東方十能力   作:nite

382 / 503
前回のサブタイがついてなかったので、追加しておきました


三百七十九話 ダバダバ

未だに夏は終わらない。今日も今日とて、暑い。

幻想郷でもセミの声というのは大音量で鳴き、なんなら外の世界よりもうるさく鳴き叫んでいる。その響きによって目覚めが悪くなるのも、そこまで珍しいことではない。

だが、そんなセミを使おうとする人だっているのだ。使用用途は、材料。

 

「セミの抜け殻って…黒魔術か?」

「まあそう言いたくなる気持ちもわかるわ。でもね、何気に色々効用があるのよ」

 

まだまだ日差しの強いある日、俺は依頼を受けて永遠亭までやってきていた。今日の連れ添いはルーミアのみ。

依頼主である永琳は、定晴にセミを捕まえてほしいと伝えた。その内容についての返答が、さきほどの黒魔術である。

 

「というか、そういうのって鈴仙とかがやるんじゃないのか?」

「結構な量がいるのよ。あの子だけじゃちょっと心もとなくてね」

 

鈴仙は戦闘においては優秀らしいが、それ以外のことになると平凡な結果になってしまうという。必要量が多いので、鈴仙だけに任せると一週間はかかってしまうとのこと。

鈴仙の信頼の低さ…いや、ある意味信頼されてるのか?に苦笑しつつ、依頼を受けることに決めた。セミを捕まえるくらいならば、簡単だ。

 

「セミの抜け殻は見つけ次第。んで、セミ自体も捕まえると」

「可能な限り生きたまま捕まえてちょうだい。使い道があるの」

 

今回捕まえるのは、ミンミンゼミとかクマゼミのような一般的なセミではなく、特に名称が決まっていない幻想郷特有のセミらしい。ダバダバ鳴くので、ダバゼミと永琳は呼んでいるらしい。

幻想郷の在来種のようなもので、長い幻想郷生息により、半妖怪と化しているらしい。大きさは普通のセミよりも二回りほど大きく、何より早いのが厄介だと言う。

 

「でもまあ捕まえられないくらい逃げられそうだったら潰して持ってきて」

「了解」

「ダバゼミ、結構大量発生してるから減らしてくれると助かるわ」

 

ダバゼミは迷いの竹林にも生息しているが、現状は幻想郷全体に生息しているらしい。俺は今のところそんなダバダバなんて鳴き声は聞いたことはないのだけど、そもそもあまりセミの声に注意していないから聞き逃しているだけかもしれない。

鈴仙が迷いの竹林内のダバゼミをどうにかするらしいので、俺とルーミアは外の森を探索することになった。まだ迷いの竹林を完璧にマスターしていないのに迷いの森で単独行動をすると一瞬で迷うかららしい。

流石の俺も竹林で迷子になりたくないので、素直に森に行くことにする。

 

「網、いる?」

「網で捕まえられるのか?」

「一応虫だから。でも、あなたたちなら持ち前の能力で捕まえた方がいいかもね」

 


 

ルーミアと共に魔法の森にやってきた。永琳曰く、迷いの森の個体は強いからいい材料になるとのこと。

その分捕まえるのも大変だから気を付けてと言われた。たかがセミだろうと思わない方がいいだろう。なんせ、相手は半妖と化している。

 

「そもそもセミなんてどう探せばいいのかしら」

「声が聞こえたら、だな」

 

耳を澄ませる。四方八方からセミの声がする。ダバダバなんて声は聞こえない。

魔法の森はそもそも生物には厳しい環境である。魔理沙やアリスが平然と生活しているのは、そもそもの魔力が強いからであり、ただの生物では正気ではいられない。

しかし、魔法の森からはセミの声が聞こえる。こいつらも妖怪化してるんじゃないのか。

 

「ご主人様、聞こえる」

 

思考していたら、ルーミアから声をかけられた。

俺も耳をすましてみると、確かに遠くからバナバナ聞こえてくるような気がする。しかし、場所が遠すぎて、この位置からだとどっちから鳴っているのかすら分からない。

 

「多分同じセミは近いところに生息してると思うんだが…」

「歩き回るしかないかもね」

 

ダバゼミがどんな姿をしているか知らないけれど、普通のセミに比べて明らかに大きいらしいから、多分気付けるだろう。

俺とルーミアは別れて森の中を歩き回った。耳をすませばどこからともなくダバダバ聞こえるが、しかし、その場所は一向に分からなかった。

そうして歩き回っていると、広いところに出た。目の前にあるのは、一軒の家。

 

「アリスの家のところまで来ちゃったか」

 

彷徨い歩いていたら、いつの間にかこんなところまで来てしまったようだ。俺たちが森に入ったところからアリスの家は座標的にほぼ真逆なので、森を横断してしまったことになる。

そういえば、ダバゼミが薬の材料になるというのなら、魔法の研究にも役に立つんじゃないか。だとすれば、アリスもダバゼミについて何か知っているかもしれない。それに、俺たち以上に魔法の森に詳しいので、セミがいっぱいいるところの情報も持ってるかもな。

俺はアリスの家を叩く。これでいなくても、特に問題はないけれど、できれば聞き込みはしたい。わざわざ森を横断してしまったわけだしな。

そうして待つこと十秒。扉が開いて、上海人形が出てきた。

 

