東方十能力   作:nite

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三百七十八話 超強力河童水鉄砲

夏の暑さで日々のほとんどを家の中で過ごしていたある日、家ににとりがやって来た。その手には、銃のようなものが握られている。

 

「定晴、これ買わない?」

「いや銃はちょっと…」

 

にとりがもっている銃は、いわゆるアサルトライフルのような形をしており、重厚感のある見た目をしている。AKのようだと言えばわかりやすいだろうか。

経験がまったくないというわけではないが、幻想郷で銃を使うつもりはまったくない。そもそも、弾の制限がある時点で幻想郷でのライフルの価値はそこまでなく…

 

「違う違う、これは水鉄砲だよ。ちょっと開発してみたんだ」

「水鉄砲?」

 

そう言われて思いつくのは、プラスチックでできた軽い銃だ。確かに銃の形はしているけれど…目の前にあるのは明らかに実銃ですと言わんばかりの質感。

実際に持ってみると、やはり実銃の如き重さをしていた。

 

「そうやって違法な取引をするなんてな…河童、見損なったぞ」

「本当に水鉄砲なんだってば!ほら」

 

そういってにとりが引き金を引くと、高速で水が射出された。それは壁にぶつかる前に停止し、にとりのところまで戻ってくる。そうして銃の中に入ってしまった。

俺の表情を見たにとりが説明をしてくれた。

 

「私、水を操る能力だから。流石に顧客の家の中を濡らしたりしないよ」

「それは、いいんだが。すごい威力だな」

「でしょ!鉄砲を再現したんだ~」

 

射出された水は、普通の水鉄砲で出てくるような速度ではなかった。顔で追うことも、目で追うこともできない速度であり、いわば本当にライフル弾のような速度だったのである。

流石にその威力、水鉄砲のような遊び道具で出すには危なくないか?

 

「その銃怪我をする気しかしないんだが」

「だから定晴に売りに来たんだよ。ほら定晴、怪我治せるでしょ?」

 

俺の再生能力に制限はない。腕が吹き飛んでもある程度ならくっつけることができるし、傷ならば再生を使うだけですぐに治療させる。

水とはいえウォーターカッターのような威力ではなさそうなので、俺の再生でも十分なくらいの威力ではあるだろうけど…それにしたって威力がありすぎである。

 

「その水鉄砲、他に誰に売ってるんだ?」

「売り込みはしてるんだけど、まだ誰も。折角作ったんだけど、威力が高すぎるって河童たちにも不評でさー。人里の子供たちには危なすぎるし、そもそも妖怪って水鉄砲とか要らないって言うしー」

「だろうな」

 

この世界には弾幕ごっこというものがある。既にそうやって遠距離戦をしているので、今更水鉄砲で遊ぼうという気にはならないだろう。

俺も正直いらないというか…威力には輝くものがあるが、水鉄砲の輝きに威力は求めていない。

 

「お願い!安くするから!」

「どうしても売りたいのか?」

「結構技術がかかってるんだよぉ!損切でもいいからお金が入らないと次の開発が進まないんだ!」

 

ならそもそも作るなよと言いたくなるけれど、まあいい。

俺の家には仕事に使えるものは多いものの、娯楽に使えるような道具はあまりない。ルーミアとユズは妖怪なので怪我しにくいだろうし、そんなに困っているならば買ってあげよう。

 

「いくらだ?」

「流石盟友!助かるよ!」

 

そう言ってにとりが取り出した紙には、三日分ほどの食費に値する値段が記されていた。

三日分と聞くと少なく感じるが、今の俺はたまにある何でも屋としての仕事をする以外に収入がないので、余裕があるわけではない。香霖堂だとか霧雨魔法店だとかに要らないものを売りつけることもあるが、それだけだ。

そのためあまり無駄遣いはできないのだけど…俺が買うと信じ切ってニコニコしているにとりのことを思うと、ここにきてやっぱりやめますとは言いにくかった。

 

「分かった。払うよ…」

「わーい!定晴さん、ありがとうー!」

 

