東方十能力   作:nite

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三百八十二話 重装備

萃香の依頼を受けた次の日。異変調査をするにあたって、今回は入念な準備が必要になる。

なんせ、生半可な覚悟で外に出ようものなら、ものの数分で熱中症となってしまうだろう。ウイルス由来のものでなければ、俺も体調不良になる。

 

「正直直射日光を防ぐだけじゃ意味がねえよなぁ…」

 

結界を使うことである程度の範囲の直射日光を防ぐことができる。しかし、そもそもの外気温が六十度以上あるのだ。日光を防いだところでサウナ以上の暑さであることは変わらない。

一応氷の魔術を使うつもりではあるけれど、調査だけでそんなに魔力や霊力を消費してしまっては、いざ戦闘などをすることになったときにキャパオーバーになってしまう。それに、霊力不足になってしまうこともあるかもしれない。

ギリギリ魔術で耐えてるところで魔力がなくなれば、待っているのは死のみである。

 

「チルノでも連れて行けばいいじゃない」

 

ルーミアがそんなことを言う。

それも一応考えたのだけど、正直なところチルノでカバーできる暑さを超えているのである。夏の間チルノが近くにいて涼しく感じるのは、チルノが冷気を発しているからだ。

暑い街中で開いた自動ドアから流れてくる冷気。あれがずっと出ているようなものなのである。流石に冷気の強さにも限界がある。

 

「チルノ以上に冷気を発している人とか知ってるか?」

「うーん…冷気を出せる人はいるけれど、冷気を発しているのは知らないわね」

 

俺が先ほどから『冷気を発する』にこだわる理由は、俺が魔術を使うときと同じように、もし妖力がなくなったら死ぬからである。

チルノの冷気はどうやらそういう生態のようなものらしく、力を消費しているわけではないとチルノが言っていた。

 

「ならちょっと発想を変えてみたら?」

「どういうことだ?」

「戦闘とかで霊力を消費しないようにすればいいのよ」

 

幻想郷は歩いているだけでも野良妖怪に襲われるような世界だ。故に、戦闘を全部回避するのは結構の難易度である。

戦闘で力を消費することがなくなれば確かにいいかもしれないけれど…身体強化もなしの剣術で戦えるのは精々妖怪三体同時くらいまでだ。もしこの異変の犯人が大妖怪だったりしたら、剣術だけでは押し負けてしまう。

 

「ほら、武器買ったじゃない」

「え?」

「まあ元の用途はおもちゃだけど…」

 

ルーミアがそこまで言ってから思い出した。

俺は幻空から、妙にディティールに凝っているライフルを取り出す。先日にとりから買った水鉄砲…否、銃である。確かに木をへし折るほどの威力を持つこの銃であれば、妖怪にも効くだろう。

剣術縛りをするうえでネックだった、遠距離攻撃ができない、という問題点もこれで解決する。

 

「まあそれに、私とユズが家にいるから、適宜妖力を送るわよ。滅多になくならないわよ」

「助かる」

 

霊力や魔術の枯渇が死に直結してしまう世界である。用心するに越したことはない。

俺は水鉄砲を買ったあとに提案して、にとりに作ってもらったサブマガジンに水を込めて腰に装備する。コストが安いらしく、五本くらいサブマガを貰ったので、全部に水を込めた。

マガジン一本でもそれなりに撃ち続けることができるので、無駄遣いでもしない限りは弾がなくなることはないだろう。なくなったときは湖か川で補給するとしよう。

 

「えっと…」

 

霊力消費をできる限り減らすために武装系を前もって装備することにしたのだけど…鏡に映る自分の姿に言葉がなくなってしまった。

輝剣は一応霊力剣なので、今回は使わない。なので、家宝の剣を腰に背中に背負う。AKのような見た目の水鉄砲は腰に。サブマガジンは右腰に。砂漠のようになっていることを予想して、肌の露出はできる限り減らして、服の内側で魔術を展開する予定だ。

水分補給のための水筒も忘れない。ちょっと重いが大きめの水筒を左腰にぶら下げた。

そうして装備を終わらせた俺は、まるでどこかの特殊部隊のような様相になっていて…

 

「これ、俺だってわかるか?」

「んー、私たちは分かるけど、もしかしたら分からない人もいるかもしれないわね。まあこんな暑さで歩く人なんてほとんどいないでしょうし、いいんじゃない?」

「それもそうか」

 

試しに実際外に出ることにしてみる。

扉を開ける前に服の内側に氷の魔術を展開。このままでは凍傷になってしまうので、外に出てみる。

 

「ぐあっ」

 

襲い来る熱波は、確かに俺の体を焼いた。

だが、露出をできる限り減らし結界も展開したので、昨日ほどではない。凍傷になりそうな威力だった氷の魔術が今では心地よいくらいまで落ち着いている。

これなら活動できる。

一度部屋の中に戻って、二人に声をかける。

 

「ルーミア、ユズ、行ってくる」

「ええ、気を付けてね」

「頑張ってください!」

 

もし俺に身に何かあったら二人が気づいてくれる。二人にできることはそこまで多くはないけれど、一応俺のいる位置もある程度把握できるみたいなので、熱中症で倒れたときは二人に運んでもらおう。

俺は再度外に出て見渡す。

 

「これは…ひどいな」

 

前に外に出たときは暑すぎて周囲を見ることはできなかった。だが、今こうして周囲を見渡してみると、明らかに森の様子が違う。

草木はどう見ても元気がなく、もう枯れてしまっているように見える植物も多い。このままでは森が荒野になってしまうのは間違いないだろう。

幻想郷の生態系を守るため、そしてこの頭のおかしくなりそうな暑さを解消するために俺は出発した。

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