「よう上海。アリスは…」

 

上海人形は手に不在と書かれた看板を持っていた。多分、アリスがいないときに来客に対応するために作られた看板なのだろう。上海人形は喋れないので、こうして看板で伝えてくれた方がスムーズだ。

看板を掲げる以外は特に何も言わず動かない上海人形。本当に、この看板を掲げるだけの役らしい。ならば扉に看板を付けれるようにすればいいのではと思うのだけど、こうして来客を任せるのも自動人形の研究の一環なのだろうか。

仕方ないので、俺は人形に魔力を補充してあげたうえで扉を閉めた。アリスのことだから魔力不足にはならないだろうけど、一応俺が魔力を流すと上海人形の動きも元気になったので、意味はあると思う。

 

「折角だし魔理沙のところも行ってみるか」

 

アリスは諦めて、魔理沙のところへ。魔理沙の家はアリスの家とそれなりに近いので、行くだけならば簡単だ。

俺は周囲の木の幹を確認しつつ魔理沙の家に向かった。やはり、ダバゼミらしきセミの姿はない。

 

「魔理沙ー、いるかー」

 

俺は魔理沙の家も叩く。流石に昼間だしいないかなと思ったら、中からドタドタ聞こえたと思ったら、豪快に扉が開き魔理沙が現れた。

 

「いるぜ!今日も元気に霧雨魔法店は営業中!」

 

尚、魔理沙の背後には散乱した物々が落ちていた。だから俺はすぐに入らずに扉の前で待ったのだ。

 

「魔理沙、ダバゼミって知ってるか?」

「ダバゼミ?もしかして、あのダバダバ鳴いてるやつか」

「多分それだ」

 

自然界にダバダバ鳴くセミがそんなにいても困るので、間違ってないと思う。

 

「向こうの方にいっぱいいるぞ。あいつら、当たると痛いから気をつけろ」

「そんなにか」

「そんなにだ」

 

魔理沙のアドバイスで、とうとうダバゼミのいる場所を把握できた。

俺はありがたく思いながら向かおうとすると、魔理沙に腕を引っ張られた。

 

「なんだ?」

「依頼料」

「え?」

「いや、情報料だな。霧雨魔法店をお使いになったというのにお金を払わないなんてそんなことしませんよねお客様?」

 

とてもいい笑顔で、すごい圧をかけてくる魔理沙。

俺はこの店を利用したのか…まあ、利用してるか。情報だって、それは一つの価値あるものだからな。それを売ってもらったのだと思えば、確かに俺は魔理沙から情報を買っている。

 

「いくら欲しいんだ?」

「まあせがんだはいいが、別に私にとって重要なことでもないしな。言い値でいいぜ」

 

そうして笑顔を見せる魔理沙。しかし、その目にはいっぱいくれと言わんばかりの目力が宿っていた。

俺は人里で美味しい飯が食べれるくらいのお金を渡す。魔理沙がキラキラした目でこっちを見ていたので、もう大丈夫だろうと判断し魔理沙に言われた方向へ。

確かに、そちらに向かうと、少しずつダバゼミの声らしきダバダバという鳴き声が大きくなっていく。俺は式神召喚でルーミアを呼び出して、鳴き声の中心へと足を踏み入れる。

 

ダバダバダバ

      ダバダバダバ

   ダバダバダバ

 

非常に鬱陶しい鳴き声に、俺もルーミアも思わず顔を顰めてしまう。

ダバゼミは色や形は普通のセミとそう変わらない。皆がイメージするような見た目だ。ただし、その大きさは確かに大きく、人の手のひらくらいのサイズがある。でかすぎだろ。

 

ダバダバダバ

 

「はやく捕まえちゃいましょ」

「そうだな」

 

誰も見ていないので、ルーミアがリボンを外す。近くに妖怪がいる様子はないので、俺も無効化を全力で使うことにしよう。

この時、俺とルーミアの思考は一致していた。早くこいつらを黙らせる、と。

ルーミアの闇が鋭く伸びて、ダバゼミの体を挟み込む。潰してしまわないギリギリの力加減は流石だ。捕まってしまってダバゼミはうるさく鳴きわめいているが、ルーミアがその闇を解くことはない。ルーミアは潰したがっているが。

俺は結界を使いつつ、広い範囲に囲いを作る。そんでもって木に張り付いているダバゼミを強風で吹き飛ばす。すると、ダバゼミは飛んで逃げようとするので…無効化、対象:ダバゼミの飛行能力…ダバゼミは落ちて籠に落ちていく。すかさず蓋をすれば一匹確保。無効化が一体一体にしか使えないのでペースは悪いけれど、確実に捕まえていく。

そうして三十分。魔法の森からダバダバという鳴き声を排除した。捕まえたダバゼミはすべて完全防音になったルーミアの闇で作られた籠に捉えられている。中を見ることはできないが、相当な数が闇の中にいるだろう。

 

「ボーナス貰えないかしら」

 

俺たちはセミを全部永琳に渡した。鈴仙が数匹だったところを、俺たちが何十匹も捕まえてきたものだから、永琳は喜んでボーナスをつけてくれた。

やはり、セミを捕まえるなんていう作業は面倒だ。そして、うるさい。




ダバゼミの鳴き方はアブラゼミタイプです。多分めちゃくちゃうるさい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。