そうして俺はにとり製の水鉄砲を手に入れた。ご丁寧に説明書もついている。

俺は濡れてもいい服に着替えてから、外に出た。強い日差しが体に当たり、今にも溶けてしまいそうである。

 

「そういえば今日は同居人は?」

「二人は今買い物中だ。もう少ししたら帰ってくるよ」

 

二人が帰ってくる前に、俺自身でこの道具の性能テストをしてみよう。怪我しないとは思うけど、一応な。

説明書を見ると、どうやらこの水鉄砲、実際のライフルのようにマガジン式で充填できるらしい。

 

「これサブマガとかあるのか?」

「なにそれ?」

「サブマガジン。いわゆる、充填済みの予備マガジンだよ」

 

銃撃戦の間に、マガジンを使い切ることもある。そんな時、都度マガジンに弾を込めるような暇などないのだ。そのため、予め装填済みのマガジンを用意し、マガジンを使い切ったらすぐに入れ替えれるようにするのである。

水鉄砲で遊ぶときはそんなガチガチに用意することもないとは思うが、既に世の中にある水鉄砲の中にはサブマガがあるものも存在している。

 

「なるほど、確かにこの形態だといっぱい作れるのかー」

「いっぱいあると邪魔だが、二本くらいはあったらいいんじゃないか?」

「こっちは簡単に作れるからあとで作って持ってくるよ」

 

さて、俺は近くの木に向かって水鉄砲を撃ってみる。バシュっという音と共に放たれた水の弾丸は、木にぶつかり表面を少しだけ削った。どうやら材木程度は穿てる程度の威力があるようだ。

俺が銃口部分を慎重に覗き込むと、そこには銃ではよく見る機構が。

 

「これライフリングもあるのか」

「ん?どういうこと?」

「この溝だよ。水鉄砲にガチすぎじゃないか?」

 

俺が言っているのは、銃口部分にある少し捻れた溝のことである。この溝があると、弾丸は真っすぐ飛びやすくなり、標準に合うようになる。

見た目は単調だが、ライフリング加工は結構難しい技術であり、素人ができるようなものではない。河童たちはいつの間に銃の加工のプロになったのだろうか。

 

「なんかそれないとブレるんだよね」

「まあ、そういう機構だからな」

「実験中に見つけたから付けたんだ。そんな名前があるんだなぁ」

 

ふむふむとどこからか取り出したメモ帳に記述するにとり。しまった、変なことを教えてしまっただろうか。いや、自分たちで既に見つけて名前を教えただけだから罪はないはずだ…

 

「定晴さん、戻りました」

 

その時、買い物袋を持ったユズとルーミアが戻ってきた。そのそばにはチルノが立っている。

 

「あれ、チルノ?」

「ほら、暑いから。アイスで買収を…」

 

ルーミア曰く、人里で倒れていたチルノをアイスで助けた代わりに保冷剤代わりにしたようだ。なぜチルノが倒れていたのかは不明。

 

「定晴、それなんだー!」

 

チルノが俺の持つ水鉄砲を見て目を輝かせる。まずい、これはチルノに渡さない方がいいかもしれない。

 

「水鉄砲だよ」

「その割に重厚感が…」

「俺も思った」

 

ルーミアの懸念に賛同しつつ、銃をくれと言わんばかりに近寄っているチルノを見る。ああ、ひんやりしていて気持ちいい。

まあ、俺が見ている範囲ならいいか。ここには妖怪しかいないし。

 

「人に向けて撃つなよ」

「はーい」

 

聞き分けよく、チルノが近くの木に向けて撃ち始める。同じ木ばかり狙うので、どんどん幹が削られていく。

その威力を見てうんうんと頷いているにとりを横目に、ルーミアが一言。

 

「あれ兵器でしょ」

「やっぱりそう思う?」

 

氷も混ぜて撃ち始めたチルノによって伐採された木を見つつ、俺はこの水鉄砲を幻空の中に封印することに決めた。

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