたらしく、戦いが終わったとたんに青い顔をして近くの診療所へと走っていったのだ。こいしもあまり血には慣れていないだろうけど、それ以上に心配が勝ったのだろう。心の声で心配しなくても大丈夫なのを理解している私にはたどり着けない感情である。

 

「それにしても…今回の戦いにこいしがいなくてよかったわね。多分、フランさんと同じく戦えないでしょうし」

 

幽香さんたちは普通に戦ったみたいですけど、まだ恋心を完全に操り切れていないこいしたちには難しいことだろう。

そういった恋心の機微を見ると…趣味の小説が少々捗るというものだ。二人には悪いけれど、ちょっと題材になってもらおうかしら。

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